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ライフリンク・メディア報道・新聞の社説から③

ライフリンクが2013年3月と7月、就活生を対象に行った調査が社会の関心を集めました。東京都内で就活中または就活を終えた大学生や大学院生ら計243人から回答を得ました。7月に聞いた122人の21%に当たる26人が就活開始後に死にたいと考えたと回答しました。新聞各紙は「就活中に『死にたい』2割」などの見出しで大きく伝えました。

ライフリンクの調査結果を伝える中国新聞、東京新聞、毎日新聞


この調査と前後して、若者の自殺を取り上げた社説が頻繁に掲載されます。

2013年03月15日朝日新聞社説「若者の自殺 三下り半は書かせない」は、清水康之代表の指摘「いちど落ちたらはい上がれそうもない社会への、若者からの三下り半(離縁状)」を取り上げ見出しにもしました。

昨年の自殺者は15年ぶりに3万人を切った。20代も前年より減ったが、人口あたりの自殺率を98年と比べると2割も高い。若い世代の死因の1位が自殺なのは先進7カ国で日本だけだ。
 いちど落ちたらはい上がれそうもない社会への、若者からの三下り半(離縁状)。自殺を防ぐNPO「ライフリンク」の清水康之代表はそう見る。
 若者から見限られる社会なんて悔しいではないか。つらい時にも支えてくれる人はいるし、何度でもやり直しは利く。そう実感できる手立てを講じ、三下り半を引っ込めてもらおう。

就職失敗による自殺も気になる。政府統計では、10~20代は5年前の2・6倍だ。
 幼い頃からいじめられないようにキャラを作り、就活の前には履歴書に書けるボランティアを探し回る。そうやって周りの目を気にして生きてきたあげく何十社も断られ、自分を丸ごと否定されたと思ってしまう。多くの若者と接してきた清水さんはそんな心理を見て取る。
 やるべきことは多い。
 大企業か非正規かの二者択一ではない、多様な働き方ができる社会に変えていくこと。
 たとえば、借金を抱えてもやり直せる債務整理という方法がある。そんな具体的な知識を学校で学べるようにすること。
 転んでもかまわない。もう一度立てばいい。そう思えるのは杖があってこそだ。

2013年04月19日 朝日新聞社説「就活する君へ 力をためる時間が要る」でも、ライフリンクの調査が紹介されました。

これからは、会社が社員の訓練や能力開発に責任をもってくれる保証はない。正社員にさえなれば、定年まで年功序列。そんな道筋は崩れている。
 正社員の解雇規制緩和を政府が論じているでしょ。人材のほしい業界へ、過剰になった業界から即戦力を移しやすくする。そうなれば、企業は一から自前で若手を育てなくていい。厳しいけれどそんな時代だ。
 だから君たちには必要な能力を自分でみがく時間が要る。
 小手先の就活対策より考える力をきたえないと。労働法制のような身を守る大切な知恵も。それは大学の責任でもある。
 企業はどうして新卒にこだわるのだろう。既卒者の採用が普通になれば、大学でたっぷり学んだうえ卒業後に留学やボランティアもできる。骨太な新戦力を雇えるのに。就職が遅くなれば親の負担は増すけれど。
 就活の意識調査をしたNPOライフリンクの人から、ある就活生の言葉を聞いたんだ。
 就活とは、ルールがわからないまま一人で参加するゲーム。
 「リクルーターはいない」と言われたのに、他大学の子には付いた。そんな大人たちの反則行為をみて、若者は社会に出る前から社会に不信を抱く――。やりきれない分析だった。

 就活で問われるのは学生の資質だけではない。私たち大人の公正さもみられている。そう心にきざみたい。

朝日新聞の社説


2014年01月09日朝日新聞の論説委員コラム「社説余滴」は「就活に失敗学を」と提起し、ライフリンクの分析を紹介しています。

今や大学は、ときに「就職予備校」と揶揄(やゆ)されるほど就活支援に力を入れている。濃淡こそあれ、中学、高校のうちから大半の学校で職場体験や就業体験をやっている。
 以前より情報は豊富になっている。なのに多くの就活生が志望と現実のミスマッチに悩み、何十社と落とされて命を絶つ人までいる。2012年の20代の「就活自殺」は5年前の2・5倍に及んだ。
 これはいったい何なのか。
 就活生の意識調査をしたNPOライフリンクによると、ほとんどの学生は就活の相談相手に友人か家族を挙げ、大学の窓口を挙げた人はとても少ない。「就活ガイダンスなどのほとんどが、成功モデルしか見せていないのが影響しているのでは」と分析する。

今の就活生は、周りが勝ち抜けしていくのをソーシャルネットワークで即時に知らされる。情報の豊富さにかえって追いつめられる面がある。
 各校の教授からは「ゼミで一番遅くまで就活していた子が、社会に出て一番輝いている」といった話も聞く。大学は「こうすればうまくいく」だけでなく「うまくいかなくても何とかなる」という情報も学生に届けてほしい。

写真は、東京・六本木の森美術館で開かれた村上隆展。

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