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映画『杜人(もりびと)〜環境再生医 矢野智徳の挑戦』を観て感じたこと

はじめに

約1年前に界隈で話題になった映画『杜人(もりびと)環境再生医 矢野智徳の挑戦』を観てきました。

どんな映画なのかは、タイトルの通り、矢野さんという環境再生医をされている方の思想・活動を紹介するものなのですが、それだけでは伝わらないと思いますので、監督をされた前田せつ子さんの文章を紹介します。

矢野智徳さんに初めて会ったときの衝撃を忘れません。
「虫たちは葉っぱを食べて空気の通りをよくしてくれている」
「草は根こそぎ刈ると反発していっそう暴れる」
「大地も人間と同じように呼吸しているから、空気を通してやることが大事」
人間目線から遥か遠く、植物や虫、大地、生きとし生けるものの声を代弁するかのような言葉は、まるでナウシカのようでした。風のように枝を払い、穴を掘る様子はイノシシのよう。一日の作業を終えたとき、その場にはスッと息が整うような、なんとも言えない清涼感が漂っていました。
こんなふうに自然と関われたらどれほど豊かに生きられるだろう、いや、人間であることの罪悪感が少しは軽くなるかもしれないと思いました。

それから4年。技術も、知識も、経験も、プロ用のカメラもない中で、2018年5月、矢野さんの本拠地である山梨県上野原市を訪れました。想い一つからスタートした撮影の旅は、屋久島、福島、安曇野、気仙沼へと続いていきました。
2018年7月、気仙沼での撮影中に、西日本一帯を記録的な豪雨が襲いました。初めて会ったとき、矢野さんが警告していたことが起こったのです。被災地支援を申し出た矢野さんたちを追いかけて、岡山県倉敷市真備町、広島県呉市に向かいました。
そこで見たのは、コンクリートの砂防堤や道路、U字側溝を突き破って流れ下った土砂や流木と、大切なものを失いながらも必死で立ち上がろうとしている人々の姿でした。
「土砂崩れは 大地の深呼吸なんです。息を塞がれるから、それを取り戻そうとしている」

2019年5月には屋久島豪雨で巨岩が崩落、10月には台風19号で全国21もの河川が氾濫。被災地に駆けつけた矢野さんは、これらが単なる天災ではなく、人の開発がもたらしたことであること、自然が人に求めていることを伝えていきます。
「息をしている限り、あきらめない」
学生時代、日本一周で九死に一生を得た経験から生まれた言葉を胸に奔走する矢野さんと、矢野さんにならって渦流のように全国を廻り、寝る間も惜しんで傷めた自然の再生に全力を注ぐスタッフや「大地の再生講座」の参加者を3年間追いかけて感じたのは、人にはまだ希望がある、ということです。
泥だらけになって土を掘り、汗だくで草を刈り、一日作業をした最後に「楽しかった」と満面の笑顔を浮かべる人がたくさんいる。人間らしい充足感、幸福感というのは、かつての「結(ゆい)」……人と人、人と自然の共同作業があってはじめてもたらされるものではないだろうか。
ナウシカにはなれなくても、かつての人々が皆そうしたように、移植ゴテ一本、ノコ鎌一本でもっと自然と仲良くなれることを、人間という動物の遺伝子はきっとまだ憶えている。

「この場所を 傷めず 穢さず 大事に使わせてください」と、人が森の神に誓って 紐を張った場=「杜(もり)」。
忘れ去られたこの言葉が、その記憶の小箱を開く鍵となることを願って。

以下HPより引用

感想メモ

結論、観に行ってとてもよかったです。私としては吉原史郎さん・優子さんのご縁のおかげで映画を観るちょうど前に、書籍「土中環境」シリーズが売れている高田広臣さんのワークショップに参加することができていました。そのおかげでわずかながら実感を持って観ることができました。

高田さん(左手前の男性)から簡易土木のレクチャーを受けているところ
風の通り道にならって草を刈ることについて教わっているところ

以下、感想メモを載せます。

・土中環境の高田宏臣さんのワークのいい復習になった。

矢野さんと高田さんの接点は、高田さんが今の道を歩み始めた中で矢野さんのことを知ったそうです。こちらの高田さんが書かれたブログによると2014年には高田さんの事務所に矢野さんをお招きしてワークショップを開催されたそうです。矢野さんがどのようなまなざしをお持ちなのか垣間見ることができるでよければぜひご覧ください。URLはこちら。

・人間目線ではなく風目線

・すでにあるコンクリートとの共生

・宮城、福島と馴染みのあるエリアが出てきて感じ入るものがあった

・個々の再生活動がどのくらい持続可能かは、近隣の自治体などが何目線でまちづくりをしているか、どんな価値観、評価基準で意思決定しているか、の壁にぶちあたるのだな。これは組織づくりが経営トップの判断にいきつくのと同じや。

・いのちの循環中心社会に正当な位置を与えられること。

・自然界の営みよりも、コンクリートの方が安全だと捉える視点。

・直線で整った景色は綺麗なのか。どんな景色は美しいと感じるのか。美学。

・組織におけるダムとは何か。人間の心の流れ。営みというレイヤーと、事業を回す機能、仕組みというレイヤー。

・自然環境から一方的にもらって生きているということへのリアリティが増した。

・人間の心臓が、人間をひたむきに生かそうとするように、地球もまたひたむきにひたすらに、いのちを巡らせ続けている。それが色んな形で私たちの目の前に現れている。

・きれいなものだけではなく美しいものに心動かされる感性を取り戻していくこと。

さいごに

先に観に行っていた友人からガイドブックは買った方がいいよとオススメされていたので実際に買ってみると「確かに!」という満足度でした。これから行かれる方はぜひ購入されることをオススメします。

今日まで知らなかったのですが、パンフレットはクラファンで完成したのですね!有難い。


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