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思い出したこと。
声優さんの声についての話。

数年前、ある方のお葬式に参列した。
生前とてもお世話になった方。
声優の業界でお仕事をされていた方で、
葬儀委員長は事務所社長で声優でもある御人が務められた。

葬儀会場はそれほど大きくはなく(一般的とも思えるが、なにせ参列者が多かったため小さく感じたかもしれない)、一般弔問で訪れた私は会場の外にいて、お焼香のときだけ中に入った。外にもあふれるばかりの参列者がいて生前のお人柄が偲ばれた。

会場は、車の通行量がとても多い幹線道路沿いに面していたので、外にいると車の音がうるさく読経も小さくしか聞こえなかった。

葬儀も終盤を迎え、会場の中で参列されていた方々も外に集まり最後のお別れを待つときがきた。

ご遺族側からのお礼挨拶。

はじめに進行役の方がマイクで話をされていたが、とにかく車の音がうるさすぎて、道路寄りに立っていた私のところまでしっかりとした声は届かなかった。
次にご遺族の方が挨拶をされた。涙を堪え気丈にお礼を述べていらっしゃるのだが、やはり大型のトラックやバスも入り混じる幹線道路からの騒音に声が掻き消され、しっかりとお聞きすることができなかった。

これだけ道路に近く、しかもたくさんの車が途切れなく走っている。
誰がマイクで話をしても声が掻き消されるのは仕方がないことと思っていた。

ご遺族のお話が終わり、最後に葬儀委員長を務められた事務所社長でもある声優の方がマイクを握られた。

私は同じく声が届かないと思っていた。

だけど、驚くほどに声がしっかり届いた。

大型車も頻繁に通る道路の騒音に消されることなく、むしろ騒音が騒音と感じさせない程の、芯がある、圧がある、その声がツーっと耳に届く。
マイクを通して、叫んでもいない、張り上げた声でもない、渋くかっこよくテレビでも聞いたことある落ち着きある声が、車の音に負けず届いている。

すごい、と思った。

私たち”素人”の多くは喉で声を出す。
大きな声を出そうと思えば、喉で張り上げ、そして喉を枯らす。
選挙演説がいい例。カラオケもまたそのひとつ。

しかし、プロの声優は違う。
それでは声で飯を食う仕事など務まらないはず。
呼吸で空気を腹の中まで入れ、吐き出すと同時に声を出す。
マイクもどこに声を当てれば芯と圧を失わない声が届くかを知っている。
声をどこまで届かせばいいかの距離感も自在に調整できる。
肩が強い野球選手であれば、ボールを投げる先が近くても遠くてもレーザービームのような鋭い遠投でファンを魅了する。
プロの声優が発する声もそれと同じで、息に乗せた言霊を相手が近くても遠くても割れず真っ直ぐに届かせるといった卓越したプロ技を持っていると思い知らされた。

声については関心が高いので、また書いていきたい。


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