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母の彼氏1 田中さん① 「初対面」
小学校3年生だったか、4年生だったか、もう思い出せないけど、もうそろ頃すでに父は家にいなくて。
ある日、出掛けようとする母親にワガママを言ってついて行った。
お母さんのことが大好きだったから、離れたくなかった。
多分、待ち合わせ場所に向かう車の中で、これからお母さんの彼氏に会うんだよっていう、話をされたんだと思う。
どこかわからないけど、待ち合わせの場所らしいスーパーに着く。
母が
「ジュース飲む?何が言い」
と訊いてきたので
「グレープジュース」
と答えて、パックのグレープジュースを買って貰う。
普段は全然グレープジュースなんて飲まないのに、どうしてあの日グレープジュースにしたのか、今でもわからない。
グレープジュースを飲みながら待つ。
ずっといやーな気持ち。
少しの時間記憶にないけど、多分母と彼氏と3人で車に乗って移動したんだろう。
彼氏の名前は田中さん。
長髪で細くてひょろりと背が高くて、若くて。
どう見ても30代半ば過ぎの母親より10歳以上は若い、お兄ちゃん。
3人で公園みたいな所に来たけど、私はとうとう堪えきれなくなって泣いてしまった。
するとお兄ちゃんは、サクラの木の下の地面から繭に入ったクモを掘り起こした。
それは、ちょうどその時期に学校の国語の教科書に出てきていた、クモで。
「本当にいるんだ…」
気持ちは晴れなかったけど、なんとか私は泣き止んだ。
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