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北海道が好きになったわけ21

北海道の人は気前がいい。
と言ってもお金ではなく、魚介類だったり野菜だったり自然の恵みを分けてくれることが多かった。

浦茂アパートの近くに住む、通称「お父さん」もそのうちの一人で、僕らはみんなとても世話になった。

「ほれ、これ持ってって食べれ〜。な〜んもだ〜。お前ら若いんだからこれくらい食べれるしょ〜」が口癖で、僕らにいろいろな北海道グルメを味あわせてくれた。

ある日は大きな夕張メロン。お陰でしばらくの間、朝ごはんが夕張メロン半分てことがあった。
またある時はお父さんが蓮ちゃんを連れてどこかにいったと思ったら、大きなタコを持って帰ってきた。この時はしばらくタコ焼き+ライスが続いた。

他にもジャガイモや玉ねぎ、ホタテにイカなど、いつも全て無料で振る舞ってくれた。

「お父さん」の奥さん、通称「お母さん」に一度聞いたことがあったけど、お父さん同様、

「な〜んもだ〜。お父さんもワタシも若い子達が『美味しい美味しい』って食べるの見るの好きなんだわ」と言って笑っていた。

代わりにと言って、町対抗運動会に連れて行かれたりはしたけど、一応、体育会系テニス部の我々にとって走るのは得意だったし、そういう時も色々なオッチャン&オバチャンらに「拓大さん足速いな〜」「拓大の子ら元気だわ〜」と囲まれていろんなモノをご馳走になったので、代わりでもなんでもなかった。

そんなある日の事。例の「具なしカレー」で有名な「友好寮」に住む、渋谷出身のイケメン・チャボと相方みたいな強面のモク、デカいの2人が慌てふためいて浦茂アパートに駆け込んで来た。

「ちょっと!跡見さんいる?大変大変!ちょっと今いるヤツ皆んな一緒に来て!早く!」

跡見さんをこの感じで呼びに来る急用ってロクなもんじゃなさそうな気がするが、仕方ないので跡見さんとそこにいたチクリン、沢村、蓮ちゃんと俺でラムダ号に乗り込んで、前を2ケツで行くチャボ&モクのカブを追った。

『なんだろ?拓大って頭悪いし(昔ね!)やっぱ喧嘩かな。跡見さん呼びに来たってことは、ヤベー相手かな。まさかプロの方々?』

心配を他所にカブはドンドンと妹背牛の山の方に進んでいく。かなり急勾配の山道を登って行くとさくらんぼ畑の中にある一軒の家についた。

そのにいたのは如何にも気の良さそうなおオッチャン。あと、娘さんかな?僕らと同年代の可愛らしい女の子。なんだ?こりゃ?

「あら〜、ホントにたくさん連れてきたんだね〜。ほら、遠慮なく食べれ〜」とオッチャン。

呆気に取られる僕らの前に、普段はお貧しくてまず口にすることの無いジンギスカン!加えて野菜の数々が積まれている。

そっとチャボに聞いてみる。

「チャボ、なんなのこれ?」
「このオッチャンのトラックが山で溝にハマって動けなくなってたからさ、俺らが後ろから押してあげたんだ。な?モク?」
「おう。そしたらお礼に肉食わせてくれるって言うからさ、友達連れてきていいっすか?って聞いたら、イイって言うから」
「で、友好寮戻ったら誰も居なくて。他にちゃんと食ってなさそうな貧乏って言ったら浦茂でしょ?」

。。。おい、お前ら。まず常識で考えろ。それは社交辞令ってもんだろ?で、万が一、本当だとしてもこんな多人数連れてきちゃダメだろ?

そこへ、奥様が追加のお肉を持ってきた。

「あら、こんにちは〜。人数増えたね〜。これはこんなもんじゃ足らないからちょっと買い足しににいってくるわ〜」

「いや!滅相もない!そんなつもりじゃないんです!帰ります!」と何度も言ったが、

「いいから、いいから。食べていって欲しいんだ〜」とおっちゃんと奥様に強く押し留められて帰るに帰れなくなった。

結局ハラペコ男子大学生(一応体育会系)×7人で大量に肉を食いまくり、楽しくなっちゃったおっちゃんが出してくれたビールを飲みまくり、デザートにめっちゃ美味いサクランボを食いまくり、お土産も頂いて帰った。

今文字にしていると、俺達って本当にとんでもなく頭悪かったんだと気付かされます。。。 

少しだけ良かったのが、大食漢ボーイの石田ちゃんが居なかったのと、娘さんがイケメン渋谷ボーイのチャボにうっとりしていたくらいか😍。あんまり田舎にいるタイプのイケメンじゃないからね。なんせ「笑っていいとも!」のイケメングランプリみたいなので優勝したことあるくらいだから目の保養にはなったかも。

北海道のオッチャン、オバチャンにしてもらったお返しが少しでもできるように、自分も同じように若い子達に接してやらないとなと思います。思ってはいるんです。本当です。

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