見出し画像

【クリエイターEXPO2022】ライターブースに出展して感じたこと。

2022年6月29日から3日間、東京ビックサイトで開催された「クリエイターEXPO」にライターとして初出展しました。この記事では、①出展した理由、②当日までの準備、③開催期間中の様子、④出展の成果、⑤ライターとして感じたことについて書こうと思っています。

結論から言うと「出展して最高に良かった!!」と思っていて、何が・どう良かったのか、もっと早く言語化しておきたかったのですが、出展してからの下半期は怒涛の毎日で、気づいたら今日はもう12月31日……。

ひとまず、思いついたことから書き留めておき、来年以降クリエポへの参加を検討しているライターさんや、ライターさんを探している法人の方々にも、なんらかの参考になれば幸いです。

そもそもクリエイターEXPOとは?

「クリエイターEXPO」は、ライター・イラストレーター・フォトグラファーなど個人で活動するクリエイターが出展できる国内最大規模の展示会です。

…と、つい冒頭にライターを挙げてしまいましたが、じつは出展者の大半はイラストレーター(288名/542名)で、ライターは私を含め12名。例年参加されているライターさんから伺った話によると、ライターは年々減っているとのことでした…。

ともあれ、一般的な展示会は1ブース50万〜100万円以上するのに対し、クリエイターEXPOの小間料金は1ブース16万円+税。「これは安い!」と思い、即決で出展を決めました。

なぜなら、出版社で独り編集長を任されていた通算7年間、引き継ぎなし・クライアント0件の状態から町中を駆け回り、アポなし飛び込み営業で広告をかき集める(そして記事をひたすら書く)という日々の中で、「新規顧客開拓」の厳しさを骨の髄まで経験してきたからです。

多い日には朝から晩まで1日30-50件ひたすら飛び込み営業をしていましたが、何十回も足を運び、顔を覚えてもらって、ひたすら相手の話を聞いて、仲良くなって、やっとの思いで1件獲得……というのが当たり前でした。

そんな感覚がインストールされているので、自分がイスに座っているだけで商談を持ち掛けても怒らない人たちが何百人何千人も目の前を通りかかってくれるなんて夢のような話だと思ったのです(笑)。迷わずオプション料金(1.5万円+税)を払って通路側の角ブースを確保しました。

運営会社であるRX Japanの報告によると、2022年の来場者は44,643人で、そのうち83.8%が企業クライアント。役職別では19.9%が社長・役員クラス、21.7%が部長クラスだったそうです。私は3日間で40名以上の方々と名刺交換させて頂きましたが、やはり大半が社長・役員・部長クラスでした。
このような営業チャンスを個人の力で得ることはほぼ不可能なので、本当にありがたかったです。

①出展した理由:「自分で決めた価格」で技術を売るため。

出展にあたり自分で作成したサービスパンフレット(12pの冊子)

私にとってクリエイターEXPOは、「会社員」ではなく「個人事業主」として営業活動する初めての機会でした。

会社員のころは、会社が決めた価格を提示して広告(つまりスポンサー)を集めていましたが、個人事業主は自分の商品・サービスの価格を自分で決めなければなりません。言ってしまえば当たり前の話…なのですが、一個人が法人から「自分の決めた価格で受注する」というのは、相当な勇気と覚悟がなければ実現できないことだと思います。

ライターの仕事を分解してみると、「文章を書く」という工程はほんの一部に過ぎません(下記参照)。発注側の体制にもよりますが、例えば「コンテンツのアイデア出し(企画)からライターにお任せしたい」というクライアントも少なくないでしょう。私はこれまで、①〜⑧の工程すべてをまるっと任されるケースも多々ありました。

①企画(コンセプト、切り口、トピックス、取材先候補の洗い出しなど)
②アポ取り(取材依頼書、アポ取り、スケジュール調整、会場確保など)
③取材準備(業界、競合、社歴、経歴、その他のリサーチ、文献精読など)
④取材
⑤執筆
⑥原稿チェック(取材対象者への原稿送付、修正やりとりなど)
⑦写真手配(イメージ画像の検索または撮影など)
⑦校正(原稿チェックのやりとり、修正の方向性すり合わせなど)
⑧納品(※WordPress等のアップロード作業が含まれることもある)

