ブラックソード・ストーリー

第十一之章 終焉

サラムの言葉が世界の命運を握っていた。

意を決したようにサラムはその言葉を言った。

「聖なる珠よ私は命ずる」

そこにいる皆が続く言葉に息をのんんだ。

「私は何も選ばぬ。そして、ともに全てを選ぶ。それが我が意思なり」

三つの聖珠は一つになり新しい恒星が生まれるように強い光を発した。

神殿に置かれた鍵である『黒きラーべ』を通じてその光は再び足元の大地と空に浮かぶ二つの月レプラスとデザムを差し貫いた。

「姉上に代わりこのトレス・ユネスを見届けよう。誰一人このトレス・ユネスから逃れることはできない。定めを受け入れよ。最初に受け入れるものは『破壊』なり」

ザリアは言った。

それと同時に再び大地は避け、山々は燃え、砕けながら黒きラーべから放たれた光に吸い上げられるように遠き空に浮かぶレプラスに向けて流されていった。

全ての物質、大地も水も人さえも砕け散り素粒子となってレプラスに向けて流れてゆく。

空に浮かぶレプラスもまた砕けながら足元の大地アーシムに向けて流れ出していた。

二つの星は砕けながら交わり合い、レプラスを中心にラザムとアーシムが回転しながらその位置を入れ替えようとしていた。

キュエルとザリア、アビラ、そして全てのものは砕かれ、混じり合い、塵となってお互いの位置を入れ替えながら再び集まって新しい星をカタチ作ろうとしていた。

キュエルの体が分解され塵となっても微かに自我を残していた。しかし、他の塵と交わるうちにアビラの意識とザリアの意識が自分と交わるのを感じた。

自分の安全を思い王宮へと導いたアビラの愛、道から外れてゆく自分に影で寄り添い正しい道へ導こうとしたザリア。自分は多くの愛に守られていたことを知った。その優しさを感じながら、それらの心は一つになり、さらに多くの人の意識と交わりながら、自分というものが無数の意識の一つでしかないことを知った。

そう考えることも困難になり、巨大な意識の雲の中に入り込んでいった。

ヒュンテ王とユンヒ妃、そしてサラムは巻き込まれる寸前に空挺で神殿から飛び上がり遙か宙の上からその様子を見ていた。

「私どもは残るレプラスへと戻り、再びトレス・ユネスを伝えてゆかねばなりません」

ヒュンテ王が言った時、サラムは自分の体が力なく宙に浮かんでいるような感覚を覚えた。

「どうやら、私もあの星々の一部となる時が来ました」

サラムはニッコリと微笑むと、塵となって霧散し消えていった。

宙の中でレプラスを中心に二つの星が入れ替わり新しいラザムとアーシムが生まれようとしていた。

「まもなく『再生』が始まります。彼らは彼らではなくなる。それでも自分で気付かぬうちに彼らはあの方達のように生き、振る舞うのでしょうね」

ヒュンテ王とユンヒ妃は微笑みながら、レプラスへと船を飛ばした。

宙には新しい星々が光を放ち始めていた。

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