5.初めて性を意識した時の話

小学三年生。
初恋もしたことなく、性のせの字も知らなかった僕は
日々サッカーや虫取りなど、小学生ぽいことをして遊んでいた。
まぁ、この年齢の子供にしては普通だろう。周りの子もそんな感じで、
男女の垣根なく遊んでいた。

とある日の放課後。
人数が足りなかったため残っていた男女混合でサッカーをすることになった。
小学生とはいえ男女の差は多少あるので
男子はシュート無しのパス専。キーパーもなしの完全接待ルールだ。
男子からは多少のブーイングはでたが、サッカーできないよりマシ
ということで渋々納得した。
いざ試合が始まると、これが意外と面白い。
ゴール前までボールを運んで女子にシュートを打たせる。
そんな単純なサッカーだったがやったことのないスタイルだったのと、
蹴り慣れていない女子が放つボテボテのシュートがなんとも笑いを誘った。

そんなこんなで一通り遊んだ後、
僕を含めた何人かの男女で意外とおもしろかったね、なんて話をしていた。
僕はサッカーボールを椅子にして座っていて、そのまわりにちょっと離れて皆が。
そんな感じで話をしていると、女子のMちゃんが後ろから近づいてきた。
なんだろうと思ったが特にそれを指摘することなく話続けていた。
すると、

「かにばさみー!」

と急に僕の顔を太ももで挟んできた。
僕が座っているため挟みやすい位置にあったからだろう。

マジで頭が真っ白になった。

太ももやらかっ!

そんな感想だけに支配された。

僕がしどろもどろになっているのもつゆ知らず、Mちゃんは僕をからかうようにしてその場をダッシュで離れた。
Mちゃん的には怒った僕がMちゃんを追いかけて、そこから鬼ごっこにでも発展させようかとでも思っていたのかもしれない。

僕は何とか立ち上がり、
「な、なんなんだ」
と童貞丸出し(当然だが)の発言をするのがやっとだった。

追いかけて来ない僕に飽きたのか、そのままMちゃんはランドセルを拾って先に帰ろうとしていた他の女子たちのグループに混ざっていた。

それを機にお開きの雰囲気が流れ始めたので、僕は少しでも落ち着こうと
サッカーボール片づけてくる、と言い昇降口にあるボール入れに向かって歩き出した。内心めちゃめちゃドキドキしていた。

ボール入れに片づけ終わった後も、皆と別れ一人歩く帰り道も。
Mちゃんの太ももがずっと頭を支配していた。

もう一回挟んでくれないかな…
また一緒にサッカーやれば挟んでくれるかな…

そんなことを考えていたが、そう簡単に挟んでくれるわけがないこともわかっていた。それに、子供ながらに気持ち悪い願いだなこれは。とも思った。
どんな顔で頼めばいいのかもわからなかったし、なによりそんなことを考えているのが皆にバレるのが恥ずかしかった。

次の日もMちゃんとは普通に会話をした。
昨日のことはすべて忘れた、みたいな顔で。
それからも皆で遊んだし、家に行ったりもした。
仲のいいともだち、みたいな顔で。

月日がたち、僕は大人になった。

あの日Mちゃんが何の気なしにやった無邪気な遊びが、僕のその後の人生単位に影響をおよぼしているとは思わないだろう。

大人になる過程で
何人かの女性と付き合った。

「あのさ、お願いがあるんだけど、太ももで顔はさんでくれないかな」

このお願いは僕の常套句だった。
「えーなにそれwいいけど」

なんて、笑いながら挟んでくれる。

その度に、あの日のMちゃんの太もものやわらかさには勝てないな、
と考えてしまう。

僕の人生、Mちゃんに支配されているといっても過言ではない。

そんなしょうもない性の芽吹きの話。

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