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国際宇宙ステーション(ISS)内の二酸化炭素濃度は地上より高い?

https://connect.doctor-agent.com/article/column276/

こんな記事を読んだ。

確かに呼吸循環を預かるという意味においては宇宙医学は生命を維持する機械を常日頃から扱う麻酔科医か、我々のような集中治療医が興味を持つのかもしれない。
精神科も別の意味で重要ですね。

これによると

宇宙医学の分野では、国際宇宙ステーション(ISS)内の二酸化炭素濃度が上と比べて10倍ほど高くなっていることが、たびたび問題視されます。さらに無重力では空気の対流が起こらないので、宇宙飛行士はより高い濃度の二酸化炭素を吸入している恐れがあります。

https://connect.doctor-agent.com/article/column276/

らしい。

もう少し他のものも探ってみた。


”宇宙ステーションの空気環境を創る環境制御・生命維持システム”の論文によると

ISSの空気環境は、地上と同じO2/N2の空気で1気圧に維持され、快適な温度・湿度に保たれている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/medicalgases/16/1/16_7/_pdf/-char/ja

とのこと。
まあ、当たり前だけど、地上と同じく、CO2の分圧はごくわずかだ。

数年前に搭乗員か ら「時々息苦しくなることがある」との報告があったため、 CO2が原因と特定されたわけではないが、実際のISSの 運用ではCO2濃度(分圧)が 4.0mmHg 以下になるように制御している。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/medicalgases/16/1/16_7/_pdf/-char/ja

って言っている。

大気中のガスの分圧は
大気圧(mmHg) × ガス濃度(%) = ガス分圧(mmHg)
で計算できる。
大気の中に含まれる酸素は21%、窒素は78%、二酸化炭素は0.03%
1気圧(760mmHg)×大気の酸素濃度(20.9%)=0.23mmHgくらい。

これを考えると20倍以下でコントロールしているのかな?


生きていく上で大気下のCO2濃度を気にすることはほとんどない。

臨床上で肺炎等で低酸素状態の時、酸素を投与するが、マスクの選択を誤ると二酸化炭素の再吸入があるとされる。4.0mmHgくらいには普通になると思う。そんなことしないように集中治療では指導するものの、現状では流量とマスクの選択に間違いはザラである。それでもそれによる障害は全くもって報告されたことがない。

元々、CO2は拡散能が高いし、体内のCO2は呼吸回数で容易にコントロール出来るから、問題にはならないのだろう。

肺胞気式
PaO =(大気圧-47)×酸素濃度-PaCO2
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse2139.pdf

を思い出した。


臨床経験からは頭痛の原因はCO2ではないと思う。
大気が汚染されて、森林が伐採されて、CO2の濃度を本当に気にしなければならないSFのような世界が来ないことを祈る。いろんな事象に備えると言う意味においては宇宙開発は重要なんだろうな。


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