記事を1本作成するには最低限これらの工程が発生しますが、「①〜③や、⑥〜⑧は誰がどこまで責任を持つの?」という点が発注段階で極めて曖昧なケースが多く、実質ライターが担当することも珍しくありません。

そのような経験則から、もしライターという事業を継続したいのであれば、「⑤執筆」だけにフォーカスした「1文字○円」という謎の計算式は、そもそも採用するべきではないと考えました。

まずは原価計算から始めようと思い、①〜⑧にかかる時間やコストをなるべく現実路線で書き出してみて、自分なりの原価を設定。税理士・中小企業診断士の先生にも相談を重ねながら「自分軸の価格表」を作りました。

質問された時に価格の根拠を自分の言葉で説明すれば信頼も得られますし、これにより、一方的な価格交渉や受注後の責任領域の認識ギャップは、ほぼ100%防ぐことができました。

納得のいく成果を出せた最大のポイントは「自分もクライアントも納得できる価格」を検討するために最も時間をかけたことだと思っています。

②当日までの準備:各種印刷物・ロゴ・LPなどの作成

ポスターはIllustratorで自作

出展にあたって作成した販促ツール(印刷物)と印刷費は以下の通りです。

名刺:39,600円
チラシ×1種類:7,799円
小冊子サンプル×3種類(フルカラー・8ページ):85,470円
サービスパンフレット(フルカラー・12ページ):55,528円
ポスター×2種類 :11,517円

シンボルマークは、自分でラフ書きしたデザイン案をもとに、印刷をお願いした HAGURUMA さんにお願いして、16.5万円で外注しました。

「物語を綴れば希望の光が見えてくる」というコンセプトで作成
HAGURUMA で活版印刷した自作の名刺

これらの印刷物を小間スペースに設置するため、Amazonで小さな折りたたみテーブル(1万円)、百均でカタログスタンドや名刺受けボックス(数百円)を購入しました。

ランディングページは外注しようと思って見積もりまで取ったのですが、使用するサーバーやプロバイダに縛りがあったり、ウェブサイトのテキストを自分で書かなければならないことが判明したので、ひとまずペライチで自作しました。

独自ドメインの取得やSNSのアカウント作成も同時期にしたので、スケジュール的には心が折れそうになるほどタイトでしたが、次回以降もしまた出展する機会があれば、もっと余裕を持って準備できると思います。(初出展の場合、準備に最低6ヶ月は欲しい…というのが個人的な感想です)

今回、初めて「展示会」なるものに出展してみて、何にどれだけのコストがかかるのか具体的に知ることができたのは大きな収穫でした。「これは必要なかったな」とか「もっとじっくりと業者さんを探して外注したかった」と思う項目もありましたが、何事も経験してみなければ分からない!ということで、結果オーライです。

今回は東京都の「販路開拓サポート助成金」も活用していますが、助成金は立て替えなので、助成金の有無に関わらず、まとまったキャッシュの準備は必要でした。

③開催期間中の様子:対面営業が最高に楽しかった。

サンプル制作に協力してくれた友人も来てくれました。

開催期間中の3日間は、夫に有給をとってもらい、一切の家事と2人の子どもたちを預けて参加。家族の協力にも心から感謝しています。

フリーになってからの10年間(2013年〜)はワンオペ育児と喘息っ子2人の看病が生活の中心だったこともあり営業活動は一切できなかったのですが、10年越しの対面営業は自分でも驚くほど楽しかったです。

私は今回、対面営業の中でヒアリングしたい項目がいくつかありました。

①「ナラティヴ」という言葉を企業クライアントがどうイメージ・解釈しているか
②自分が設定したサービス・価格と企業クライアントの予算感のギャップ
③企業クライアントがライターに期待していること・不満に思っていること

詳しくはまた稿を改めて書きたいところですが、今回のクリエイターEXPOでとくに多かったのは「動画のシナリオは書けますか」というご相談でした。
物語→シナリオという連想が働いていたのかもしれないと想像していますが、文章コンテンツの制作ニーズは予想以上に少なく(もしくは私が設定した価格と相場の差が相対的に大きい)、映像コンテンツが主流であることを肌で感じました。

