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きょう心にしみた言葉・2023年8月14日

そもそも、誰かに助けを求めるという行為は無防備かつ危険であり、時に屈辱的だ。死にたいくらいつらい現在を生き延びるために、自傷や過剰服薬を行っている子どものことを考えてみるとよい。一見、彼らはカッターナイフや処方薬・市販薬に単に依存しているように思えるかもしれないが、実はそうではない。問題の本質は、カッターナイフや化学物質という「物」にのみ依存し、「人」に依存できないこと、より正確に言えば、安心して「人」に依存できないことにあるのだ。

「『助けて』が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか」
(松本俊彦・編 日本評論社)
 

子どもの自殺予防のために「援助希求能力を高める」「SOSの出し方を教える」ことが強く求められています。では、実際にどうすればいいのか。最前線で活動する臨床心理学の専門家たちが、それぞれの考えを披歴しあい、課題を洗い出し、それを乗り越えるための方策を探ったのが「『助けて』が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか」です。科学的な見地からの論証や提起だけでなく、人間としてのあたたかで素敵な言葉にも数多く出会うことができます。脳性麻痺で車椅子生活を送る東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎さんは「実は、私自身が『助けて』を言えないタイプの人間なのです。だから、自戒を込めて『自立とは依存先を増やすこと』と言っているのです」と明かしています。精神科医の蟻塚亮二さんは、性暴力被害や小児期逆境体験を持つ人たちとのミーテイングを始めたといいます。その場所のモットーは「犬のように群れるのではなく、ひだまりに集まる猫が暖まったらプイと輪から出ていく、そんなわがままが認められるような、それでいて毎回そこに来て話すことによって『よかった』と思える場所にしよう」だそうです。
子どもたちも、大人も、安心して「人」に依存できる社会を。「自立とは、依存先を増やすこと」なのです。

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