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きょう心にしみた言葉・2022年12月26日

すべての世代の「わたし」が生き続けているのではないだろうか。57歳のぼくの体には0歳も、13歳も、22歳も、45歳も存在している。
時間と空間の概念から解放されると、私が規定している「わたし」の膜が溶け出して、その人の体内に生きている若かりし「わたし」が立ち上がってくる。介護する者からすれば、それぞれの世代のその人と出会うことができるチャンスである。
そのことをもっと楽しんでいいのではないだろうか。

「シンクロと自由」(村瀬孝生・著、医学書院)

著者の村瀬孝生さんは、特別養護老人ホーム「よりあいの森」などの統括所長を務め、長くお年寄りのケアを続けてきました。介護の現場から見える人間存在の深さを綴ったのが「シンクロと自由」です。
 この本について、東京工業大学教授の中島岳志さんが見事な書評を毎日新聞に書いています。
「私たちは老いによって機能不全が起きることを「不自由」と捉えがちである。しかし、村瀨は、そこに新たな自由を見出す。時間が分からなくなることで時間から解放され、子どもの顔が分からなくなることで親であることから解放される。覚えていることが出来なくなるので、毎日が新鮮。規範的な自己像が崩れることで、自分を縛っていた「あるべき自分」から解放される」。老いは素晴らしい出会いの日々。そして、その出会いが、生き続ける大切さを強く教えてくれます。
村瀬さんは、あとがきにこう書いています。「長生きしたいと思うようになりました。老いて衰えることを実感したいのです。そこにある悲しみや喜びを深く味わいたいのです」と。みんなで一緒に、長生きを。

中島さんの書評です。


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