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革のおはなし-5

教室はミシン教室だった。

革や袋もを縫うときに便利な腕ミシンを使って鞄を縫い上げる。これまでミシンは実家に置いてあった机のような台が付いている「台ミシン」しか見たことがなかったけれど、台がついていないのにどうやって使うんだろう?

その後ミシンには「台ミシン」「腕ミシン」「ポストミシン」などの他に、用途に応じて靴用の「マッケイ縫いミシン」や修理によく使う「八方ミシン」、それ以外にも沢山の種類があることがわかった。

実家にあった「工業用ミシン」「職業ミシン」「家庭用ミシン」「コンピュータミシン」「ロックミシン」数えるとキリがない。でもほとんどのミシンは使ったことがない。それにオプションまで入れると用途は膨大に広がることを知った。

そして価格も仕事用のミシンは高価だとわかった。

ミシン以外で革縫いには欠かせない「革漉き機」。アマチュアでは革用豆カンナやスーパースカイパーという道具を使うけれど、職業的に革の縫製をするには「漉き機」は欠かせないらしい。

ミシンより先に漉き機を買えと言うぐらい重要な道具。

アナログでマニアックな革道具は沢山ある。

「革包丁」「菱目打ち」「平目打ち」「革用の縫い針」「ヘリ落とし」「コバ仕上げ剤」「コバ磨き」「ネジ捻」「一重捻」「床仕上げ剤」etc.

数えるとキリがない。それらの使い方を実際に使いながら覚えなくてはならない。

並行して革の種類と特性も覚える。でもとにかく困ったのは使ったことのない「腕ミシン」でただ真っ直ぐ縫うのが出来なかった。

よく見ながら縫っているのにどうしても曲がってしまう。革が宙に浮いている状態で左手で革を支えながら縫う。ミシンには真っ直ぐ縫うためのゲージが付いているけれど、まるで自分の体をコントロールできない。そして、最初、曲線を綺麗に縫うために「一針」だけ縫う練習をする。モーターに連動しているペダルを一瞬踏んで一針だけで止める練習。

軽く踏んだつもりが2〜3針縫ってしまう。曲線を縫うつもりがその部分だけ直線になってしまう。ミシンには使っている職人の癖がつく。師匠のミシンは癖がない方だけど、やっぱりプロが使っているのでアマチュアには速度が速い。

師匠はとりあえず何でも「やってみて」身体で覚えさせるタイプの教え方だったけど、普段家で布用の家庭用ミシンを使っている人ほど苦労しているようだった。

家庭用ミシンよりも一回り大きくて馬力のあるミシン。1mm以上の革を三枚重ねても縫えるだけの馬力。

そして苦労したのは革包丁。柄を握って革にほぼ垂直に当てて切る。慣れるまで切ったつもりが切れていないということが起こった。コツがわかるまで少し時間がかかった。

趣味で釣りをしていて、魚を捌いて、包丁を研いだ経験が役に立った。

材料を切り終わったら、ノリで張り合わせる。ノリも「ゴムのり」「サイビノール」用途によって使い分ける。

ああ、こんなに覚えることが多いとは!?予想以上に困難な状況をようやく自覚しはじめた。

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