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食べるということ-9

土鍋でご飯を炊くとなぜおいしいんだろう?

「いやいや、気のせいでしょう?」と私も最初はそう思っていた。

土鍋でご飯を炊いたことのある人はいるだろうけど、ご飯を炊くために土鍋を作った人は少ないかもしれない。

そう、実は私はわざわざご飯を炊くために土鍋を作ったことがある。

肉厚でなかなか火が通りにくいけれど、なかなか冷めないで予熱だけで5分ぐらい沸騰し続けて、内蓋で水蒸気を逃さないような土鍋。そんなには大きくないから2合くらい、二人で1食分炊ける土鍋を作った。

実は二十年陶芸を学んでいた。土鍋に使う土は荒めのカリオンという砂つぶを混ぜて焼くことで土鍋の中に小さな穴がたくさん空いている。最初は水を入れて沸騰させるとその小さな穴の隙間を通って水が鍋の表面にまで染み出して、鍋の外から湯気が漏れて、鍋の中のお湯はどんどん減っていくし、いくら火にかけても沸騰しない。

良く「土鍋を使うときには最初にお粥を炊きなさい」というのは粥の澱粉質がこの小さな穴を通るときに穴を塞いでくれて、お湯が漏れなくなるから。

一度お粥を炊いた後は普通に土鍋として使える。

土鍋が他の鍋と決定的に違うのは「保温力」。火を止めてからも土鍋はしばらくグツグツと沸騰し続ける。

お米を炊くときには予熱だけで仕上げないといけないから、肉厚の土鍋だと沸騰する音が「グツグツ」から「シューシュー」という音に変わったら、すぐに火を止める。それでも予熱で10分ぐらいは火が通り続けるので、遅めに火を止めるとお米が焦げてしまう。

良くお米は炊き上がりが美味しいというのは最近の電気釜の場合で、土鍋の場合は炊き立てだと鍋の壁にお米が張り付いて取れないので、火を止めたら20分ぐらい蒸らす。土鍋だから冷めたりはしない。壁に張り付いた焦げが少し水分を吸って剥がれやすくなった頃が食べごろ。

最初に土鍋でお米を炊いたときに「本当にお米が美味しかった」のにびっくりした。本当のことを言って、土鍋でお米を炊くとなぜ美味しくなるのか?はわかっていない。いくつもの要素が絡まって美味しくなっているのだと思う。

一つは土鍋は元々「土」から出来ているので「ミネラル」が染み出している説。土鍋の保温力がお米の美味しさを引き出している説。ただ単に気の持ちよう説。いろいろあるけれど、多分目隠しをしてもわかるぐらい味が違っているように思う。

先に言ったけど、土鍋でお米を炊くときは「音」が重要で、ずっと土鍋から離れることができない。最近は時間がなくて土鍋は押し入れに入ったままだけど、またこれから寒くなったら出してこよう。

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