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バンダイの変形ロボと、タカラトミーの変形ロボ

 子供向け玩具メーカーとして有名な会社といえば、「バンダイ」「タカラトミー」の2社が双璧をなしている。もちろん自分も、子供の頃はこの2社のお世話になりながら成長してきた。バンダイではニチアサ作品のDX玩具に触れることが多く、タカラトミーではトミカやベイブレードなどを主に遊んでいた。おそらくほとんどの人がこれらの会社の玩具に触れたことがあるはずだ。それほどにバンダイとタカラトミーの玩具のカバー範囲は広い。
 その中には、自分が今でも魅了されている『変形ロボ』も含まれる。バンダイもタカラトミーも、実に様々な形で「変形ロボ」を扱っており、そのコンセプトも製品毎に多様である。今回は、この2社間での「変形ロボ」のコンセプトの傾向の違いについて見ていき、言語化していこうと思う。あらかじめ断っておくと、今回の記事はバンダイとタカラトミーの優劣を決めることが目的ではない。あくまで両者の違いを見出だすことである。
 2社ともに「変形ロボ」に限っても製品の種類は様々だが、今回は低年齢層向けの変形ロボ玩具として、バンダイからは「戦隊ロボ」「ユニトロボーン」を、タカラトミーからは「ジョブレイバー」「シンカリオン」を例に挙げて考察する。


各シリーズの特徴

 まずは、それぞれの製品シリーズの特徴について軽く纏めておく。共通する評価軸として、「価格」「サイズ」「可動」「カラバリ」「ジョイント」「変形ギミック」などに注目している。

戦隊ロボ

 1年周期で番組が切り替わるため、玩具のシリーズも1年ごとに変わる。年によって規格やコンセプトは様々だが、共通する特徴として
・価格は一万に近く、非常に高額
・サイズが大きく、27cm前後のものが多い
・可動が少なく、基本的に下半身は固定で腕が動くことが多い
・年間で販売される玩具数は大方決まっている
・一般販売ラインでは色変え商品は少ない
・合体は乗り越えによる接続がほとんどで、I字のジョイントが良く使われる
・変形ギミックが非常に大味である
といった傾向が強い。
 現行の戦隊ロボは『ブンブンジャーロボ』で、価格は7480円である。今作の特徴は、ブンブンカーと呼ばれるミニカーをコアメカに通すことで、バネが解放されて瞬間変形する点である。

 さらに、コアロボには多数の合体ジョイントがあり、ブンブンカーを付け替えて多種多様なオリジナル合体を楽しめる。このように、戦隊ロボには『その一年のロボの主要なコンセプト』が分かりやすく示されていることが多く、過去作では「クリアパーツを多用してキラキラしている」「左半身と右半身に分かれて組み替えられる」「可動が多い」「合体数が多い」などの年間コンセプトがある。

ユニトロボーン

 販促番組無しで2年近く続いている合体玩具で、リンゴやロブスターなど身の回りの物体や生き物が合体して人型や動物型などのロボになるシリーズである。合体するモチーフ同士の関連性の無さが話題であり、モチーフに選ばれるものも「街路樹」や「山」など、他の合体玩具では到底見られないようなチョイスも味である。
・価格は1000円台の小型タイプと2000~3000円の大型タイプがある
・サイズはものによってまちまちだが、大型タイプは20cm前後のものが多い
・可動はほとんど無いが、人型ロボタイプは腕のみ動くことが多い
・色変え商品はほとんど無いが、たまに同モチーフの色違いがある
・合体は基本的に1箇所のI字ジョイントで完結する
・変形はほとんど差し替え無しで行われるが、武器を取り外して持たせることがある
という特徴があげられる。
 価格は徐々に上がっており、初弾では2255円のものが多いが、中盤からは2750円が標準になっている。本シリーズの合体ギミックの売りは、合体させた瞬間にスイッチが押されて瞬間変形する点である。その後いくつか手動変形を挟んで完成させる。合体規格はすべて統一されているので互換性はあるものの、デザインは1商品内で完結するようになっているので、自動的に「変な見た目」になる。しかし、公式では「ヘンテコ合体」と称し、この遊び方を推奨している。

