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【The Lost Universe要約】NASAが出したTRPGシナリオはどんな感じで遊べるか【CoC?】

NASAがTRPGシナリオを出したのでウキウキで読み、遊び方を考える記事です。

NASAとは、あの宇宙開発のNASA。
ビッグネームがアナログゲームシナリオをリリースした。

突然のリリースにTRPG界も、普段TRPGを遊ばない科学ファンも湧いた。
というわけで、中身の紹介とともに、見かけた層向けの遊び方を考えてみることにした。

私は普段Call of Cthulhu 6版をメインに、ソード・ワールド、かじる程度にダブルクロス、エモクロア、ネクロニカなどで遊んでいる。
このシナリオ「The Lost Universe」は主にD&Dプレイヤーをメインターゲットにしているらしいが、「お気に入りのシステムで遊ぼう!」と煽られていたため、主にCoCで遊ぶにはどうしたらいいかを考察する記事とする。
世界最高の宇宙研究機関が出したシナリオ、外宇宙のシステムで遊んでみたすぎるでしょ

結論から言うと、あんまりCoCで遊ぶものではなさそうだが、身の回りのCoCプレイヤーと遊びたい人(私)向けに工夫の取っ掛かりくらいは紹介する
そして、どちらかというと、TRPGを遊んだことがない科学好きに、友達が好きなシステムを紹介することができるシナリオなんじゃないかと思う。

なお、翻訳が正しい保証はないので、皆さんは都度該当部分をDeepLなどに突っ込んで確かめてみてほしい。
また、フリーダウンロードシナリオのため比較的しっかりと内容を記載しているが、公式の翻訳版が出た場合などは取り下げる可能性がある。

まずはゲーム概要のおさらい

日本語でもいろいろな記事が見つかるので、ざっと参照箇所を示すのみにする。

  • タイトルは『The Lost Universe』(「喪われた宇宙」)

  • システムは任意。

    • 一応、プレイヤーキャラクターに推奨レベルやアライメントの概念があり、D&Dが想定されている(紹介ページ内3段落目、PDF内NPC設定等参照)。

    • 日本のシステムなら、ソード・ワールドあたりが遊びやすいのではないだろうか?

  • 導入はこんなところ(紹介ページ2段落目)。

    • 荒れ果てた惑星・エクスラリス(Exlaris)の街アルダストロン(Aldastron)で巻き起こるダークミステリー。宇宙研究者が失踪し、ハッブル宇宙望遠鏡が地球の時間軸から消滅。冒険者はそれを取り返すためにシナリオに参加する。(この「冒険者」という記載がもうD&Dなんだよね)

  • プレイヤーは地球の知識しかないキャラクターを作ってよい。シナリオでは異世界エクスラリに転生して、この世界を知っていくことから始まる(PDF内「Introduction」)。

    • キャラクターの身体的特徴は、ファンタジーの生き物をブレンドしてオリジナルに作ることになる(エルフ、オーク、ハーフリング、ティーフリングなど/PDF内「Overview」)。

  • 「プレイヤーが自身の作ったキャラクターの体に入って目覚める」という記載があるが、おそらく必ずしもメタフィクション的なプレイをやれと言っているのではなく、転生の状況の説明と、「TRPG」というものを一般に遊びやすくする方法として導入されているので、採用しなくても良いだろう。これについては「舞台設定」の項で説明。

  • シナリオは2部制。所要時間はそれぞれ3〜4時間(オフラインセッション計算だと思われる)。

    • 一部では世界を知っていくこと、二部では地球から消えた研究者を取り戻すことがメインの目的になる(PDF内「Introduction」)。

さて、既に異世界冒険システムが前提で、雲行きが怪しくなってきたが……。
CoCにだってドリームランドがあるし、未知の生物だって作って良いことになっている(日本語版6版るるぶp.164など)。
地球の知識しかないPCを作っていいのなら、CoCの探索者を一時的に転生させて使えるかもしれない?

