見出し画像

春のような温かさがいつもある学校に… 優しさのアンテナ 〜心の宝物82

🌷前に仲間が立ったけれど…
コロナ機の学校。
 8月のはじめ、もうあと数日で、この年「日本一短い」とされたとはいえ、子供達にとっては待ち侘びた夏休みに入ります。

 そのせいもあってか、連日の猛暑にもかかわらず、子供たちは元気そのもの。朝の会前の4年生の教室は、元気におしゃべりをする子の声が、鳥のさえずりのようで、活気に満ちています。

 その日の日直の児童が、定刻より少し早く、朝の会の司会をしようと前に立ちました。
 しかし、ほとんどの児童はそれに気づかなかったり、または気づいても、それに伴う自分の行動を考えることをしなかったりで、おしゃべりを続けています。

 定刻前で、その子も声を大にして「静かにしてください」と呼びかけるのは気が引けると見えて、ただ立ち尽くしています。

 そんなときでした。

🌷優しさのアンテナ
 最後列に座っている彼女は、すぐに、前に立った仲間の存在に気づきました。そうして、隣の子と静かにかわしていたおしゃべりをやめ、姿勢を正し、体ごと注意をその子に向けました。

 瞬時に状況を判断し、そうすることで、前に立った仲間を支える行動を選び取った彼女を本当に頼もしく思うと共に、そんな彼女の決意が周囲に広がってほしいと期待して眺めていました。

 それでも、周りには広がりません。周囲の子たちには、こういうときに、彼女のような行動を選び取る選択肢や、それを敏感に察するチャンネルが、それぞれの心の内に、まだ十分に育っていないようです。

 すると彼女は、近くの子に次のように言いました。

「 係の子が前に立っているよ」

 大きな声でも、強い口調でもなく、穏やかに、まるで天気の話でもするような言い方で。
 その子ははたと気づき、彼女に笑顔を返すや、さっと姿勢を正しました。その子から隣の子へ。彼女の声を聞きとった別の子から、次の子へ。「注目することで、その子を支える」という決意が、よき選択の輪が、さざ波のように、教室全体に広がっていきました。

 あなたの心の中には、いつも、周りの人や目の前の人に対する、優しい気持ちがあるように感じます。少し難しい言葉で言うと、物事や人への「善意の関心」。マザーテレサという人は、それこそが「愛」だと言いました。
 あなたの感性が、これからも、一層細やかになり、たくさんの仲間の笑顔と成長を支える力になることを、あなたとあなたの大切な人の幸せを支える力となることを、心から祈っています。

そんな願いでお伝えしました。

かけがえのないあなたへ。
素敵なきらめきをありがとう。
出会ってくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
どうか、ありのままで。
どうか、幸せで。

 「周囲の人への善意の関心」という概念や、それに基づいた言葉や行動を見出し、広げ、ぜひ学校の文化としたい。それはきっと、学校に「春のような温かさ」をもたらすに違いない。何とか、1年生から、教職員、保護者で共有できる言葉にできないか。そう考えて、懸命に言葉を発信しました。「温かな視線」「善意のアンテナ」…。

 そうしてたどり着いたのが「優しさのアンテナ」という言葉でした。これは、子供たちの心にも届いたようで、児童会のリーダーたちが使ってくれるようになりました。もう少し後の話です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?