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成功を生み出すのは努力だ!「才能の科学」 要約・所感

おはようございます。本日はマシュー・サイド氏著書の「才能の科学」を取り上げたいと思います。

成功に対する才能と努力をどの様に捉えていますか?持って生まれた先天的な能力とは成功の必要条件なのでしょうか。「才能があってもそれにおぼれずに努力することが必要だ」という類の論理はよく耳にしますが、本書は「才能とは幻想である」一貫して才能自体を完全に否定した立ち位置で論じられていきます。

著者はスポーツジャーナリストとなる以前はイギリス代表として2度オリンピックに出場した卓球選手です。経歴だけきくと才能に恵まれているとも取れる筆者が幾多の科学者による発見をもとに「成功(傑出性)を生み出すのは努力だ」という考えがまとめられています。本書から学んだことを以下に解説していきます。


1.成功の隠れた論理

筆者はあるイベントでウインブルドンの優勝経験のあるドイツのプロテニスプレーヤーとテニスの試合をしました。その際に本気のサーブを依頼してそれを受けると、棒立ちのまま一歩も動けなかった…。

普通のジャーナリストであればこの経験から、200km/hを超えるボールに反応するには生得的な反射神経の持ち主しか許されない(才能が必要)と結論しますが、筆者はそうではありませんでした。なぜなら違う状況(卓球)であればそれよりも速い球にも反応できるからです。

ロジャーフェデラーのリターンは我々よりも高い反射神経を持っているのではありません。相手の動きなど視覚的な情報を即座に統合して判断し、身体が反応して適切な場所へ動けるためリターンができるのです。本書ではこれを少ないポイントから重要な情報だけ抽出する「チャンキングする能力」と説きます。

フェデラーの優位性は生得的なものではなく経験から生まれたものです。その証拠に古式のテニス(球が違う)となるとフェデラーも全くボールに反応できなかったそうです。

 同じ様なことがチェスの様な競技にも当てはまります。グランドマスターの様な名人たちは盤上の駒の位置を言語の様にコード化してチャンキングしています。ある実験では名人と素人の盤上の記憶力を比較しました。実際の試合である様な駒の配置の記憶力については名人と素人の記憶力には大きな差が出ましたが、試合とは関係のない無秩序に並んだ駒の位置の記憶には名人と素人に記憶力の差はなかったのです。

フェデラーもチェスの名人も生まれつきではなく長い時間をかけたトレーニングの賜物として、その競技に特化した技能を体得しているのです。本書ではその時間を少なくとも1万時間とし、エキスパートへの道は平均10年程度の必要であると説きます。また、その時間も目的を持った集中力の高いトレーニングでなければならないとしています。

その他では傑出性には努力だけでなく環境(指導者や住む地域)や機会(チャンス)も重要であることが筆者の経験をもとに書かれています。

2.奇跡の子はいない

とはいえ、長い歴史を遡れば神童と呼ばれるような奇跡の子は必ず存在するだろうというような反論が聞こえてきそうです。

音楽界でいえばモーツァルトはその筆頭でしょう。モーツァルト弱冠6歳で上流階級の人々ピアノで楽しませていたし、5歳でヴァイオリンとピアノのための曲を書き始め10歳までには様々な作品を生み出したとされています。これこそ圧倒的な能力を持って生まれた神童に違いない。 

これに対して、モーツァルトが6歳までにすでに同じく音楽家である父親の監督もとで3500時間もの涙ぐましい特訓を受けていたこと(考えられないほどの驚異的なペース)、モーツァルトの最高傑作が生まれたのは作曲を始めてから20年も経ってからであるという事実を元に否定しています。

ゴルフ界の神童と呼ばれて疑いのないタイガーウッズは1歳の誕生日を迎える5日前にゴルフクラブを与えられていた。そして18ヶ月で初めて屋外でゴルフをし、2歳の時にはゴルフのミニトーナメントに出場しています。

天才児をみると我々はつい、近道があると錯覚してしまいますが近道などありません。遺伝子、環境、身長、肌の色にかかわらず傑出するためには必ず必死に努力しなければならないのです。

3. 傑出性への長い道のり


本書では傑出性への道のりをあげています。私が参考になったポイントは以下の3つでした。

・自分のできないことを練習する
すでにうまくできることを練習したいと思うのが人間の性、ラクだしものすごく楽しいからです。しかし、世界に通用する水準のパフォーマンスは少しばかり手の届かないところにある目標に向けてそのギャップの埋め方をはっきりと意識して努力をし続けることで得られます。やがて絶え間ない努力と深い集中を持ってギャップが埋められてまたほんの少し手の届かない目標が再び設定されるのです。

・失敗の捉え方 成長の気構え
フィギュアスケートは目的性訓練による加速習得を鮮やかに描き出します。優れたスケート選手達は常に現在の能力を超えるジャンプを試みます。肝心なのは一流スケート選手が自分の優れた技量から見て、少し手が届かない難易度が高いジャンプに挑戦することです。つまり一流スケート選手は練習の中で最も多く転んで(失敗)いるのです。

気構え差が実際の結果にも影響します。荒川静香さんは転倒を失敗だと捉えなかった。成長の気構えを備えた彼女は転倒を単なる上達の手段としてみなしてだけでなく、むしろ上達しつつある証拠だと捉えていました。

・知能を褒めず、努力を褒めよ
子どもがテストで良い結果が出たとき、親がどのようなフィードバックを与えるかは極めて重要になります。ある調査では知能を褒められた子どもの2/3が次の課題の難易度を低く選択したといいます。つまり、失敗した場合に知能の高いというレッテルを失うことを避けたのです。一方で、努力を褒められたい子どもたちは次の課題も難易度の高い課題に取り組む割合が多かったそうです。親の声掛け一つで子どもの気構えが、つまり成長を左右するのです。

所感

本書の「才能などない、努力が全てだ」という主張がここまで説得力があるのは筆者自身がオリンピックにまで出場した傑出した存在であるからです。この点で他の書籍とは一線を画す魅力を感じました。凡人の私にはには目標の立て方が参考になりました。「少しばかり手の届かないところにあるものとのギャップをはっきりと意識して取り組むこと」これはスポーツ以外のどんな事にも当てはまると思います。今回取り上げた以外にもスポーツ選手が抱える心理的なパラドックスやドーピング問題など非常に興味深い内容が含まれています。

気になった方は是非実際に手に取って読んでみてください。

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