林檎のミルフィーユ
恋人とは、お互いの誕生日に、特別なディナーを用意しあうと決めている。ほとんど毎日、一緒に料理をつくり、一緒に食べているので、特別な料理というのは、意外に難しい。普段使わない贅沢な食材を使うという手もあるし、普段はかえられない手間をかけるという手もある。
今年の恋人の誕生日は、赤ワインに合う身体が温まるものというリクエストがあったので、メインはカスレにしようと決めた。生ソーセージをつくり、朝挽き鶏をコンフィにし、ラムとインゲン豆を煮込み、それらを一緒にしてオーブンで焼く。普段なら絶対にかけない手間だ。これぞ特別感。そこから前菜は豪華なニース風サラダ、デザートは赤ワインとも合わせられる、テリーヌドショコラのブラックベリーソースに。その日の朝の食卓で話題になった、彼が高校時代に入り浸っていた喫茶店のミックスジュースもおまけにつけることした。
最後まで悩んだのは、アミューズ。私らしく、何かフルーツを使ってと思ったけれど、買い物にいってもそれほど美味しそうなものがない。それだったら、彼の母上が送ってくれた林檎のほうが、ずっと美味しそうと、家にある林檎で、ちょっとびっくりするようなものをつくろうと考えてつくったのが、これ。
久しぶりにちょっとしたアイデアで人を喜ばせる楽しみを思い出した。
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