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Lesson 22: まとめ

長かった本書も、このレッスンでおしまいです。最後に、ここまで学んできた内容のまとめと、積み残しとして残っていることを整理して終わりにしましょう。

本書のまとめ

本書の内容をまとめると、以下になります。

  • 資料を作成する状況における目的は、説得の成功である

    • 説得:他者に「イエス」と言ってもらうこと

  • 説得はロジック、レトリック、ブランドの3要素から構成される

  • 説得は5ステップのプロセスで作り上げる

  • 説得の最重要ポイントは論点である

    • 論点が説得の大枠(目的と主張)を決めてしまう

  • 「正しい」論点とは、(最低でも)以下の条件を満たす論点である

    • 受け手の問題を捉えている

    • 受け手にとって新しい情報を生み出せる(≒専門性)

    • 説得力を生み出せる(≒専門性)

  • 説得のコンテクストからLUバランスを考え、ロジックとレトリックの方向性を調整する

    • どれくらいの根拠の質が要求されるかを、最初によく考える(根拠の量は最後でいい)

    • あるべき資料の情報密度を考え、そのようにメディアとスタイル(フォントサイズとイメージ画像の割合)を選択する

  • 論理性が重視されるコンテクストにおいては、ロジックの出来が説得の成功を左右する

長々と説明してきましたが、キーポイントはこれだけです。関連スライドも掲載しておきます。

続きの内容|本シリーズの構成


お気づきのとおり、本書では説得のプロセスを最後まで説明していません。ここまでに説明したこと/していないことを、以下のスライドにまとめました。

まず、ブランド形成からロジック構築までの説明が終了しています。ブランドの詳細やロジックの考え方に関しては割愛しましたが、ここに関しては今後も本シリーズで解説することはありません。これらを強化したい方は、別コンテンツや、文中で紹介したリンクを参考にしてください。

残っているのは「レトリックで包む」と「説得する(本番)」です。この下にさらに細かいカテゴリーがいくつもあるので、それを網羅した表が以下になります(項目が多いので縦に並べかえています)。

表にあるとおり、本シリーズの続編ではこれらの詳細を扱っていきます。
以下、各スキルの説明と、続編の宣伝をさせてください。

今後の前提

まず、すべての続編に共通する注意点ですが、ここから先はレトリックを扱う関係上、コンテクストを固定します。本書で学んだとおり、レトリックはコンテクストに応じて変化するので、コンテクストを固定しておかないと話が進められないのです。

具体的には、以下の前提を置いて話を進めます。

  1. 目的は「決めてもらうこと」である(資料を使うのはセミナーではなく会議である)

  2. コンテクストは論理性に寄っている

  3. 使用するメディアはパッケージである

シンプルに、最も該当する人が多いであろうコンテクストに合わせました(私がそちら側に特化しているという理由もあります)。分かりやすさに寄せた説得をする人は、ここから先の内容は参考にならないので注意してください。ただ、反対側の考えを学んでみるのも悪くないアイデアだと私は思います(営業)。

メディアとしてパッケージを選ぶ理由は、文書よりもパッケージのほうがレトリックとして考えることが多いからです。また、スライドがぶつ切りになっているので、テーマごとに切り分けやすいという理由もあります。

ただ、本書で説明したとおり、文書とパッケージは情報密度が違うだけで、本質的には同じメディアです。ほとんどの内容は文書でも応用できるので安心してください。

では、それぞれのスキルを見ていきましょう。

パッケージ全体に関わるスキル

まずはパッケージ全体に関わるスキルから始めましょう。これは具体的には、以下の2つを学ぶことです。

  1. パッケージの構成方法

  2. スライド・パッケージの作り方

順に説明します。

構成
構成とは「ロジックをどのように並べるか」ということであり、レトリックの中で最もロジックに近いテーマです。ロジックであると考えることすら可能でしょう。
とにかく、分類がどうであれ、構成次第でロジックが分かりやすくもなれば、分かりにくくもなることは間違いありません。

構成編である『資料の構成』では、資料をどのように構成すべきかを学びます。具体的には、構築したロジックを分かりやすく伝えるためには、何を、どのような順序で並べて、どのように見せるべきかを考えていきます。

構成は位置づけが曖昧なせいか、ロジカルシンキング本でも、プレゼン本でも言及されないことが多いです。私の知るかぎり、資料の構成をメインに扱っているビジネス書はこれ一冊です。

スライド・パッケージの作り方

本書では、説得をプロセスで分解し、「ロジックを構築してからレトリックで包む」と説明しました。大まかな順序としてはこれで正しいのですが、実際はもう少し複雑です。以下のスライドを見てください。

このように、リサーチを通じて全体がグルグル進化していくのが、論点がパッケージになっていく過程の実態です。「論点→ロジック→パッケージ」という、完全なプロセスとしては進みません。どちらかというと、サイクルとして相互に影響を与えながら進みます。

本書では説得プロセス全体に焦点を当てたため、このあたりの深い部分までは踏み込みませんでした。シリーズ第3巻である『スライド・パッケージの作り方』で、このサイクルの詳細や、そこで使うべきアプリ・ツールなどを考えていきます。

スタイル

ここまで来ると、残りは「1枚のスライドをどう作るか」ということです。ここは各スライドで使うメディアと、それに適用するスタイルで構成されます。

概念の順序としてはメディアが先なのですが、学ぶ順序としてはスタイルから先に始めたほうが効率的です。どんなメディアを選ぶにせよ、そのたびにスタイルのことを考える必要があるからです。たとえば、グラフを描くときに、いつも配色で悩んでいたら非効率ですよね。ということで、先にスタイルを学びましょう。

資料におけるスタイルというのは、大きく「デザイン(それぞれのメディアの見せ方)」と「文言(テキストの書き方)」に分類できます。デザインが図工で、文言が国語だと考えると分かりやすいでしょう。

デザイン

資料におけるデザインは、①レイアウト、②配色、③タイポグラフィの3要素に分解できます。以下のスライドで確認してください。

デザインに関する4冊では、デザイン全体に適用すべきルールと、それぞれの要素の詳細を扱います。具体的には、以下の問いに答えていきます。

  • デザインする際に従うべき原則とはどのようなものか?

