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閉幕まであと7日の「マリー・クワント展」と閉店まであと9日の東急百貨本店の話

それほど思い入れのない「マリー・クワント展」に出かけたのは、東急百貨店本店が1月末に閉店すると聞いたためだ。では東急百貨店本店には思い入れがあるのかと聞かれると、実はこちらもそうでもない。Bunkamuraで芝居を観る前の一時間余り、友達とお茶を飲んだり食事をしたり。そんな思い出があるばかりだ。

だがマリー・クワント展は思いの外、良かった。50代、60代の女性ばかりが回顧的にやって来るのだろうと思っていたが、若くおしゃれな女性が連れ立って沢山訪れている。誰もマリー・クワントのようなミニスカートも色彩豊かなコートも着てはいない。今流行の小さなバッグを肩から下げて、昔のファッションを食い入るように眺めている。それはとても素敵な光景だった。

オシャレなカップルに遭遇

和服姿のカップルの、ベレー帽を被った女性の帯に目が止まった。黒地にマリークワントのブランドアイコン、銀のデイジー柄だったのだ。帯の前柄はソフトボール程の大きなデイジーが一つ、お太鼓柄はピンポン玉大の小さなデイジーが連なっている。
こんな生地を売っていたのか?帯にするには何尺もの生地が必要だが……。私は思い切って声をかけた。
「失礼します。その帯は自分で誂えられたのですか」
「はい、自分で作りました」 
「え!仕立てを自分で? 生地は……こういう生地が売られていたのですか?」
「あの〜自分で」
「え!じゃあ、このデイジーは切り嵌め?!」
ちょっと話が噛み合わない。
黒っぽい着流しの男性の方が助け船を出すように
「あ、いえ、自分で生地に描いているんです」
女性も”そう言えばこのオバサンにわかるのか”と気付き
「ああ、そうです。自分で描いて、帯も作りました」
買ったものではなく、生地に絵の具的なもので自分でデイジーを描いたということのようだ。よく見ると、確かに手描きで線も均一ではなく、とても味わいのある作りになっている。美大出身とのこと。
「突然お声をかけてごめんなさい。とても素敵だったものですから」とお礼を言ってその場を離れた。

グッズ売り場

Tシャツ、エコバッグ、ポーチ、どれもデイジーが効いている。これほど可愛いブランドロゴがあるだろうか。HPを見てマグカップかグラスを買おうと決めていたが、どちらも期待していたよりも小さく、使い勝手が私の好みではなさそうだ。ピンズが使いやすそうだ、赤を選ぶ。図録も欲しかったが、もう本はやたら増やさないと決めているのだ。今回は見送る。

東急百貨店本店へ

屋上へ向かう。私は思い入れがないのだが、先日の「オードリーのオールナイトニッポン」で若林さんがアルバイト時代にここの屋上で過ごした思い出を語り、それがとても良かったのだ。展望エレベータに乗りRを押す。天気がよく暖かい日曜日で、小さな子供たちがはしゃぎまわっている。渋谷の街が一望できるのかと思ったが、そんなわけはなかった。周りはぜんぶ囲われている。それでも他のビルに邪魔されず、広い空が見られた。

思い出の喫茶店でお茶でも飲みたいところだが、8F,6F……どのフロアもすごい行列だ。さっさと諦めて外にでる。人の少ないフロアもあるが、セールがずいぶんとにぎわっている。東急じゃなくてもこの景色は久しぶりだ。経済状況はともかくも、人は街に戻ってきた。もう少しだ、光は見えている。




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