ラーゲリより愛を込めて
終戦後、捕虜としてソ連のラーゲリ(強制収容所)に送られた人たちの話。
面白かったです。
戦争が終わって10年以上も極寒のロシアで重労働させられてた人がいたとは知りませんでした。
気温-20℃、1日の食事はパン一枚とお粥。
寒さと飢えという絶望的な状況。
主人公山本幡男はそんな中でも楽観主義を貫き、「いつかダモイ(帰国)の日が来ます」と同じ捕虜たちを励まし、いつしか精神的支柱となっていきます。
演じるのはニノ君。
優しい眼差しと良く通る声が役に非常に合ってました。
ロシア語が出来ることに加え、ラーゲリ内でボールを作り皆で野球に興じるなどアイデアマンな一面も。
史実では俳句の会を開いていたそうです。日本人ですね。
山本が収容所で出会った仲間には
松坂桃李、中島健人、安田顕、桐谷健太ら。
真面目な青年、根明ベビーフェイス、演技派、体育会系の布陣。
皆さんとても良かったです。
中でもニノ君の古い知人である安田顕さんはすごかった。
登場シーンの風貌は衝撃的で、初めは誰が演じているのかわからなかったです。
目の光は褪せ、眉毛も無く、絶望そのもの。
コメディよりのイメージが強かったのですが、さすが舞台役者ですね。
表情だけであそこまで作れるのかと。
出番は中盤からですが、主要キャストの中でも群を抜いた存在感でした。
生きることに絶望していましたが、ニノ君に励まされ希望を見出し、顔つきも変わります。
ニノ君の帰りを待つ妻モジミ役には北川景子。はい美人。
正装でも、家着でも美人。結局美人。
ラーゲリと日本の様子が交互に描かれながら日々が過ぎ、原作タイトルからわかるように、途中でニノ君演じる山本は病に倒れ、亡くなります。
笑顔を絶やさず信念を曲げず、収容所を明るく照らしていた彼に何かできないかと捕虜仲間が立ち上がる場面は感動しました。
山本が最後まで会いたがっていた妻や子供たち。
彼は自分の命がもう長くないことを悟り、遺書を書きます。
そこで仲間たちが帰国し、その遺書を届けるクライマックス。
「遺書なんぞ帰国時に一緒に持って帰ればいいじゃん(゜ω゜)」
と考えてたそこの私。もうちょっとない頭捻りなさいと。
スパイ容疑でニノ君は捕まったので、収容所内で日本語文書なんて持ってようもんなら即没収待った無しなわけです。
さてどうなるかって話ですが、正直予想外でした。これが実話ってすげぇなと。
実際は山本の指示だったそうですが、人柄が良いだけでなく頭も相当キレる人だったんですね。
また犬を飼ってた身としては最後のワンチャンの奮闘もグッと来ます。
そこも実話だとか。
最後が泣けたので見て良かったな〜と思いましたが、満点かというと残念ながらそうでなく。
一人がいい事言うと周りが一斉に「うおおー!」とか「やってやるぞー!」みたいな感じで異様に盛り上がる古臭い演出は相変わらずダサくて白けます。
予告にもあるニノ君に適切な治療をさせようと皆で座り込みをするシーンは確かに感動するのですが、「あんたらニノ君とそんな絡んでたっけ?」という疑問も。
謎に空を見上げるカットも多すぎる。時には横に人おるのに何浸ってんねんって感じ。
また、台詞も所々合ってないというか安っぽく感じました。
何というか、血が通っていないという感じがしたというか。
例えばある捕虜が日本にいる家族の訃報を知って泣き崩れるところ。
その捕虜に対し、ニノ君が「何もなくても!そこに希望はあるんです!」と怒鳴るのはさすがに引きました。いやだからそれが無くなったから泣いてんでしょと。
感情に感情で対抗するのは山本のキャラじゃないように思えました。
とまぁ個人的な主観で気になる点は多々ありますが、一般的には感動出来る良作だと思います。
何より映画みたいな実話とそれを成し遂げた人たちの絆に感動しました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?