  • どのようにレイアウトすべきか?

  • どのように配色すべきか?

  • どのようにテキストを見せるか?

ここは、いわゆるプレゼン本・PowerPoint本が扱っているど真ん中のテーマです。

Lesson 2でも述べたように、これらの内容は、将来的には機械がやってくれると私は思います。ただ、当面は私たちがやるしかないのが現実ですし、デザインのセオリーを一通り押さえるだけで見違えるような資料になることも事実です。時間をかけずに合格点を取るためのセオリーを勉強しましょう。

文言(文章術)

文言とは、その名のとおりテキストの書き方のことです。ある内容を分かりやすく伝えるためには、どのような言葉で表現するべきかを学ぶわけですね。具体的には、以下のようなことです。

  • 複文(述語が複数ある文)ではなく、単文(述語がひとつの文)で書く

  • 述語を早めに見せる(述語で意味が確定するため)

  • 不要な形容詞や副詞を避け、数字や固有名詞を多用する

これらは一般に、「文章術」というスキルジャンルが扱っているテーマです。「ビジネス文書の書き方」という呼び方をすることも多いですね。

この領域に関しては、本シリーズで扱いません。パッケージには「文章」というほどのテキストは書かないので、文章術を学ぶ題材として不適切なのです。例外的にそれなりの量の文を書くスライドもあるのですが、それに関しては『資料の構成』で説明するので、シリーズのテーマとして文章術を扱うことはありません。

ここに関しては、Eメールや文書の書き方を通じて学んだほうが効率的でしょう。関連書籍はたくさん出版されていますので、自分に合うものを探してみてください。

メディア

スタイルが一通り押さえられたら、次はメディアです。資料に使えるメディアの全体像を確認してください。

先述のとおり、テキスト以外のメディアを使って資料を分かりやすくするに越したことはありません。本書でも、文中にこれらのメディアを挿入してきました。

一方で、これらのメディアを闇雲に使ったところで分かりやすくなるというものでもありません。それぞれのメディアの使いどころや、分かりやすく伝えるためのテクニックがあります。メディアの引き出しを増やして、表現の幅を広げましょう。

表・グラフ

『表・グラフの作り方』では、表・グラフの作り方について解説します。そのままですね。

具体的には、以下のような問いを扱います。

  • 表をどのように見せるべきか?

  • グラフの形式にはどのようなものがあるか? それぞれのグラフをどのように使い分けるべきか?

特に、正しいグラフ形式の選び方は、論理性に寄ったコンテクストで説得する人には必須のスキルです。論理性に寄ったコンテクストでは根拠にデータを用意することがほぼ必須で、そのデータはグラフによって表現するからです。根拠ランキングを確認しましょう。

要するに、強いデータを集めて、それをグラフで分かりやすく表現できると、必殺の右ストレートになるわけです。一緒に必殺技を勉強しましょう。

図解

『図解の技術』では、図解のテクニックについて解説します。ブロックで概念を構造化したり、プロセスや序列を分かりやすく表現する方法を学びましょう。

なお、画像については本シリーズでは扱いません。ここは私の得意分野ではないからです。デザイナーの方が書いたプレゼン本などを参考にしてください。

本番

最後は本番ですね。ここに関しては、以下のようなスキル領域が存在します。

  • 自己紹介(本書で簡単に説明済み)

  • 事前準備

  • スピーチ(アナウンス・発声技術)

  • ファシリテーション(会議をどう進めるか)

ここに関しては、本シリーズが扱うかは検討中です。コンテンツになるほどのノウハウがあるか怪しいのと、少なくともスピーチはスポーツだからです。自分で声を出さないことにはどうにもなりません。

コロナ禍になる前は、スピーチに関してはアナウンス学校に通うことをオススメしていたのですが、2021年現在、それもしにくい世の中になってしまいました。これからはWeb会議中心になり、マイクに頼れることも考えると、当面は他のスキル領域に注力するのがよいのかもしれません。

何を、どんな順序で身につけるか

以上が、資料を作り、プレゼンすることの全体像になります。全体像が掴めたところで、最後に、何を、どんな順序で身につけていくかを考えてみてください。
以下のような視点で、それぞれのスキルを評価してみるとよいでしょう。

  • インパクト(説得の成功への寄与度)の大きさ

    • 基本的には、プロセスの上流にあるスキルほどインパクトが大きいです

  • スキルとしての習得しやすさ

    • これは逆に、プロセスの下流にあるスキルほど習得しやすい傾向があります

  • いまの自分に必要か/実務で求められるか

    • 上司に任せられるスキルは後回しでもよいかもしれません

    • 実践で使う頻度の高いスキルほど身につきやすいです

一概に「上流のスキルから習得すればいい」とは言えないので、簡単には答えられないかもしれません。

それでも、全体観を持っていれば、自分がいまどこにいて、どこに向かっていきたいのかを考えられますよね。少なくとも、資料作成やプレゼンに関して漠然とした不安感を抱えることは、もうないはずです。

少しずつでも、確実に、前進していきましょう。

本書は以上になります。冒頭で掲げたあなたの問題が少しでも解決されたのなら、これに勝る喜びはありません。ここまで読んでいただき、どうもありがとうございました。

参考文献(この記事だけでなく、本書全体)

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