午後のロードショー「フライト・オブ・フェニックス」
公開 2004年
監督 ジョン・ムーア
公開当時 デニス・クエイド(39歳) ジョバンニ・リビシ(30歳) ミランダ・オットー(37歳)
男10人に女一人のサバイバル脱出映画という設定から、桐野夏生の「東京島」のようなドロドロした極限の人間模様を描いた作品かと思いきや、意外にもエロ要素は皆無、爽やかなスポ根系サバイバル作品でした。
ジョバンニ・リビシ以外、登場人物の誰一人キャラが立っておらず、人間ドラマが希薄といえます。
砂漠のど真ん中でのサバイバルだというのに、水と食料がある程度確保されているためか、登場人物は皆小奇麗で悲壮感が無く、リアリティに欠け感情移入できませんでした。
閉鎖が決まった石油採掘所から輸送機で帰国することになった作業員たち。
しかしその途中、巨大な砂嵐が発生、損傷した輸送機が不時着したのは、ゴビ砂漠のど真ん中、陸の孤島だった…
パイロットのフランクは重量オーバーと知りつつ飛行機を離陸させ、その結果砂嵐で機体がバランスを崩し砂漠に不時着するのですが、罪の意識はまるで感じられず、兄貴風をふかせてリーダーシップを取ろうとするのです。
設計士のエリオットは損傷した輸送機を改造し小型飛行機を作って脱出しようと提案するのですが、フランクは「動き回らない方が助かる確率が高い」と反対する。
意見が異なるエリオットとフランクの対立構造がストーリーの軸になっており、小さな集団の中でマウントの取り合いが始まるのですが、結局皆はエリオットの提案を受け入れ、砂漠のど真ん中で飛行機を改造する大工事を始めるのです。
昼夜の寒暖差が激しい砂漠のど真ん中、水も食料も充分に無い状態で、ここまで動けるかどうか甚だ疑問です。
登場人物は全員能天気なお調子者なのか、誰一人悲観的になることなく結構楽しそうに働き、部活の合宿のように一致団結して小型飛行機を完成させるのです。
これはリアリティ皆無ですね。
飛行機は無事完成、だが本当に飛ぶのか…
エンジンの起爆薬は5発、チャンスは5回だけ。
5回目でやっとエンジンがかかり、
「みんな、乗れ!」
残った8人の内、操縦をするフランクと舵をとるエリオット以外、皆飛行機の翼の部分に乗るのです。これには驚きました。
飛行機を組み立てている段階では、翼の上に乗る設定の予行練習や説明は無かったように思います。
飛行機は飛び立ってからもかなりアップダウンを繰り返しており、普通なら振り落とされてるでしょうね。
映画のラストで、登場人物の後日談が語られていた事から皆無事に生還したのでしょうが、着陸したらフランクとエリオット以外は全員いなくなっていた…というオチでも全然不思議ではありません。
エリオットを演じたジョバンニ・リビシを見る映画と言っても過言ではありません。
彼は午後ローでも度々放送される「パーフェクト・ストレンジャー」や「ギフト」でも、ストーリーを引っ張るキーパーソン的な役割でしたが、本当にイイ仕事をしますね。
主役を引き立てつつ、自らも劣らぬ存在感を発揮する稀有な俳優といえます。
最終版のエンジンをかける場面から、砂漠の部族に追われながらも飛び立つシーンは手に汗握るスリルがあり、それだけに中盤でのグダグダが惜しいですね。
マウントの取り合いや意見の食い違いでけっこう確執があったにもかかわらず、終盤は急転直下で一致団結するのも心理描写が雑で感情移入できません。
本作は名作と言われている1965年「飛べ!フェニックス」のリメイクだそうです。
皆で廃材を駆使して小型飛行機を製作する過程と、プラモデルの設計士が設計した飛行機が本当に飛ぶのか、という要素を楽しむ作品のようなのですが、スポコン感動作風に振ってしまったため、映画オタクが喜びそうなエモい要素が飛んでしまったと言えます。
サバイバル映画でリアリティを出すために欠かせない要素は、「食料」「排泄」「性」の問題だと思うのですが、この作品ではこの要素がほとんど描かれておらず、人間の醜い本能がむき出しになる場面はほとんど見られません。
サバイバル漫画の傑作、楳図かずおの「漂流教室」に例えると、主役のフランクが「高松翔」、エリオットが「大友君」の立ち位置だと思うのですが、小学生の彼らですら、「咲っぺ」を巡ってオス同士の戦いを繰り広げるのです。
唯一の女性キャストの意味がまるで無く、全員男性でも良かったのではと思います。
せめて「関谷」のようなインパクト抜群のトラブルメーカーも登場させて欲しかったものです。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★
流し見許容度★★★
午後ロー親和性★★★★★
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