見出し画像

おじゃましてます。

日本三大秘境の一つ、宮崎県椎葉村。

この村に初めて行ったとき、何度「神秘的」という言葉が自然と頭に浮かんだだろう。

山に沿った道路を車で走りながら見えるのは、そのまた向こう側にある山々の雄大さ。そして、その所々には集落がぽつりぽつりと見えた。

自然の中にどんどん入っていく感覚は、それだけで、またここを訪れたいと強く感じるものだった。

そして、念願の再訪を果たした今回は、最初に訪れた時とは違う椎葉村の光景があった。

昨年の土砂災害によって、山の斜面にはなぎ倒された木と土砂が顕になっていた。
また、川の増水によって、川沿いのガードレールにたくさんの流木が挟まっていた。
きっと、今以上の光景が当時はあって、それを思うと、何か言葉を浮かべることも憚るほどの心境になった。

私は人間なんだ

たまに、自分の部屋で蜘蛛を見つけたとき、蜘蛛は苦手だけど、私と同じように蜘蛛にも蜘蛛の生活があるよな〜と思い、そっとしておくことがあった。
それでも、勉強しているときにその蜘蛛が机の上にやってきたら、やっぱり気になってしまう。
そうなると、「ここは私のスペースだから、お互いの生活スペースをしっかり分け合いましょ〜」と思いながら、外へ出したりしていた。

今回、椎葉村に来て、土砂崩れによる被害が残っている現場を目の当たりにしたときに、自然の力をひしひしと感じ取った。
そして、その時ふと、「ここは自然の世界なんだ」と感じた。

そんな体験は今までになかった。

今まで、自分が蜘蛛に生活スペースの中に入られた気持ちになっていたように、今度は自分が自然という空間の中に入っているのだという気持ちを強く感じた。

自然の力には逆らえないのだと、今までは簡単に思うだけだったけれど、私たちは自然の力を感じすぎるぐらい、自然の中に入り込みすぎていることがあるのかもしれない、そんなことを初めて思った。

それでも、私には何がどうあるべきなのか、自然の生活も、人間の生活も、蜘蛛の生活も、同じ地球上にあって、全てが単純に調和するものではない、難しい…ということしか分からなかった。

おじゃましてます。

人間はその場で意思表示ができて、それが伝わって。
生き物もそれぞれの意思表示があって、そこに注意を向けられて。

自然は、自然のことを詳しく知らない私にとって、今どんな状況で、何がこの先起こるのか、正確に読み解けるというわけでない。

それでも、大好きな自然に対する想いがあって、そして今回椎葉村を訪れたことで、新しい感情が芽生えたこの経験は大事にしたいと思った。

「おじゃましてます。」
そんな気持ちで、これからは自然の雄大さを感じ、人間として生きながら自然と付き合っていけたら、何か見落としていた自分の行動にも変化が生まれるんじゃないかと思った。

変化したいと思った。

自分は人間として必ず自然の中に入らざるを得ない。
何も気づかずにのうのうと生きるのではなく、地球が自分たちだけのものではないということ、無言でもそこには自然があるということを意識できる人間になりたい。

何も世の中に変化を与えることはできない今の自分に逸る気持ちがあるが、これからの自分を変化させ、自然の中で生きる人間で在りたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?