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山怪を読んだら思い出した話

おじいちゃんがまだ生きていた頃に聞いた話。その地域には、お正月になると山の沢の上の方にあるお不動様に参拝する風習がある。みんなで山に登り、お酒やお餅を食べて沢の水を飲んで帰るのだ。おじいちゃんは山で木を切る仕事をしていたから先に山に登り皆を出迎える準備をしていた。

すると、知り合いのAさんが山を登ってきた。まだ他の人は来ないけれど、先に始めてしまおうということになってお酒を飲み始めた。散々飲んで、食べて私のおじいちゃんは潰れてしまっていたらしい。後から登ってきた皆に起こされて気がついたら、何故か今登って来たというようにAさんがやってきていたのだ。

さっきまで一緒に飲んで食べていたはずだ、先に飲んでいた事をそう皆に説明するが誰も信じなかった。おじいちゃんは大の酒好きだったのもあるだろう。

けれど、1人で飲んでいたにしてはコップが数人分あったり、食べ物も何故か複数人で食べたかのように散らかっていたのを見た地域の皆は一応おじいちゃんの話を信じる事にした。Aさんは先に登って来てきてはおらず今来たと話しているし、うちのおじいちゃんはそういった冗談は言わない真面目な人だったから嘘だとも思えない。狐に騙されんだろう。そういうことにして、新年の挨拶をいつものように行ったらしい。

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