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きょう心にしみた言葉・2023年10月31日

どんな人も、自分以外になれません。
誰もが、自分個人という、替えのきかないマイノリティです。

「悲しみとともにどう生きるか」(入江杏・編著 集英社新書)

 以前ににもこのマガジンで紹介した、世田谷一家殺人事件の被害者遺族、入江杏さんと識者たちが語り合う「悲しみとともにどう生きるか」からです。

作家、星野智幸さんの言葉にはいつも熱量があります。文学作品を精力的に執筆する一方で、社会問題についても鋭く発信しています。この本の中で、星野さんは「沈黙を強いるメカニズムに抗して」と題して、現代社会における言葉を発する意義について論考しています。
「今の社会では、こういうことを言ったら馬鹿にされるかもとか、やばい人だと思われるかもしれない、という不安や怯えが日常化しています。空気を読んで、問題が起きないように語った受け売りの言葉を、自分の意見だと自動的に思い込むようにさえなっている」
「だから逆に、誰かに己に正直な発言をすると、その人にイラつき、軽蔑して、攻撃したくなってしまう。その軽蔑と攻撃は、本当は正直な発言をできない抑圧された自分に対して向けられたはずなのに」
「時に暴力的に作用する『大きな物語』や『マジョリティの声』に対抗するのは、ただひたすら個人の言葉を探し続けることが必要なのではないかと思います」
ネット上の中を飛び交う誹謗中傷、日常のように起きる炎上、繰り広げられるネットいじめは、多くの人の心を傷付け、時には取り返しのつかない悲劇を生んできました。生きづらい現代にあって、さらに息が詰まるような状況が進んでいます。
星野さんの文学そして発信は、そんな「沈黙を強いるメカニズム」と闘うものです。そして、みんなに呼びかけます。
「誰もが、自分個人という、替えのきかないマイノリティ」。自分の言葉を大切にし、同じマイノリティである他者を尊重する大切さを思います。





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