シナリオ背景を読んでいこう。
ここからはどちらかといえばゲームマスター向けの内容になるが、読んだうえで遊びたいプレイヤーについては任意で覗いてほしい。

シナリオ背景

PDF「Adventure Background」から、これを押さえておけばだいたいイメージはつくだろうというところを抜き書きする。
全訳はさすがにどうかと思うのでざっくり内容と感想になる。

  • 400年前にハビタブルゾーンに安定した星「エクスラリス」が舞台。おそらくEx+Solaris, ニュアンスとしては「超惑星」みたいな感じでしょうか?

  • エクスラリスは農業と医学、そして魔法が発展した星。

    • 魔法はまだ解明されていない「真空」のエネルギーを使って行われている。SF・ファンタジークラスタなら「ダークマター」や「エーテル」といえば伝わるだろう。ちなみにこれに関してはNASAの解説資料がちゃんとついている。

異星ものか。出足こそ宇宙史に詳しいCoCとは比較的相性がいいかと思ったが、魔法ファンタジーだなぁ完全に。

そんな平和なエクスラリスに、事件が起きる。

  • ブラックホールが星に接近!

  • この恒星系の惑星は、衛星も含めて軌道が変わるなどの被害を受け、エクスラリスも、消滅はしないながらも太陽光が遠ざかり、厳しい時代に突入した。これを「大崩壊」(The Breaking)の時代と呼ぶ。

  • この時代のあとは長い混乱の暗黒時代が来るので、このときのことを覚えているのは長寿のエルフやダークエルフくらい。

  • そうしちゃいられないと知識人たちが力を結集。元のエクスラリスの気候を保ち、隕石やスペースデブリから星を守るための壁を築造。このために真空エネルギーをありったけ使い、簡単には壁を壊せないように技術を秘匿する。

  • これによりエクスラリスは荒れた惑星になってしまったが、昼夜を再現するランプなどの技術のおかげで、表向きは平和が戻ってきた。アンダーダークには混沌がひそんでいる。

事前情報からしてもそうだったが、この星にはエルフなど、D&Dに沿った種族設定が登場する。
よっぽどCoCで遊びたければ、エルフがいる異星も宇宙の中にはあるものとして設定するか、イス人などに置き換えるのが穏当だろう。ただ後者の場合はつじつま合わせが大変になっていきそうだ。

  • この星の科学は「大崩壊」以来、宇宙を重視しており、よく似た異世界の研究や、ブラックホール、真空エネルギーの研究が行われてきた。

  • 近年、アルダストロンという街(冒険の最初の舞台だ)の魔法使いエイリークが、地球との間にパスを構築。ブラックホールとダークマターの理解を押し進めたハッブル望遠鏡がどんなものか、見てみようとした

ここでNASAの虎の子、ハッブル望遠鏡が登場する。舞台になった星を救うかもしれない地球の秘密兵器のような扱いだ。

  • エイリークらが研究に取り組んでいる間に、ひっそりとこれに興味を持ったものがいた。ドラゴンのイシリアスだ。

  • イシリアスはエイリークから呪文を盗み、同時にエイリーク自身と仲間たちを誘拐した。ハッブル望遠鏡とその秘密を自分のものにしようとしたのだ。

出てきた。ドラゴン。
何度か話にあげているD&DというTRPGシステムは、ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ、つまりドラゴンが出てくるような世界の迷宮を攻略するゲームだ。
このドラゴンをラスボスに、エイリークたちを解放するシナリオになるということだろう。

……他のシステムにするほうが難しくないか?(ソード・ワールドなど、ほぼ世界観類似のシステムは別にして……)

まぁCoCにもイグなど、爬虫類っぽい怪物はいる(ドラゴンかと言われると人間よりちょっと大きいくらいだが……)。
悪役が必ずしもドラゴンである必要性もなさそうなので、引き続き読んでいこう。

