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春分|2023.3.21-2023.4.4

日々の食卓、食卓での会話、食材やレストラン、食に関する本や映画、イベントなど、食にまつわることだけ書く日記のような「食雑記」。節気毎に更新。

3月21日(火)  春の草はぐんぐんと

春分。買い出しに行くと、今、この瞬間も、たくさんの草がぐんぐん伸びているんだなあ、というのが売り場からも伝わってくる。(お店で)刈り取ってきた草たち。

3月22日(水) 淡い味のうど(少しものたりない)

関西で三度目の春を迎えて、ついに三田うどを買ったので、むいた皮をつかってうどのパスタをつくる。札幌の実家の庭に生えてくる山うどに慣れた舌には、栽培うどの繊細な爽やかさはやっぱりものたりない。あのエグミとともにある旨味が恋しい。

3月23日(木) 新しい魚料理

パクチーとニラがあったので、今年初めての生春巻きとなる。夏の気配。
タイ風の魚料理をということで、鰤をナンプラー、ゴールデンソース、タマリンドでマリネして、汁ごと煮詰める。新玉葱、分葱、パクチーをたっぷりのせて、煮汁をかけて、レモンがわりに夏みかんを添えてみる。恋人には味の焦点が定まらないとと言われる。辛さがないのと、酸味が強すぎた。とはいえ、魚料理の新しい可能性が広がった気がする。

3月25日(土) 月桃の実が入ったお湯

清荒神リュックサックマーケットにて『北の女が食べる西』と『続・遠くの食卓』を並べる。その間に「casimasi」さんにも伺って、2冊とも取扱いしてもらうことが決まり、宝塚図書館にも「まち文庫」として収蔵してもらえることになる。
帰りに「F♭LAT」さんに立ち寄り、石垣島の月桃の実のお茶を頂く。月桃の葉のお茶はうちにもあって、これはもう「ハーブティ」という認識でいいと思うのだが、メニューには、確か「月桃の実が入ったお湯」と書いてあった。なんとなく関西を感じる。「ただのお湯やん!」とつっこまれる前に言っておく、みたいな。

3月27日(月) 野菜と野菜を合わせる

普段、一皿の料理の中で野菜と野菜を組み合わせることはあまりしない(旨味の素として使う玉葱などは別)。ただ、野菜の量が中途半端だったり、早く消費したい野菜があったりで、ブロッコリーの胡麻マヨネーズ和えに春菊を、春キャベツの塩昆布和えに分葱を合わせた。春菊は私の中では和のハーブという認識だし、分葱は香味野菜といえばそうなので、純粋に野菜同士の組み合わせというわけではないかもだけれど、私の中では新しく、その味にハッとした。

3月28日(火) 続・野菜と野菜を合わせる

野菜と野菜の組み合わせは今日も試したくなる。新玉葱が主役の、トマト、新玉葱、パセリのサラダ。菜の花とスナップエンドウ、ディル、パンチェッタのブレゼ。菜の花とスナップエンドウを組み合わせることで、菜の花の苦味とスナップエンドウの甘味が、それぞれよりくっきりと引き立てあうことに気づく。一種類をじっくりと味わうよりも、よりしっかりと味わえる。

3月29日(水) きつねうどんのコントラスト

昼食は、恋人がきつねうどんをつくってくれる。きつねうどんの時は、汁にはみりんをほとんど使わず、きつねを煮るのにたっぷり使うことで、コントラストをつける。ちょっとそっけないくらいの汁。

3月31日(金) 腸内の細菌たちとの共生

年度末も年度末に開催された、みんぱく公開講演会「『目に見えないもの』と生きる――食からみたヒトと微生物のかかわり」に行く。
人と中にいる微生物(腸内細菌)と、人の外にいる微生物(カビや酵母、細菌など)、双方の研究から人と微生物のかかわりについて考えるという内容。
中の微生物との共生についての、人類生態学の梅﨑昌裕さんの話が面白かった。パプアニューギニア高地の人々はサツマイモしか食べてないのに(タンパク質=アミノ酸が圧倒的に不足)、なぜ健康で筋肉隆々なのか。環境ストレスによる小進化でもなく、集団形成による文化的適応でもなく、腸内細菌叢の変化によって環境に適応してきたと思われるという話。人間の遺伝子は2.5万に対して、腸内細菌の遺伝子は1000万以上。進化の複雑さもスピードも人間とは比べ物にならない。細菌には細菌の都合があるわけだけど、なぜか、パプアニューギニア高地の人々の腸内にいる細菌は、体内のアンモニアを吸収し、アミノ酸を排出している。そして、そのアミノ酸を人間が吸収している。だから、アミノ酸は足りていて、健康だし、筋肉隆々だというのだ。たぶん、パプアニューギニア高地の人は、自分が1kgも腸内で細菌を養っているなんて知らないし、細菌も自分の大家のことなんて知らないはず。前に、茶事の半澤鶴子先生が、土からはちょうどその季節にそこに暮らす人間が必要とするものが生えてくる、と言ってたのを思い出した。共生の神秘。

4月1日(土) 続・新しい魚料理

久しぶりに丸魚を買う。旬のイサキで、ずっとつくってみたかったイランの魚料理をつくってみる。お腹に、庭のディルやパセリ、分葱にゼレシュクという甘酸っぱい赤い実(ドライフルーツ)をたっぷり詰めて、オーブンで蒸し焼きする。イサキの淡白で繊細な身にハーブがよく合う。ハーブとフルーツの酸味で魚を爽やか食べる料理、もっといろいろ試したい。

4月2日(日) 鍵善のくずきり

京都での用事が終わり、このまま帰るのももったいないと、鍵善に立ち寄る。いつだったか、母と鍵善に来たときも、桜の季節だったことを思い出す。母に今、鍵善にいるよ店の写真を送ると、やはり「くずきりが食べたい」と。そちらは代わりに私が食べることにして、母には「山椒岩」というお菓子を送ることにする。
漆器の黒に黒の蜜、くずきりの白と透き通る氷と水。これが京都の目のよろこばせ方かと納得する。

4月3日(月) 最高の献立

夕食担当。獅子頭と青梗菜のオイスターソース煮、卵と生ワカメ、分葱の炒め物、まるごと新玉葱の椎茸出汁スープ、バニラアイスの豆豉と胡桃トッピング。全ての料理が美味しくできて、献立のバランスもよくて、バニラアイスを中国料理風のデザートにするならと思いついた、豆豉のトッピングも我ながら冴えてた。こういう小さな成功に支えられて生きている。


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