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世界の家庭料理を食べられるお店ーカフェ・サパナ

半年に1回、大阪豊中のクリニックに通っている。この年になると、通わないといけない病院はいくつもあって、うんざりすることしかないのだけど、豊中のクリニックだけは違う。なぜなら、セットで通っている大好きなお店があるから。

お店の名前は「カフェ・サパナ」。地域に暮らすいろいろな国の人が、日替わりでランチを提供している。国際交流の会とよなかというNPOさんの運営。素晴らしい。豊中に行くときは、まずはFBページで公開されているカフェ・サパナのカレンダーを確認して、食べたい国の料理の日に合わせて、クリニックの予約をしている。通院よりこっちが大事なのだ。

今日のランチは、インドネシア料理。料理をつくってくれるのはニーマスさん。インドネシアは、父が仕事で1年間赴任していた国だ。私が訪れたのは2回だけ。30年前、父が帰国する直前、私が東京への進学を控えた春休みと、9年前、父亡き後に赴任時の現場だった鉄道の駅舎を見るためと。私には珍しく、食のことはあまり記憶に残っていなかった。

ただ、ランチで最初にスープが来て、ひとくち食べた瞬間、父が一時帰国するたびに、スーツケースいっぱいに、お手伝いさんに皮をむいてもらったマンゴスチンを詰め込んで帰ってきたことを思い出した。スープの味とマンゴスチンは全然似ていないのだけど、スープが私のインドネシアの食の思い出を引き出したのは間違いない。

今日のメインは、鶏肉の胡椒炒め。甘めのソースと荒く潰した胡椒とのコントラストが美味しい。そうだ、前に買った胡椒は、インドネシアのカリマンタン島のだった。インドネシアは胡椒の産地だと気づく。だから、この料理は世界共通のスパイスである胡椒の炒め料理ではない、ニーマスさんの地元のスパイスを使った炒め料理なのだ。

カフェ・サパナでランチをすると、いわゆる各国料理店でその国の料理を食べるときとは、ちょっと違うモードになるのが面白い。なんというか、料理に生活がくっついてくるのだ。ニーマスさんという人の暮らしていた国の料理だ、と強く意識することになる。つまり、旅をしているときの感じ方ととても似ている。

旅がこれだけ制限されている今、食卓で世界を旅することができる場所が、豊中にある。たくさんの人に行って、故郷を離れてこの土地に暮らしている、料理をつくってくれる人とお話ししてほしい。

帰り際、ニーマスさんに「美味しかった」とお礼を言ったついでに、胡椒炒めで使っている調味料を教えてもらった。今度つくってみよう。





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