まるで太陽を割ったようなとろけるオムライス
たまにショート動画で流れてくる、バーテンダーが氷をナイフで削りまくってフランベみたいに机を燃やして白いモヤモヤの中から大さじ2杯くらいのカクテルを提出するアレ。
あれを見ると少し笑いそうになってしまう。
心の中の僕が、「はよ出せや」とバーテンダーにハリセンを叩きつけるのを想像してしまう。
ああいう「臨場感溢れるでっしゃろ?」みたいな店に僕は向いていない。
ストップって言うまで注がれるイクラやチーズも、わざわざ目の前で2等分されるハンバーグも、バーナーで炙る様子を見せつけるなんやかんやも。
「厨房で済ませてこいや」と心の中のハリセンが言っている。
なぜこういう料理が嫌かというと「さぁ、リアクションをどうぞ」と言われている気になってしまうのだ。「美味しそう〜!」だの、「すご〜い!」だのを過剰に言わないといけない気になってしまう。
カメラを構えて、喜々としてストーリーにあげないといけない気になってしまう。
気持ちとしては、美容院で「後ろこんな感じです」と自分の後頭部を見させられている時と同じ気持ちだ。
なんて言うのが正解か、いまだに分からない。
最近パワーストーンのブレスレットを購入してみたのだけど、店主のおばちゃんがブレスレットを金属器の中に入れ、木の棒でかき回し、ボワーンという音を鳴らしてみせた。
「浄化したよ。」とおばちゃんは言った。
「浄化ありがとうございます。」と言うのが僕の精一杯だった。
もっと歳を重ねれば、こういうシチュエーションも上手く対応できるようになるだろうか。
目の前でオムライスの卵を割られて、とろりと流れ出る半熟のそれと、香ばしいデミグラスソースのハーモニーに「美味しそう〜!」と笑顔を作れるだろうか。
本当の僕はしっかり火の通ったケチャップオムライスが好きだというのに。
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