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静脈麻酔ずっと意識があった話【流産手術】

昨日流産手術を受け、無事に処置を終え帰宅しました。
今回は静脈麻酔がどんなものだったのかについて書いていけたらと思います。


はじめに

どうしてもこれを書きたいのは、
手術中最初から最後まで意識があったからです(笑)

静脈麻酔をすると、麻酔された側がどういう体験をするのか
これについては体験した人によって違うか、
もしくは覚えている範囲には人によって違いがあるので
「眠くなって起きたら手術が終わっていた」
というひともいれば
「ぐわんとなって、気がついたらベッドの上にいた」
というひともいます。

静脈麻酔は周囲に経験者もおらず、
ネットで読んだ経験談をふまえて、
「一緒に10数えましょうね」「いーち、にーい、zzz」
のようなカウントダウンシステムや、
麻酔がきいたら普段寝ている時と同じ状態を経て、
ベッドの上で起きる。
というものを手術前に想像していました。

実際は、カウントダウンはなく…!

麻酔がかかる瞬間からとけるときまで
まるごと記憶に残っているので、
フルで覚えていると何が見えるのか
静脈麻酔がどんなものなのか気になっている方の
参考になれば幸いです。

静脈麻酔がかかる瞬間

まな板の上の鯉状態で手術を待っていると、
看護士さんが心電図の胸にはるパッドをペタペタはってくれます。
そうすると自分の心音の「ぴっぴっぴっ」という音が手術室に鳴り始めます。
(麻酔中もこれが聞こえます)

執刀医の先生が患部の消毒をはじめ
えっ、麻酔は? 麻酔はいつやるの? と不安になっていたら
看護士の方が「先生、体重47.◯◯kg(端数忘れました)です」
といい、すると先生が間髪入れず
「3cc」
と返し、しばらくして
「麻酔がきいてウトウトしてきますから、まぶたを閉じていてください」
と看護士の方に言われました。

なんだかもう執刀医の先生は処置をはじめているし、
まぶたをとりあえず閉じて、
えっ、これ麻酔きかなかったらどうするの? どうすればいいの?
と頭の中でぐるぐる考えていたら

視界が横にじわじわと
ぐーーーーーんと伸びていきます。
この時見えた映像としては、
ごま嵐のテレビ画面が横に伸びていくようなもの。
まぶたを閉じているとなんとなくノイズがかった
やや暗い色が見えると思うのですが、それが横に伸びます。
おそらく音も一緒に伸びていきます。
(まぶたは閉じています)

麻酔切れかけの頃に目を開けると、
無茶苦茶つよいめまいを見ている時と同じように、
視界がぐるぐるグラグラして、像が二重に見えるのですが、
おそらくそれの最強の現象が起きていて
横長の波紋みたいになっていくのだとおもいます。

麻酔がかかってから

眠気はゼロ
ノイズが横に伸びていくと、次は
手術台のめっちゃくちゃ明るいライトがまぶたを照らしているからか、
白い空間にいるように感じます。
(目、開けてないよね、、? 不安)

自分がまるで球体か何かになったように感じます。
それから等間隔でリズムを刻む音楽が鳴り続けています。
(おそらく自分の心電図の音と、先生たちがしゃべっている声)
すべてが非常にぼかしがかかったような音なので、
何の音か、これが声だとか音楽だとか、そういう区別がつきません

白く長い一本道の廊下をずっと前進していくように感じます。
現実に自分の周りに起こっている現象が
ぼやけて見えているという解釈はできず、
肉体から意識だけ抜き出して、
白い筒の中に閉じ込められたような気持ちになります。

リズムのある音楽を聞きながら
白い筒の中を進行していく白い球体になる体験です。
視界の左右には、うす黄緑色の、
線上の幾何学模様が視界外に向かって波を描いて流れていきます。

体験として一番近いのはCTだとかMRIの筒の中にはいっている時ですが
麻酔は物理的に自分に肉体があることを感じられないので、
「私これいやです! やめたいです!」
と伝える手段もなければ方法もなく
もとに戻れるのか、いつ戻れるのかもわからないので
かなりほぼ臨死体験でした。

死んだら灰色の筒の中にはいって吸い込まれていくという話を聞いたことがありますが、筒ってこれ? と思いました。

時間の流れは実際の時間と同じなので、
手術時間分筒の中に閉じ込められます。
五分ほどで終わる手術でしたが、とてもつらいというか
苦しかったです。

麻酔がきれはじめる時

麻酔のピークがすぎると、徐々に画面や音にかかっていたぼかしがゆるやかになっていきます。
やっと聞こえている音の中に、人の声が混じっていたことに気が付きます。
この段階でもまだ言葉の音は聞き取れないぐらいぼやけていて、
唯一ことばの抑揚や音階で、「おわりましたよ~」と言っているだろうことを理解します。
それと同時に失っていた肉体もほんのわずかに感じられるようになり、
多分いま足を動かしたな、など感じます。