 また、その他の特徴として「やけにリアリティのある造形や塗装をしている」というものがあり、モチーフとなった物体をデフォルメチックなデザインに落とし込むのではなく、質感などを現実と同じように忠実に再現しているという謎の力の入れ具合になっている。

ジョブレイバー

 トミカシリーズの変形ロボの現行作であり、YouTube上で5分程度のショートアニメも展開されている。トミカに近いサイズ感のミニカーとジョブロイドと呼ばれるマスコットロボが合体して人型ロボになることが特徴である。ミニカーのモチーフはトミカ同様現実に存在する車種であることが多い。
・価格は2970円のものと、一回り小さい2640円のものがある
・ミニカー1体分の変形なのでサイズは非常に小さく、13cm程度である
・可動箇所が多く、頭と胴体以外の四肢は基本的に可動する
・色変え商品が多く、変形パターンの種類は商品数ほど多くない
・ジョイントは乗り越えによる接続が多い
・変形には一部、爪を引っ掛けて引き出すなどの細かい操作もある
 ミニカーとジョブロイドを合体させると瞬間変形するギミックがある(奇しくも今期は瞬間変形ギミックが豊富である)。その後手動による変形を経て完成させる。

 カラバリやリデコが多く、主役機のパトカーだけでも「ポリスブレイバー」「ポリスブレイバーゼロ」「ポリスブレイバーエターナル」「レースブレイバー」や「ポリスブレイバーNULL」「レースブレイバー(車種違い)」「ポリスブレイバーNULL OVER DRIVE」などの種類がある。また、ラインナップにはジョブレイバーを大型ロボに強化できるアーマーも存在する。
 個人的に、ジョブレイバーは現状最もおすすめしたい変形ロボ玩具である。アピールポイントとして、「Amazonなどで実売2000円程度という安さ」「場所を取らないサイズ感」「小さいのでふとしたときに手元で気軽に遊べる」「そこそこ良い可動域」「変形ギミックの面白さ」など、手を出しやすい上に遊びごたえもある良玩具となっている。もし余裕があれば一度手に取ってみて欲しい。

シンカリオン

 プラレールと同規格の新幹線がロボに変形するシリーズである。今回は最新シリーズである「シンカリオンCW」について扱う。現在日曜日に30分枠でアニメ放送がスタートしており、玩具はそれに3ヶ月ほど先駆けて発売された。CWシリーズでは、新幹線1両がロボに変形し、エルダビークルと武装合体することで一回り大きいシルエットになる。
・価格はシンカリオン単体が4950円、武装用ビークルが2200円である
・単体でのサイズは18cmほどだが、後述する3両合体をすると27cmほどになる
・可動域は非常に優秀で、頭や腰も含めてアクションフィギュアに期待される箇所はすべて可動する
・変形ギミックは基本的に全て共通で、新幹線の形状によって細部が異なる
・ジョイントは乗り越えによるものと渋味による接続がある
・変形はパーツの差し替えによって行う割合が大きい
・車輪部分など余剰パーツが多い
 新幹線というモチーフの都合上、どれも外観は似通っており、必然的に変形も同じような流れになる。ただし、エルダビークルによる武装合体は様々なパターンがあり、変形ギミックのマンネリ化を解消している。

 また、シンカリオンを3両分合体させることで、非常に大型な「シンカリオンSRG」を完成させられる。また、他にはない特徴として「セット商品になると単品で揃えたときよりも少し安くなる」という点がある。本シリーズはまだ初期ラインナップの段階だが、アニメの情報公開で「新規シンカリオン」や「既存ビークルのリカラーやリデコの新ビークル」の存在が明らかになっている。

