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美容師の卵 ピンクくん

21歳の冬
初めての運転免許更新をしました。

このとき経験した
とても印象的な出逢いについて。


視力検査等を終え
早めに講習室に着いた私は
教壇に向かっていちばん左の最前列に座り
講習が始まるのを待っていました。


すると
時間ギリギリになって
ピンク髪で派手な服装をした
チャラそうな男の子がバタバタと入ってきて
あろうことか私の隣に座りました。(!)


講習中もウトウトしたり
今なんページ?ってこちらに聞いてきたり


うわ〜〜
この人絶対ヤバい人!
仲良くなれないタイプだ、、、
なんて思いながら

あまり関わりたくないなあと思いつつ
ポーカーフェイスで過ごしていました。



初めての更新は
ブルー免許の人と一緒で
2時間の講習。


(けっこう長いなあ...)
と思っていたものの


この時観たDVDが

19歳の時バイク事故に遭い
全身不随となった青年が
34歳になった現在まで15年間
寝たきりの生活をしている

というシリアスな内容のもので

私も運転するときは気をつけなくちゃ!!
と背筋が伸びるような想いがして
すっかり見入ってしまい


隣のピンクくんのことは
いつの間にか忘れていました。



講習が終わって
皆がまばらに席を立ち始めると
隣からふわ〜と気持ちよさそうなあくびが。

なんとピンクくん
DVDの間中
机に突っ伏して寝ていたんです。
(鋼メンタル笑)


「めっちゃ長かったね笑」


いや初対面でタメ口ーー!?


ドン引きしている私をよそに
グイグイと距離を詰めてくる彼。

ピンク「どこから来たの?」

すの「....K市」

ピ「じゃあ電車?」

す「うん....」

ピ「俺も電車!駅まで一緒に行こ!」

なんでこんなことに....
と思いながら
気づけば一緒に駅に向かって歩いていました。

ピ「俺さ、更新めっちゃギリギリだったんだよね」

す「へえ」

ピ「もうすぐ免許失効するところだった笑」

ここで
誕生日がいつだからいつまでに更新しないといけないとかいう話になり

彼は私と同じ21歳だけど
ひとつ下の学年だということが分かりました。

ピ「てことは大学生なの?」

す「...うん、4年生」

ピ「就職決まってるの?」

す「うん、不動産の会社」

ピ「へえ!頭いいんだ!」

ピンクくんは思ったよりずっと話しやすくて
気さくで優しくて知性がありました。

ピ「俺、美容師目指しててさ」

す「ふうん、美容師」

ピ「今は見習いで、福岡のお店で働いてる」

す「ふうん」

ピ「福岡行ったことある?今度天神おいでよ、お店たくさんあって楽しいよ、案内する」

す「ありがとう」

そっか
それでそのピンク髪...と少し納得しました。

ピ「今日はこのままK市に帰るの?」

す「うん」

ピ「....そっか」

ちょっとだけ残念そうな感じが伝わってきました。

ちょっとお茶でも、と誘われそうな空気を察し
とっさに誘わないでオーラを出しました。

その頃私には
3年に及ぶ大恋愛が終わった直後に
寂しさゆえにフラフラと付き合ってしまった
売れないバンドマンの彼がいて
(結局2ヶ月くらいで別れたけれど)

ピンクくんと2人でお茶は...
一応彼がいるし...

と妙に真面目に考えていました。


今思えば
ちょっと冒険してみても良かったのかなあ
なんて。


ピンクくんは

「それじゃまた、3年後、次回の更新で会えるといいね!」

と無邪気に言って
自分の路線のホームへと去って行きました。

けれども
3年後の更新で会うことはありませんでした。


もうここからは
人それぞれ更新スパンが違うから
会える可能性なんて...

ましてずっと地元で更新し続けるとは限らないものね。


福岡の天神で美容師やってる
ひとつ歳下で12月生まれの
名前も知らないピンクくん。

もう一人前の美容師になって
早ければ自分のお店持ったりしてるのかな。

あるいはパパになってたりして。

また
いつかどこかで
巡り巡って会えるといいなあ。


すのの人生でいくつかある
印象的な出逢いについてのお話でした🌸

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