待つ者、撃つ者、立ち上がる者

・舞台『鋼の錬金術師を観に行った。ここでは、観劇した感想を思いついた順に書いていこうと思う。

・今回の舞台は、一コマ、あるいはアニメのワンシーンを繋げていくというよりも、むしろ、舞台全体としての流動的な展開が滞ることがないように、場面が次々と繰り広げられていっていたのが印象的だった。

・真後ろに生バンドがいることも衝撃的だった。観劇経験が少ないのでなんとも言えないが、演じる真後ろで演奏が行われる舞台はそうそうないのではないだろうか。流れる音の臨場感が、戦いの時は激しく、辛い時は悲しく、前を向く時は優しく会場全体を包み込んでいて、とても良かった。


・ウィンリィは、まるでアニメから飛び出て本当にそこにいるかのようだった…………。無論、エドもアルも大佐も中尉も他のどの人も皆、全員アニメから飛び出てきたのかと錯覚しそうになるのだけれど、その中でもウィンリィは特に凄かった。脳内にあるウィンリィのイメージと、舞台上のウィンリィの姿とが、途轍もない精度で一致していて、違和感を覚えるどころか、むしろより一層もともと持っていたイメージがさらに補強されていくかのようだった。

・怒る場面、涙を流す場面、激昂して銃を構える場面、非力さを呟く場面……見ていると目頭が熱くなる場面の多くが、とても印象に残っている。


・バリー・ザ・チョッパーと大佐が仕掛けた作戦が進行している時、電話を介して、偽名と暗号を使って大佐と中尉が何度もやり取りするシーンがあるのだけど、ここもすごく惹かれてしまった。なんと言えばいいのか……とにかくひたすらに、マスタング大佐とホークアイ中尉なんですよ、ひたすらに……。


・今回の舞台において、やはり外せないのがラストとの戦闘の場面。

・ハボック………………。あのカッコよさ……。火ィ、もらえます?とか、女運ねェな……!!のところとか、一言一言がカッコよくて……。生き様のカッコよさが詰まっている気がする。

・そして大佐…………。口早く錬成に関することを喋るシーンの切羽詰まってる感じや、散り散りに吹き飛ばしたはずの敵に目の前でハボックをやられてからの展開、そしてラストとの決着……。もとより好きなシーンの連続ではあるのだけど、生身の俳優の方が演じられることによる切迫感がビリビリと伝わってくることで、また新たに自分の中で印象深くなったシーンだった。

・大佐に止めを刺したことを語るラストに激昂し、無我夢中で中尉が銃を撃つシーンと、アルが決死の覚悟でラストと戦闘を繰り広げるシーン。アニメを見ていた時は、「よく言った!アルフォンス・エルリック!!」と大佐が駆けつけてからの展開が印象的だったけど、今回は、その直前のアルと中尉のやり取りもめちゃくちゃ印象に残っている……。中尉の叫びも、アルの覚悟も、どちらも本当に素晴らしかった……。

・イシュヴァールにおけるロックベル夫妻の話やヨキのシーン、戦火の中で生きる人の姿としてかなり良かったな……。イシュヴァールの人たちだけでなく、アメストリス人もまた、戦火に巻き込まれているんだよな、という………。

・キンブリーが出てきた時、「(うわーー!!キンブリーだーー!!!!)」と思った。「ヤベェ奴」という小さい頃からのイメージが強いけど、よくよくセリフを聞くと、そう簡単には言い返すことも否定することもできない、芯の通ったことを語っている。まあその直後に辺りを焼き払い、「イイ音だッ!!」と言い放つ訳ですけども……。

・東の大国シンの皇子、リン・ヤオ。飄々として掴みどころがない一方、皇子としての意思は堅い。アニメFULLMETAL ALCHEMISTでは宮野真守さんが声優を務められていて、しなやかな雰囲気に独特のカタコト、剣術と体術を絡めた戦闘シーンなど、キャラクターとしての幅の広さと宮野さんの演技のマッチングがとても好きだ。……という個人的な前提があった中で見た、舞台のリン・ヤオ。すごかった。なぜなら今上記で書き連ねたことが、ものの見事に舞台の上に在ったから。ブラッドレイとの戦闘シーンの熱さたるや……。

・リンが天井の辺りから急に現れる、みたいなシーンがいくつかあったのだけど、階段の手すりをすり抜けて降りようと思ったら意外にスムーズにいかないみたいな場面がちょいちょいあり、面白かった。かなりリン・ヤオ。引っかかってランファンに助けてもらってる姿とかすごい想像できるもんな……。


・序盤のグリードと総統の戦闘シーン、最後アルの中にいたマーテルのことを、総統がアルの鎧越しに突き刺して次の展開(アルが真理の記憶を取り戻す)に行くのだけど、ここでのマーテルの方の演技から、彼女が感じている悲痛が真っ直ぐに伝わってきてすごく良かった。

(・今調べて知ったのだけど、谷口さんが総統を演じられているんだ……あまりにもキング・ブラッドレイすぎる。そりゃあめちゃくちゃ強いよ………。)


・語彙が少ないため、「すごい良かった」「印象に残った」といったことしか書けないのが不甲斐ない。

・今回ここで書いていない俳優の方の演技やシーンに関することは山のようにあるけれど、一つひとつを書き起こすだけの時間と文章力がない。ゆえに全てを書き出すことはしないけれど、舞台に関わる一人ひとりの力が結集して、あの時間が作られていたことは確かであり、そう感じたということは、ここにしっかりと書き記しておこうと思う。

・「一は全、全は一」。鋼の錬金術師という作品を舞台として観劇することによって、この言葉を新たな角度から捉えられるようになる気がする。
続きのお話もいつか舞台でやるのだろうか。その時はぜひまた観に行きたいと思う。



・……エドのことを全然書いていない……!!書きたいけど、出勤の準備をしないといけない……書きたいけど……!!

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