バンダイの変形ロボ

 戦隊ロボとユニトロボーンから見えてくる共通点として、「サイズが大きい」「最小限の可動」などがある。戦隊ロボは言わずもがなでかなり大きめであり、ユニトロボーンも事前情報から受ける印象に比べると"思っていたよりも大きい"という感覚を受ける。また、両者ともに可動は基本的に無く、せいぜい腕が動く程度であることが多い。
 このような傾向について、自分は「子供の遊びやすさを重視した結果」であると考えた。まずサイズ感についてだが、これは細かい作業が不慣れである子供が遊びやすいような大きさにした結果であると感じた。実際に遊んでいて、変形する各パーツが大きく、分かりやすい変形が多いような印象を受けた。また、パーツが大きいことで「頑丈さが担保されている」という側面もある。このような影響から、商品自体のサイズも大きくなっているのだと思われる。
 また可動域についてだが、可動箇所は変形させる際の煩わしさにもなりうるという問題がある。これはドンオニタイジンやキングオージャーを遊んでいて感じた感想だが、一定以上のサイズになると、予期していない関節が勝手に動くということが遊ぶ上でかなりの障壁になる(誤解の無いように言っておくと、自分はこれらの戦隊ロボもめちゃくちゃ好きです)。また、可動させるために関節を仕込むと、変形パターンに制限が生まれるという気付きもあった。例えば、ブンブンジャーロボは体が半分に開くという大味な変形をしているが、胴体に可動を仕込むとこのような大胆な分割はできなくなる。遊びやすさや予想外の変形ギミックを仕込む上では、人体の関節構造はいくらか邪魔になるのである。

 ちなみに、遊んでいて感じたことだが、腕可動だけでも少しの表情付けは可能であることが多い。つまり、変形ギミックを優先させつつも最低限必要な可動は残されているのである。
 まとめると、「変形の遊びやすさを優先したサイズや可動」「大胆な変形ギミックを成立させるための可動のオミット」などから、「変形中の遊びごたえを重視した変形ロボ」という像がバンダイの変形ロボの中に見えてくる。

タカラトミーの変形ロボ

 ジョブレイバーとシンカリオンに共通する事柄として、「サイズが小さい」「変形後の可動域が広い」「カラバリが多い」などがある。ジョブレイバーは変形ロボの中でもかなり小さく、シンカリオンも大きすぎないサイズ感になっている。このサイズ感は可動にも貢献しており、先述したように「大きいロボの可動は煩わしさがある」ため、優秀な可動域を取り入れるためにサイズが抑えられていると捉えることも出来る。
 また、ベイブレードやボトルマンでも見られるように、タカラトミー玩具はカラバリが多い傾向にある。ジョブレイバーの変形構造に着目すると、「パトカー型」「バイク型」「ヘリ型」「トラック型」など、同一の構造になっているものが多く、その中で色違いがいくつか発売されている。シンカリオンも根本の変形行程は全て同じであり、形状が同じ部品も多い。このことについて、ともすると「金型を流用して手抜きしている」と言われかねないが、別の視点で捉えることも出来る。確かにメーカー目線ではコストを節約できるというメリットがあるが、消費者目線で見ても一定のメリットが生まれている。それは、「カラバリが多いため選択肢が広がり、自分の好きな色やデザインを選ぶことが出来る」というものである。ベイブレードなどのバトルホビーでも、カラバリが多種多様なことによって「自分の好きな機体を自分の好きな色で使える」という可能性が生まれている。

 変形ロボも同様に、「気に入った変形パターンのロボを自分の好きなデザインで選べる」というメリットが生じている。また、「カラバリが多いので躍起になって全種類集めなくても良い」という財布への優しさもある。
 まとめると、「可動域による変形後の飾り映え」「好きな色やデザインを見つけられる」といったことから、「変形前後の見映えを重視した変形ロボ」という像が見えてくる。

「変形ロボ」とは

 これまでの考察をまとめると、バンダイの変形ロボは「変形ギミック重視」で、タカラトミーの変形ロボは「変形前後重視」であるように感じた。あくまでこれはいち個人の考察にすぎず、実際の所をメーカーがどのように考えているのかを知ることはできないが、外部から見て感じた印象としてはこのようになる。
 他の記事を見ても分かる通り、自分はかなり「変形ロボ」が好きだ。そう感じている理由として、「変形前と変形後で2通り(ものによっては3通り以上)の見た目が楽しめる」「変形でパタパタとパーツを動かしていく達成感」「目の前で全く別の姿形に移り変わっていくことへの驚き」など、言葉にすると様々な要因がある。変形前後の見た目のカッコ良さも、変形中の楽しさも全て、変形ロボの大事な要素である。よってバンダイの変形ロボもタカラトミーの変形ロボもどちらも甲乙つけ難く、等しく魅力的である。方向こそ違えど、どちらも『変形ロボ』と真摯に向き合い、楽しい玩具を生み出し続けている。

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