冒険のあらすじ

PDF「Overview」をメインで見ていく。

  • エクスラリスは様々な種族のいる、非常に包括的な社会だ。

  • この文明は学問を最重視しており、ウィザードなどの研究職が最も尊敬されるが、アンダーグラウンドでは犯罪も横行している。

現代アメリカっぽい舞台設定だ。少し悩ましいのは、様々な種族がいることに対して「包括的」という印象を与える社会に転移したとして、SAN値チェックが発生しなさそうなことだ。これはもうホラーを捨てて、異世界冒険シナリオと割り切るしかないかもしれない。それはそうだ、ホラーとして書かれてないんだから。

  • プレイヤーキャラクターは、ポータルになっているアルダストロンの街に出現するとき、他の街から旅行に来ていた人物たちと「もつれて」しまう。

  • 街には、秩序立った世界とアンダーグラウンドの中間地点にある「酒場・ホースヘッド(馬の頭)」があり、キャラクターたちはそこで、科学者たちの行方不明事件についてNPCから聞くことになる。

NPC情報にはなかなか可愛いおじさんやお姉さんが揃っているので、ぜひシナリオを読んでみてほしい。

  • その科学者たちは「大崩壊」の原因を調べるため、ハッブル望遠鏡のデータをコピーして研究していたが、突如望遠鏡本体が消失。地球にはハッブル望遠鏡がついぞなかったことになってしまう

わぁ。

  • 科学者たちは怯えつつも、ハッブル望遠鏡に詳しい地球人を呼び寄せようと考えた。というわけで、もう一度地球とパスをつなぎ、「誰かがポータルからやってくるはずだから」とアルダストロンじゅうの仲間に伝言しておいたところで……彼らが行方不明に。

入れ替わりでやってきたのがプレイヤーキャラクターたちというわけだ。
ここでちょっと気になってくるのが、PCたちの知識の扱いだ。
ハッブル望遠鏡に詳しいはずが、それが無くなってしまった世界からやってきたということで……何を知っていて、何を知らないべきであるのか?

この答えは、続く「The Stage is Set」に解説されている。

舞台設定

概要でもふれたが、プレイヤーはプレイヤー自身の知識レベルを使ってゲームをプレイすることになっている。
これはこのゲームによって、ハッブル望遠鏡の功績に関する知識をより本人に身近なものにしようというNASA側の試みであるように思われる。

ともあれ、私の周りではあまりプレイヤー自身がTRPGキャラクターとしてふるまうという遊び方をしないので、キャラクターに置き換える前提で設定を読んでみよう。

  • 1990年、NASAはハッブル望遠鏡を打ち上げた。これによって人類の宇宙に対する視野は大幅に広がった。

  • しかしこの世界線の地球にはハッブル望遠鏡が存在していたことはないこの地球では、誰も宇宙の年齢を知らず、ブラックホールを知らず、宇宙にどれほど美しいものがあるかを知らない。ISS(国際宇宙ステーション)もない。癌治療や絶滅危惧種観測、古文明解析のテクノロジーもない。

  • プレイヤーキャラクターたちは、NASAのゴダード宇宙飛行センターで働いており、なんとなく何かが欠けているような気がしている

  • 気晴らしの散歩中、頭が痛んだと思ったら、君たちの意識は暗転する……。

ここでいわゆる、システム次第では事前ハンドアウトと言われる指定が出てくる。
PCたちは宇宙開発所研究員であり、同僚のようだ。
これはゲームマスターが事前に教えてあげるべき情報だろう。

もし地球人の設定の既存キャラクターを使う場合は、世界線が書き換わって、記憶を失くしていることになる。
基本的には職場の設定に沿う、新規キャラクターが無難だろう。

いざ、冒険内容

こうしてキャラクターたちは冒険に入っていく。

第一話では、転移にとまどうプレイヤーキャラクターたちが、酒場や警備隊から情報を得て、科学者たちのいた天文台へ向かう旅路が描かれる。
今の身体で魔法を使うこともできるし、システムに合わせて好きなキャラクターを作れる。

