近未来の話をしよう-11
「仕切らないでまとめる」
これまでの組織のあり方は誰かボスがいて、全体を仕切ってトップダウンで組織を運営するのが普通だった。これまでとは言わず、今もそういう手法で組織は動いている。
組織の目的や目標は誰かが考えて、それを周りにいる「ブレーン」と呼ばれる人たちが様々な手法で実現してゆくのが「組織運営」の基本とされてきた。
法人化すればその主体が「株主」に移るけれど、目的が株主にとっての利潤に直結しているだけで組織運営の方法は変わらない。
台湾ではハッカソンやアイデアソンなど社会問題に対して様々な能力を持った人たちが集まり、問題解決の手法を考え、持ち寄ってまとめあげる手法が使われ始めて久しい。これらの問題解決が有効なのは問題の方向性が明確で参加する人たちの指向が同じ方向を向いているということだけど、現在の資本主義社会の中での各人の指向は様々な方向を向いている。
でも社会課題という中では大きな問題解決の流れが出来ている。
ハッカソンは「社会問題」が課題だけれど、もっと小さな地域や小さな組織の中では「大きな社会問題」よりも「目の前の小さな問題」や「生存や継続の問題」といった問題の方が大きなウエイトを持っている。
小さな問題は解決するのが簡単であるかというとそうでもない。小さい問題が生じている背景は大きな制約があったり、地域の社会通念があったり、抵抗勢力があったりそれなりに複雑に絡み合っている。
利害関係が相反する問題というわけではない。実際には利害関係は同じ方向を向いているのに「思想」や「思考性」が相反していることが多い。「既得権益」や「保身」などの個人的な理由が優先されている場合も多い。
でも、その小さな組織が幸せになる条件は本来極めて単純で、「出来る」理由の足を引っ張って「出来ない」理由に落とし込もうとしているだけの場合が多い。
「既得権益」を失うことや「保身」出来ないことの『恐怖』を自分の中で育ててしまっているからだ。それらを失ったことのない『不安』も同時に育てていることが多い。
まとめ上げるためには「小さな成功」が必要だ。
最初は気づかないほどの小さな「成功」で良い。
同じ方向を向いてくれる人が1人から2人へ、2人から3人へ育つように「小さな成功」を積み重ねることが人々の気持ちを少しずつまとめ上げてゆく。
それぞれの目的に違いがあると「総意」として組織の方向を決めるのは難しくなる。「自分の目的」よりも「組織の目的」を優先できるかが重要。
オーナー社長の場合「自分がお金持ちになりたい」を優先して、そのために組織を大きくしようとするけれど、組織自体が目指すべき方向は「みんなが幸せになる」ことで一部の人間だけが幸せになることではないだろう。
こんな場合は組織が大きくなるにつれて経営者と組織の目的は乖離を始める。
同じ目的で集まった人間が組織を作ったとしても、その中の力を持った人間が決定権を持っていればその決定内容と組織の進むべき方向はズレを生じるかもしれない。
誰かが仕切らなければ「組織の総意」さえも決定できないかもしれない。
そんな場合でも誰かが決めた方向性に対して組織の方向性に沿って意見をまとめてゆく必要がある。時代性や環境、社会貢献、幸せの還元を考慮しながら利益も生み出さなくてはならない。
これまでカリスマ経営者が一代で築き上げた企業は、その経営者に多くの利益を還元するような組織と仕組みが形成されていたけれど、これからはそうではなく多くの利益を組織内で還元しなくてはなくなる。
そしてその方法は利益を集中させないし、莫大な利益を産む必要もなくなる。
これまでとは全く別の組織と経営者が必要な時代は近づいている。
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