志季

シキと申します。 まだまだ未熟ですので感想、ご意見等お待ちしております。

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最近の記事

ランダム単語ショート#6「デコレーション トラウマ 安全運転」

 ひしゃげた車体と箱から噴き出したクリーム、真っ赤な血とイチゴの類似性を思い出してまた吐き気を覚えた。僕の産まれた日が君を失った日に変わった。君への伝えきれない想いと、トラウマを抱えて僕は、車を走らせている。     ハンドルを握る手は固く、汗が滲んでいる。鼓動が激しくなり吐き気を覚えながら、僕は運転を楽しんでいた。「君を殺した車という乗り物に乗っている」ということは、苦痛であると同時に、君を強く感じることができた。それも安全運転よりも危険な運転であればある程、君が隣にいるよ

    • ランダム単語ショート#5「最終形態 甘味料 非常識」

       深夜2時、玄関のチャイムが鳴らされて、A氏は夢から覚めた。巨大なショートケーキに体を突っ込んで、中からばくばく食べる夢を邪魔されたA氏は、不機嫌そうにドアを開けた。  ドアの前には背広を着た青年が、アタッシュケースを持って立っていた。 青年はA氏が務めていた調理師専門学校の元生徒で、A氏は青年を家に迎え入れると用心深く外を見まわし、ドアを閉めた。 「例の物が完成いたしました。」 青年は持っていたアタッシュケースの中から、白い粉の入った袋を取り出しA氏の前へ差し出した。A氏は

      • ランダム単語ショート#4「因果応報 日常 生と死」

         その日の朝も定時通りに会社に着き、タイムカードを切り、仕事内容の書かれた書類を手にして、黒い翼をはためかせ、地上へ向かった。  病床に伏した老人の寿命を鎌で刈り、次の現場へ。外回りの死神業務は体力を使うが、事務仕事よりも性に合っているようだ。机に向かい書類とにらめっこしながら死亡予定表を何十枚も作るより、実際に現場で鎌を振り下ろす方がやりがいを感じる。 私はいつも通り外回りを追えて、病院の屋上から会社へ戻ろうと翼を広げようとした。  その時、後ろから私の足に縋りつく者がいた

        • ランダム単語ショート#3「ドリル 修飾語 手帳」

           手帳を開いた瞬間、主語と述語を彩る鮮やかな絵の具のようなそれが目の前に広がる。それは鮮明であったり、説明であったり、はたまた解明であったりした。手帳の持ち主の彼はとても満足そうに、自らが収集した修飾語を愛でていた。その行為は退屈な彼の人生に潤いを与える大切な趣味だった。  彼は友人も恋人もいなかった。ただ身の丈よりも大きな本棚に集う、たくさんの本が彼の親友だった。本は話に困ることがないくらいに人生経験が豊かでおしゃべりだった。彼が寄り添いさえすれば、本はいつまでも自分の偉業

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          ランダム単語ショート#2「カーチェイス シミュレーション 最先端」

           妖しく光るネオンライトと立ち並ぶ巨大なビル群に囲まれながら、私は車を走らせている。いや、走らされていると言った方が正しいだろう。現在私は複数のパトカーから追跡されているのだ。  理由はわからない、ある時突然一台のパトカーから追いかけられ、逃げるうちに段々とその数が増えていった。逃げずに止まり警官達に事情を聞こうとも思ったが、彼らの鬼気迫る表情に得体の知れない恐怖と不気味さを感じ止まるのが怖くなってしまった。  したがって現在私は車を走らされているわけだ。もうすでにかなりのス

          ランダム単語ショート#2「カーチェイス シミュレーション 最先端」

          ランダム単語ショート#1「浪人 年金制度 ラムネ」

           手に持った受験票を破り捨て大学を後にした。 桜並木が咲き誇り、泣いて喜ぶ若者達を背にして、私は家に向かうために地下鉄の階段を下っていた。 もう何度目の浪人だろうか、数えるのがおっくうになってずいぶん経ち春を心底嫌いになっても、未だ大学への夢を捨てきれずにいる。  駅で手に取った新聞には厚生年金引き上げのニュースが一面を飾り、電車は今日も人身事故で遅延をしている。頭に憂鬱がなだれ込んできて、文字を見るのをやめたくなる。何か幸せなことを考えようとすると、中身のぼやけた赤本で目の

          ランダム単語ショート#1「浪人 年金制度 ラムネ」