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食べるということ-12

食べたいものがあっても食べられないほどの極貧生活をしていたことがある。

それでも食べなきゃいられないので、どうすれば食べることができるのか?人というのは追い込まれると一所懸命考える。

要するにお金がない、でもお腹いっぱい食べたい。電気は止められる、水道から水は出る。ガスもかろうじて止まっていない。そんな時に何が食べられるんだろう。

例えばインスタントラーメンを買ってくる。カップ麺は割高だから袋麺。インスタントラーメンは安い、とはいえ、1袋で1食分食べれば終わってしまう。

野菜を買ってくる。キャベツ一玉を刻んでみたらボールに3つ分。それをボール1つ分食べると何とかお腹は満たされるけど何とも味気ない。小麦粉を混ぜて焼いてみる。ソースをかけるとお好み焼き風になるので何とか食べられる。

そうだ、小麦粉は食べ物のボリュームを増やす。

野菜クズを集めてかき揚げにしてみた。なかなかいける。お腹も膨れる。

そういえば昔TV番組で1ヶ月1万円生活、なんてのがあったな。でもあれは食費だけで光熱費とかは計算に入れていない。1日300円で10日で3000円。1ヶ月で約1万円。1日300円の食費は全然生活できると極貧生活をしていた人にはわかる。

小麦粉のボリュームを増やすための最善の方法を思いついた。

小麦粉を使ってパンを焼く、という方法。強力粉は高いから薄力粉を使う。極貧生活なのに、なぜだか家にはドライイーストがあり、ガスオーブンがあった。ドライイーストをぬるま湯で練って、小麦粉に混ぜて手につかなくなるまで練る。

2倍ぐらいに膨れたら、もう一度練ってロールパンのように整形してオーブン皿を温めておいて、その上でもう一度発酵させる。充分に膨れたらオーブンで焼く。

一袋1kgの袋で3回分。1回で8個ほどのパンが焼ける。それが3回だから、合計24個のパン。これだけあれば2週間は食いつなげる。

調理法を知っているということは知恵を使って何とか飢えずに済むということをこの時知った。もちろんそんな生活からはやがて脱却できたけれど、今となっては嘘みたいな話。

でも1ヶ月1万円生活なんて番組があったぐらいだから、そのころはジリ貧生活をしている人は多かったんだろうな。

今みたいに「貧乏」と言いながらコンビニでお弁当を買えるなんてのは贅沢なのかも知れない。

昔、漫画家の卵が下宿先でジリ貧で生活を送っていたって話があるけれど、今の若い人たちはそのころの若者と比べると随分と生活力は低い。

なんだかんだ言って「食べ物」を手に入れることのできる職業は、良い職業なのかもしれない。ITとか最先端の技術を持ちながら、最後には農業をするような人たちが増えているのは必然なのだろうな。

でも、あの頃みたいに極貧生活に戻るのも嫌だな。普通に食事ができる生活が良いな。その中で「食」の楽しみを見つけるのは楽しいけれどね。

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