第二話では、天文台で聞きつけた怪しい人物を追って、廃墟の冒険をすることになる。
罠仕掛けの塔を攻略して待っているのは黒幕のドラゴン・イシリアス。
戦闘を終えると、科学者エイリークたちが感謝と謝罪とともに、プレイヤーキャラクターたちを地球に送り返してくれる。

詳細はシナリオを読むべきであるため、実際の描写を書き起こすことまではしないが、NPCのセリフ例や行動分岐例等が入っていて、すぐに遊べるようになっている。
また、ダイスロール箇所や、それにどれくらいの厳しさの成功が必要か、という指示も、D&D式だが入っているようだ。
CoC7版なら、比較的気軽に成功度をそのまま読み替えることができるだろう。6版であれば、ダイスロールを通常にするか、複数回の成功や補正つきのものにするか、といったところか。

とはいえ、ストーリーはやはりヒロイックな目標攻略型。
CoC的ホラーとはどうしても馴染みが薄い。
どうしてもやりたい場合は、イシリアスの真の姿をおどろおどろしくするくらいしかないのではないだろうか。

うーん、宇宙といえばCoC、で遊んでみたいと飛び出してきたが、少なくともCoCで特に楽しい内容というわけではなさそうだ。
星の設定がしっかりあるので、簡単にドリームランドにもしづらい。コンバート成功した人がいたら教えてほしい

試みに対する総括

とはいえ、私の周りで遊ばれているのは8割CoCだ。
割り切るのなら「例外的だらけの明るい冒険CoCですが」ということで、エルフやドワーフのいる平行宇宙を設定して、転移させてしまうことだと思う。

次に考えるとしたら、ストレートに他システムへの紹介として遊んでもらうという選択肢だ。
D&Dでもいいし、ソード・ワールドでもいい。
自由度の高いエモクロアTRPGにしてしまうのもいいだろう。
地球からの転移設定を活かすなら、「転移前は宇宙に興味がありそうなCoC探索者の使用可ですよ」、と事前ハンドアウトをゆるめにとってしまえば、愛着が湧きやすいかもしれない。
私はこちらで行こうかと思う。

けれど、何よりやはりこのシナリオは、初心者にも気軽に遊ばれてほしい

第一話では科学者たちが実際に使っていた部屋を探索し、NASAが書いた濃厚な研究情報を楽しむことができる
科学者たちがどんな仮説を持って何を研究していたのか?
エクスラリスの条件下では望遠鏡の使い方がどう違うのか?
エクスラリスの研究者は、地球のどんな功績をあげた研究者をお手本にしていたのか?
科学のお膝元が書く紹介を、ぜひ楽しみたい。

また、第二話から戻ってきた地球では、ハッブル望遠鏡のおかげで、次の宇宙開発プロジェクトが進んでいる。
これはNASAの次の試みへの広報であり、意気込みにちがいない。
自分が救った地球の未来だと思えば、プレイヤー一人ひとりにも、宇宙科学への愛情が湧くに違いない

総評

NASA、楽しそうだなと思った。
多分「科学はいいぞ」という導入教材にゲームを遊んでみてほしいという、そんな目論見なのだろう。

実際おそらく、科学に携わる人々とTRPGプレイヤーは、思考実験や架空の世界が好きという面で相性がよい。
私も大好きなSF作者アンディ・ウィアーも、『火星の人』作中で主人公をTRPGプレイヤーに設定している。

舞台となる星では知識が非常に重んじられているし、出てくる科学用語も「ハビタブルゾーン」「ダークマター」など、宇宙科学に触れるなら定番のもの。
また、誘導が丁寧で、TRPG初心者でも迷いにくい仕様になっている。

日本のTRPGファン、SFファンもいっせいに湧いているので、ぜひともこんな紹介シナリオを、一つと言わずいくつもリリースしてほしいものだ。
NASA以外の機関さんも、みなさん、ビジネスチャンスですよ。

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