「人材採用」「組織開発」というキーワードを打ち出した理由は、企業の理念・ビジョン・人材像などを伝えるコンテンツを制作する過程そのものが、広い意味でのHR活動と言えるのではないか?という仮説が私の中にあるからです。

コンテンツ制作には様々な目的があると思いますが、いわゆる「広報」や「広告宣伝」だけではなく、「組織風土を耕していく活動」「社内コミュニケーションを深めていく活動」という捉え方もできるのと思います。

文章コンテンツの「量」と「質」ももちろん大切ですが、その上で、文章を編んでいく過程そのものに価値を見出してもらえたら……という思いがあり、「人的資本経営」の一環として活用してもらえるライター(企業の資産である『人』に焦点をあてて、人事戦略に寄り添った記事を書けるライター)に成長していきたいという目標のもと、「HR」に焦点を絞り込んだポスターを制作しました。

今回、さまざまな業種の方とお話をさせて頂く中で感じたことは、

①「ナラティブ」という言葉の定義は、多くの人にとって未だ不明瞭
② 設定したサービスに対する価格は概ね妥当と受け止めて頂くことができた
③ 動画シナリオの執筆、採用広報、ニッチな分野を広く深く掘り下げるオウンドメディアコンテンツの制作、英語翻訳 などのニーズが多い

です。中でも採用広報のニーズは突出していたように思います。

2023年度は、ISO30414をはじめ、人的資本に関する勉強をさらに深めて、企業規模に関わらず長期的な経営戦略に少しでも貢献できるライティング力を身につけていこうと思っています。(長文記事は「記録」としての価値があり、長期活用に耐え得る記事構成が望ましいと思うので)

④出展の成果:自分の強みを活かせる仕事が増えた

今回クリエポがご縁となってお仕事をスタートした新規クライアント様は、個人様を含めて全7社です。8〜12月は2000〜4000字の取材・執筆が計17 本+α(長期プロジェクト)、チラシ・パンフレット制作が2件、ライフストーリー文章制作が2件、定期的な文章コーチングが2件……とフル稼働でした。投資した以上の成果が得られて、ほっとしています。来年度以降の継続案件も頂いているので、地に足をつけて信頼関係を築き、さらにスキルを磨いていきたいです。

また、顧客開拓のみならず、多種多様なクリエイターの方々と交流できるという点でも、クリエポは最高に価値のある場所でした。

腕一つでお仕事をしているプロのイラストレーターさんやフォトグラファーさんが全国から集結する展示会なので、ポスター・カタログ・フライヤーなど、創作の世界観を凝縮した販促ツールのオリジナリティとクオリティが、とにかくすごい!!!のです。

文章は「見せる」ことができないので、視覚や聴覚に訴求できるイラスト・写真・動画は羨ましい限りでしたが、自分が出展していることを忘れかけるくらい、見て回る楽しみも絶大でした。

私は「餅は餅屋」と思っていて、これからもインタビューとライティングの技術をせっせと磨いていきたいと思っているのですが、だからこそ、編集・写真・デザインなどの勉強をもっと貪欲にする必要があると感じています。
どんなに良いテキストを書いても、編集、写真、デザインがよくなかったら読んでもらえないからです。

良い編集とは何か、良い写真とは何か……を体験的に学んでおくことで、編集のコンセプトにのっとったライティング、写真を引き立てるライティング、デザインと響き合うライティングができるようになりたいですし、それぞれの専門性を引き出せるようなコンテンツ作りの場に参加したい。そう願っている自分にとって、クリエポはライティングと隣接するクリエイターさんの「実践」を目の当たりにできる貴重な学びの機会でした。

⑤ライターとして感じたこと:個人事業主でも企業に貢献できる可能性は十分にある。

最後に、クリエポにライターとして出展してみて感じたことを3つ挙げたいと思います。

① 自分のライティング技術を、自分の言葉でしっかり語ることの大切さ
② ライターとしての責任領域を具体的にすり合わせておくことの大切さ
③個人事業主ながらも企業クライアントに貢献できる可能性の大きさ

まだまだ書き残しておきたいことが沢山ありそうな気もしますが、そろそろ新年を迎えてしまいそうなので(現在12/31)、この辺で終わりにします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

#2022年のわたしと仕事