見出し画像

午後のロードショー「バットマン」


公開 1989年
監督 ティム・バートン
公開当時 マイケル・キートン(38歳) ジャック・ニコルソン(52歳) キム・ベイシンガー(36歳)

緻密で繊細な日本漫画で育ったせいか、アメコミの世界観にはどうしても馴染めません。
着色料がたっぷり入ったお菓子のような毒々しくもポップな色合いと、ざっくりしたコマ割りに「AHHHH!!」「BOOOM!!」などの擬音がドカドカと散りばめられ、英語のセリフがわからない事を差し引いてもさほど奥行きのある内容には見えず、大人の鑑賞に足るとは思えないのです。

本作は公開前から音楽やグッズ、関連本など各メディアでのプロモーションが大々的に行われていた印象があり、当時は大変な話題作でした。

ティム・バートン独特の世界観を感じるセットやキャラクターデザインを除き、ストーリー自体は日曜日の朝に放送される子供向け戦隊ヒーロードラマに大人の恋愛要素を足した程度かもしれません。

マイケル・キートンは歴代バットマン役の中でもイメージに合わないと不評のようですが、私はブルース・ウェインのキャラクターである「理想が高くて正義感が強い世間知らずのお坊ちゃん」役がハマっていると思うのです。
ヴィッキーのような美女を前にしても育ちの良さゆえかガツガツしておらず、非常にお行儀が良いですね。

バットマンといえども空を飛べたり念力が使えたりといった特殊能力は無く、グラップルガンと呼ばれるワイヤーで高いビルに上ったりする程度で、敵との戦いは主に日ごろの訓練による格闘技を駆使しているのです。
バットスーツは防弾機能があるもののすべての攻撃を防げるわけでは無く、本人は生傷が絶えないのだそうです。
ブルースは大富豪ゆえ、潤沢な資金を惜しみなくバットマンのコスチュームやガジェット制作に投下できるのですが、これはもう正義のためというより趣味ですね。
純粋さゆえ、趣味を使命の域にまで昇華させてしまったのではないでしょうか。

ハリウッド広しといえど特殊メイク無しの「地顔」でジョーカーを演じられるのはジャック・ニコルソンくらいでしょう。
マフィアの構成員ジャックが化学薬品の樽に謝って落下し「ジョーカー」に変身してしまったというあまりにも雑な設定なのですが、すべて彼の顔面力でねじ伏せられように納得させられてしまいます。

本作ではジョーカーの印象があまりに強かったため、初代バットマンをマイケル・キートンが演じているという事を忘れてしまっている人も多いかもしれません。

映画を見た事が無くても、プリンスの「バットダンス」のPVを見ている人は多いのではないでしょうか。
当時は映画本編よりもプリンスの曲のイメージが先行し、バットマン=プリンスという印象でした。

映画の世界観をPVに落とし込んだ演出は当時としては斬新で、80年代の作品だというのに古臭さをまったく感じません。
激しいエレキをバックにしたキレッキレのダンスパートと、リズミックかつスローなパートの二段構成になっており、ここまで完成された世界観と細部まで作りこまれた映像は現在でも作るのは難しいのではないでしょうか。
プリンスはこの時すでに世界的なミュージシャンではありましたが、どちらかと言えばマニアックな知る人ぞ知る存在で「バットダンス」で彼の事を知りファンになった人は多いと思うのです。
かく言う私もこの曲でプリンスのファンになり、そこから沼にハマるように「Sign of The Times」など彼の映像を漁るように見たものです。
映画の中にもプリンスのイメージカラーである紫が多用されており、彼のポップであると同時に艶めかしい世界観が映画に溶け込み、バットマンを子供向けのヒーローから大人の鑑賞に耐えるコンテンツへとステップアップさせたと言えます。

絶大なアメコミ人気があるアメリカはともかく、本作が世界中でヒットしたのはプリンスの功績によるものが大きいと思うのです。

2016年に54歳で惜しくも亡くなりましたが、まさに100年に一人のアーティストと言っても過言ではありません。

バットマンシリーズは2005年「バットマン・ビギンズ」以降シリアス路線に舵をきりましたが、私は90年代までのおバカでハチャメチャな世界観の方が好きです。
親世代の子供の頃のヒーローを大人の鑑賞向けにリメイクし、またその子供へと世代をまたいでマーケティングする手法は日本でもウルトラマンや仮面ライダーなどで用いられています。
本作やスパイダーマンなどの超人気コンテンツは、ファンを飽きさせないように設定を変えて何度もリブートするのが定着しましたね。
アメコミファンはフィギュアなどのグッズに惜しみなくお金を使ってくれるので、なるべく長くシリーズを継続させたいという作り手側の商魂を感じてしまいます。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★
流し見許容度★★★★★
午後ロー親和性★★★

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?