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寿命は伸ばすことができる??「生命を守るオートファジー」要約・所感

おはようございます。本日は吉森保さん著書の「生命を守るオートファジー」を取り上げたいと思います。

「オートファジー」昨今いろいろなところで耳にするようになりました。健康に良いらしい、ダイエット効果がある、なんとなくなイメージでよく分からない。本書を読むまで私はそんな感覚でした。

吉森保さんは国内はおろか世界的にも有名なオートファジー研究の第一人者であります。本書はそんな吉森さんがオートファジーについて一般向けに分かりやすく書かれた内容となっています。オートファジーは人間誰にでも備わっている素晴らしい機能です。オートファジーに関する正しい知識を得て、その恩恵を最大限受けられるよう本書から学んだことを以下にまとめておきます。

1. オートファジーとその機能

オートファジーとは「食べる」と言う意味のファジーと「自ら」という意味のオートが組み合わさって出来た造語です。つまり、自ら捕食するという形で細胞内部の古くなった悪玉タンパク質が新しく作り替えられるメカニズムのことを指します。

オートファジーには3つの機能があります。

①細胞分解による栄養源の確保

人間はお腹が空いて飢餓状態になると、脂肪を分解してエネルギーを作り出します。細胞内でもオートファジーによって同じような事が起こる仕組みが出来ています。これによって飢餓、低酸素、ストレス時の細胞サバイバル能力を高めています。

②代謝回転(新陳代謝)

これはオートファジーのイメージしやすい古いものを新しく作り替える機能です。成人男性はタンパク質を1日におよそ70gを食事から摂取しています。実は食べ物から摂取だけではタンパク質は足らないので、細胞内でタンパク質をアミノ酸まで分解した後に組み直して新しくしています。体重60kgの人で1日に約240gのタンパク質を体内(細胞)で作っているのです。

この他、細胞内で様々な物がオートファジーによって新しく作り直されています。そして、何日かで細胞の中身が入れ替わって新しい細胞に生まれ変わります。これを細胞のターンオーバーと言います。

オートファジーが起きずに細胞の中身が入れ替わらないと細胞内で不具合が生じて病気になってしまいます。

③有害物の隔離除去

最近や病原体などの有害物を除去する機能があることがわかっています。自分の体の中の成分ではなく外から入ってきたものを食べる為、ゼノ(異物)ファジーと呼ばれます。

2. オートファジーと疾患

オートファジーが起こらず細胞内で古くなった組織を作り変えられないと様々な病気に繋がります。

体の中の細胞には消化器官や皮膚のように数日から数週間と細胞の生まれ変わりが早いものと、脳細胞や神経細胞のように生まれ変わらない細胞も存在します。このような細胞ではオートファジーによる中身の作り替えが重要となります。オートファジーによる分解が滞ると細胞内の異常なタンパク質が蓄積し、細胞死が起こり、やがて臓器機能が低下し様々な病気を引き起こします。

肝硬変ではATZ、アルツハイマー病ではアミロイドβペプチド、パーキンソン病ではαシヌクレインという異常なタンパク質の蓄積によって引き起こされることがわかっています。その為オートファジーを促進してこれらの異常タンパク質の分解と除去が出来れば疾患の治療につながると考えられています。

3 オートファジーによって寿命も伸びる?

 いつまでも健康で長生きすることは多くの人の望みです。最新の研究では老化がなぜ起こるのか、寿命がどう決まるはまだ分かってはいませんが、こうすれば寿命が伸びるのではないかというのは動物実験ではわかっています。

これは専門用語で「寿命延長回路」と呼ばれています。カロリー制限、生殖細胞の除去、ミトコンドリア機能の抑制などがその回路でありますが、この全てにおいてオートファジーが活性化されていることがわかっています。つまり、オートファジーによって寿命が伸びる可能性があります。

 動物実験では加齢に伴いオートファジーが衰える事が分かっています。吉森さんの研究により私達の体の中にはルビコンというタンパク質があり、これが加齢に伴い増えることでオートファジーを抑制していることが分かりました。

ルビコンを除去したマウスは寿命が伸びるだけでなく老化現象が軽減することも分かっています。寿命延長の鍵を握っているのはこのルビコンであり、これをターゲットにした研究を進めていくことで寿命の延長を実現出来る可能性があります。

本書はオートファジーについて基礎的なところから、最新の知見まで幅広く学べる内容でした。オートファジーが夢の様な新しい機能ではなく、長い進化の過程で培った我々にもともと備わった機能である事も理解出来ました。まだまだ人間の体の機能については分からないことだらけで益々興味が湧きました。

日本には素晴らしいオートファジー研究者がたくさんいるのですが、資金や規模の面で外国勢に劣勢の様です。この辺りは国の後押しも望まれます。仕事で健康長寿を促進する役割を担っている私としては、この分野には注目し続けていきたいと思っています。

ご興味を持った方は、是非手にとって読んでみてください。

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