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夢日記 第二夜『変身』

こんな夢をみた。
気がつくと私は見知らぬ町の路地裏で、ひとり仰向けに横たわっていた。ここがどこなのか、またどのような経緯があってこんな路上で眠っていたのかどうしても思い出すことができない。ともかく家に帰ろうと上半身を起こそうとするが、どうにもうまくいかない。動かそうにも手足がないのだ。

よく自分の姿を確かめてみると、私はどろどろとした粘体の化物となって地面に這いつくばっていた。私がどうしてこんな姿形になってしまったのか、記憶は曖昧模糊として現在と過去の間を上滑りしていくばかり。

体の内側から浮かび上がってきた水泡が、表面でぶくぶくと膨れあがっては「ぱちん」と弾ける。その直後に、もう一度「ぱちん」。何度となく身体の一部が弾け飛び、その度に周囲に粘液が飛び散った。しかし、不思議と痛みはなかった。きっと身体に神経が通っていないからだと、私は他人事のように考えていた。

筋肉がないから身体を動かすことができないし、脳がないから思い起こせるような記憶もない。しかし、脳がないというのならこの意識とはなんだ?ヒトデやクラゲの類いが自我を持つだろうか?果たして、私とは本当に私なのだろうか。仮にそうだとして、私はどこからどこまでを私と呼べるのだろう。グロテスクな生物はやはり他人事のように、そんなことをぼんやりと考えていた。

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