自分の意志で体を動かしたり、
まだ現実の世界にいるという確かな感覚が戻らないまま、
移動式のベッドにのせられます。
このあたりになると音声にかかっていたぼかしが50%くらいになり、
音が判別できます。
前段階(足を動かしたな、の時)から15秒とか25秒とか、そのぐらいの時間経過です。

この時、看護士さんたちは、
目もあかず反応も示さない私(はたから見たら意識不明)に
「ベッド移動しますよ~」
など、明るく声かけをしてくれます。
これ、とても救われます。

意識がなくても耳は聞こえているとか
死んだあとも聴力は少し残っているとかよく聞きますが、
それを疑似体験したようなものです。
本当に耳だけ聞こえているのですよね。
目は開けられないけど唯一音だけは受け取ることができる。

それで看護士さんたちが、
反応のない私に対しても、いちいち今からどうするとか
これからベッドにうつりますよとか
声をかけて下さるのが
本当に、今自分がどうなっているのかがわかるので
とてもありがたかったし、安心しました。
無言でベッドに転がされたり
移動されたりしたらちょっと怖かったと思います(笑)

感覚がもどりはじめる時

手術前にいた自分のベッドまで運ばれている途中
エレベーターの中で、うっすらまぶたを動かせるようになりました。
「まぶたがある!」とか「動かせるぞ!」とかではなく
自然と、今みている白い空間の外側に世界がもう一つあることに
気が付くような感じでした。
まぶたがうっすら開くと、看護師さんたちやベッドのはしっこが
10%くらい見えます。
看護士さんはよく患者をみているので、
目があいたことに気がついてくださって、
「意識ちょっと戻ってきましたね~」
と声をかけてくださいます。

それから自分のベッドにうつされますが、
ちょっと目が開いているので、
「枕のところまで這い上がれますか~?」
と声をかけられますが、
生まれたての子鹿どころかあと2秒で死ぬ子鹿なみに体が動かせないので、
看護士さんに「難しいですよね~~」と笑ってもらいながら枕までひきあげてもらいました(笑)
この頃にはぼやっと喋れるようになっているので、
「ありがとうございます」も言えます(笑)

看護士さんたちは私に回復姿勢をとらせ、
嘔吐した際にうけとめられるよう、嘔吐用のお皿を
顔面にぴったりセットして、お部屋の電気を消して去っていきます。
幸い嘔吐はしなかったのですが、
ゲボしなきゃだめかな? と思うくらいに
嘔吐前提の完全体制でした。

ベッドに戻ってきた頃は、吐き気はないけどなんだか具合は悪くて
粗めの呼吸を繰り返していました。
目を開けると視界が強烈なめまいのようにぐるぐるまわるので、
目を閉じてひたすら呼吸。

しばらくして視界が定まってきたので、
枕もとに看護士さんがおいてくれたスマホを取って、
LINEで家族に無事に麻酔から戻ったことを連絡しました。
手術前最後に家族とLINEした時から、およそ50分ほど経っていました。

ここからは徐々に体も元通りになり、
回復姿勢をといて天井を向いて横になることもできるようになりました。
30分ほど経った頃? 点滴の様子をみに看護士さんがいらして、
血圧をはかり、術後最初のおトイレなどに付き添ってくださいます。
この段階ではまだ、走ったりしたら倒れるだろうな、ぐらいの
足元のしっかり感です。

その後またベッドに戻り、いくらかぼんやり休んだら、
もう麻酔の影も形もないぐらい回復しました。

おわりに

静脈麻酔を体験する以前に家族から、
あなたはよく夢を見る人だから、
麻酔の間中覚えてるかもしれないね、と言われていました。
実際365日のうち360日ぐらいは夢を見て、
起き抜けであれば内容を事細かに話せます。
それに加えて、アルコールに非常に弱い体質です。
(アルコールに強いと手術中にも目が開けられるというような
話も聞きました)
静脈麻酔には健忘作用があるそうで、ほとんどの人は麻酔中のことは忘れてしまうそうです。
同じような体質の方は、こういうものを見てしまうかもしれないですが
ちゃんと戻ってこられるので、どうか、、、がんばってください。

今回の静脈麻酔は流産手術で受けました。
同じく流産手術で受けられる方や、
中絶手術などで受けられる方も、いらっしゃると思います。
これを経験するまでは、
麻酔は痛みから逃れるための救済処置と考えていたのですが
麻酔も麻酔でしっかりつらい体験です。
それに加えて手術内容がまったく嬉しいものではありません。
パートナーが手術を受けられる方は、
手術も麻酔も想像以上につらいものであること、
どうか受け止めて寄り添ってあげてください。
みなさま、心と体をやすめて、ご自愛なさってくださいね。

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