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きょう心にしみた言葉・2023年12月19日

孤独は21世紀のハンセン病だ。

「エコノミスト」誌ツイッター(現・X)(2018年)

このツイートは、話題の書『私たちはいつから「孤独」になったのか』(フェイ・バウンド・アルバーティ著、神崎朗子・訳、みすず書房)の序論の冒頭に掲げられました。エコノミスト誌は、「孤独」がかつてのハンセン病に相当するほどの災厄になったと言います。ただ、このツイートを読むにあたっては大切な留意点があります。ハンセン病は、実際には感染力は極めて弱く、特効薬も発明されています。にもかかわらず、誤解に基づいた隔離政策をはじめとする重大な人権侵害を招いてきました。エコノミスト誌は、そうした誤解による悲劇や社会の責任も視野に入れたうえで、21世紀の今、孤独は深刻な災厄であるとツイートしたとみられます。
イギリス政府は2018年1月、孤独問題担当大臣を置くと発表し、大きな話題になりました。人間はなぜ孤独になったのだろうか、なぜ孤独はこれほどまでに問題視されるようになったのか。この本は人類の歴史を紐解き、考察しています。

『私たちはいつから「孤独」になったのか』によると、「孤独」が生まれたのは、実は18世紀以降だといいます。孤独(ロンリネス)は、単に一人でいる状態(ワンリネス)とも、積極的に選ばれた隠遁などを意味するソリチュードとも異なるものだと指摘しています。「孤独」は、疎外感や居場所のなさといった主観的感覚を意味する感情の「群(クラスター)」だというのです。そこには、恥、怒り、悲しみなど、さまざまな感情が含まれており、人口の増加、グローバル化、都市型で流動性の高い労働力、そうした変化が独居世帯を増加させ、それが孤独の遍在化をもたらしたと分析しています。

この本については、精神科医の斎藤環さんが見事な書評にまとめています。「評者が専門とする『ひきこもり』も、おそらく近代以降の現象なのだろう。ひきこもりは自己疎外と社会的疎外が重なり合う、特異な孤独の形態だ。直接の言及はないものの、本書はひきこもりを考える上でも多くのヒントを与えてくれる」と指摘しています。


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