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きょう心にしみた言葉・2023年4月10日

苦しみから逃れたいから死ぬ、ではなく、苦しみから逃れるように生きなかればならなかったのだ。それはお腹が空いたから食べる、眠たくなったら寝る、といった単純なことだ。そんな単純なことさえ私は否定し、怠っていた。今ここに私の身体が生きていて、身体が生きるためにいろんな欲望をしているという当たり前の事実に気がつけたことは大きい。生きること、欲望すること、そのものを肯定できたような気がする。

「しにたい気持ちが消えるまで消えるまで」(豆塚エリ・著 SAN-EI)

詩人であり、歌人であり、作家としても活躍する豆塚エリさんは、16歳の時に自殺を図り、その時の後遺症から車椅子で暮らしています。「しにたい気持ちが消えるまで」は、自殺を図った時の気持ちの動きをひとつひとつ振り返りながら、辛かったリハビリの日々や、エリさんをサポートしてくれる人々との交流を通じて、生きることの大切さに気付いていく自らの体験を綴っています。以前は、スポーツは好きではなかったといいますが、車椅子でバスケットボールを始め、マラソンにも参加しました。明るくポップな文体のこの本は、素敵な音楽を聞いているように読むことができます。「私はポジティブという言葉が嫌いだ。何だか虚勢じみて噓っぽいし、悩んだり考えたりすることやネガティブであることが悪いことみたいだからだ」「人と比べてしまって苦しみや嫉妬、自己卑下のモードに入ったら、今まで自分の取り組んできたことに目を向ける。そして、その続きをコツコツとこなしていく。それは祈りに近い行為だと私は思っている」。思わずうなずいてしまう言葉が連なります。そして、最後はこんな文章で締められています。「生きることって大変だけど、ぼちぼち、誤魔化し誤魔化し、こっそり手抜きしつつ、一緒に生きていこう」


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