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舟編みの人~第17話 かばん語

朝倉
「かばん語って研究しだすと面白いな…」
伊島
「そのかばん語って…
 いったいどういうものなのですか?」
朝倉
「造語の中でも…
 混成語・混合語・混交語とも呼ばれるもので、
 一群の造語をルイス・キャロルが、
 鏡の国のアリスで両開きの旅行カバン(portmanteau)に関連付けて…
 紹介したことから知られるようになった造語の作り方や
 それに沿ってつくられた造語の事を言う。」
与那嶺
「不思議の国のアリスとか読んだ事がありますけど…
 こうした面白い物語の中から新しい言葉の概念が生まれるのは興味深いですね。」
「因みに…
 直接的に登場人物ハンプティ・ダンプティが…
 かばん語の説明をしている場面はこちらですね。」

「さよう、粘滑[ねばらか](slithy)とは、滑らかで粘っこい(lithe and slimy)様子じゃ。この言葉は旅行カバン(portmanteau)のようじゃろう — 2つの意味が、1つの言葉に詰め込まれておる」

ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』 ハンプティ・ダンプティがアリスに語る場面

朝倉
「与那嶺も…
 さり気ないフォローするようになったな…
 あまりにも自然に会話に入り込んで来るのでびっくりしたぞ。」
与那嶺
「実は…
 このかばん語って…
 方言としても結構定着してるみたいですよ。」
伊島
「餅は餅屋って事ですね…
 方言研究を進める中で何か興味深い気付きがあるみたいね…
 言いたくてうずうずしているの…
 丸わかりよ…」
与那嶺
「恐縮です。
 折角ですので…
 少しばかり…
 その辺りを披露したいのですけど…
 宜しいですか?」
朝倉
「良いだろう…泉くんも異論はないな?」
伊島
「こんなワクワクしながらプレゼンをする…
 美土里さんを見るのは久しぶりですからねえ…
 異論どころか大歓迎ですよ。」
与那嶺
「ちょっとハードル上げられた気もするのですけど…
 じゃあ、説明しますね…」
「先ずは愛知県一宮市の方言…
 屋運は屋内運動場ですね。
 一般には体育館とか言われる場所ですね。」
「岐阜県の方言で、
 とらまえるは、
 捉えると捕らえるという表現が入り混じったものですね。
 意味合い的にも隣り合っているので、
 ごちゃ混ぜにした印象がありますね。
 漢字で書くと捕捉とか書きますからね…
 平仮名で一発で表現しようとしてますよねコレ…」
「最近は全国的に遣われる用語にも…
 多くかばん語が遣われていますが…
 かなり前からあるものもありますね…
 スモッグやブランチ、ムックにパソコン、
 それにピクセルもそうですね。
 この頃遣われる用語ですと、
 グランピングにウェビナー、
 ホカンスとかありますね。」
朝倉
「こうしてみると、
 知らず知らずのうちにかばん語を遣っているし…
 今も新しくかばん語が生み出されているんだな…」
伊島
「中にはあんまり浸透せずに消えていく…
 かばん語もありますね。
 この辺りは語感とか…
 日常的に触れて用いられる言葉なのかが関係してそうですよね…」
与那嶺
「新しい商品とかが発売される時に付けられる名称って…
 意外とかばん語由来のものが多いみたいですよ…」
朝倉
「効能と用途を一発で簡潔に表現したいだろ…
 あとは…
 表装とかそんなに大きくしたくない…
 商品名とかはある程度訴えかけるようなインパクトが大事だからな…」

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