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舟編みの人~第13話~

与那嶺
「この食べ物…
 どうしたんですか?」
朝倉
「知り合いと言うか…友達に地元が愛知県のやつがいてな…」
「もうすぐひな祭りだから…持っていけと持たされたんだよ…」

「愛知県では…
 おこしもの
 と呼ばれていて…
 ひな祭りのお祝いの時に拵えるものなんだ…」
「米粉を練ったものを型に入れて起こす事から付けられた料理で
 蒸し餅・焼き餅みたいなものだな…」
「型の紋様には…
 鯛に菊に扇…
 他にも雛祭りらしい絵柄の型があってだな…」
与那嶺
「なんで自分の地元でもないのにそんなに詳しいんですか?」
朝倉
「何度か…
 その知り合いの家に手伝わされに行った事があるんだよ…」
「興味を惹かれたのもあるが…
 ただ作ってお終いでは…
 作り損じゃないか…」
「仮にも物書きの端くれだ…
 折角なら話のネタにでもしないと勿体ないだろ…」
「それに郷土史コラムに関わりがある与那嶺にとっても…
 美味しい話題を提供出来ればと…
 ちょっとした老婆心だよ…」
与那嶺
「可愛い色付けがされていますが…
 これってどうやって食べるものなのですか…」
朝倉
「蒸したり焼いたりした後に…
 醤油や砂糖をお好みで付けて食べるんだ。」
与那嶺
「ほんとに蒸し餅とか…焼き餅みたいなものなんですね…」
朝倉
「意外と作られている地域が限定されているみたいなんだ…」
「愛知県でも…
 安城に刈谷…
 名古屋市でも旧東海道筋を中心に作られているらしい…
 でも岡崎宿や熱田の宮宿に藤川宿とかでは聞いた覚えがないから…
 本筋と言うよりはちょっと外れの辺りで作られている…
 大名や武士の風習に憧れて…
 菓子職人を通じて…
 庶民が縁起を担いで江戸時代に発達させたものなのかもしれないな…」
「元々は落雁の型などが流れてきた事から作られ始めたらしいから…」
「菓子職人見習いが練習も兼ねて型も作ったのかもしれない…」
与那嶺
「一つのお菓子が生まれた歴史を辿るのも結構興味深いものがありますね…」

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