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ライフリンク・メディア報道・2023年を振り返る②

大きな衝撃が広がりました。2022年の自殺者数の確定値が3月14日に発表され、小中高生は計514人で、1980年の統計開始以降で最多となり、初めて500人を超えました。
この事態について、清水康之代表NHKニュースのインタビューを受けました。

児童・生徒の自殺が増えた背景として、清水さんは、もともと家庭や学校で生きづらさを抱えていた子どもが、コロナ禍によってショッピングモールをちょっとぶらつくなど自分の「居場所」や「逃げ場所」と思えていた外部との接触を断たれた可能性を指摘しています。
そのうえで、子どもの場合、自分の力だけで生きる場所や環境を変えることが難しく、そこから逃げ出す方法として自殺しか選択できない状況に陥っているのではないかと分析しています。

清水さんは「みずから命を絶った子どもが生きられなくなった条件や原因を特定して取り除いていく対策を行わなければ、子どもが生きる環境は改善されない。関係省庁が情報を一元化して多角的に分析し、原因を正確に把握したうえで改善し、『子どもが子どもとして生きられる環境作り』を早急に進めることが重要だ」と話しています。

NPO法人「ライフリンク」のSNS相談窓口に寄せられた相談は、おととし4月は、およそ1400件でしたが徐々に増加し、去年4月には2400件ほどに上りました。
相談員を増やして対応しているということですが、去年1年間では月3000件近くで推移していました。
具体的には、
▽女子中学生からは「過去にいじめにあい学校に居場所がない。家庭では親が険悪で自分の居場所がなく消えてしまいたい」といった相談や、
▽男子高校生からは「友人との関係や部活、進路など、いろいろなことがしんどく漠然と消えてしまいたいという思いがずっとある。大人になっても中途半端なままかと思うと自分は生きていてもしかたないと思ってしまう」
という相談が寄せられています。
また、
▽女子高校生からは「小さいころから親からいつも罵倒されてきた。早く家を出たいが年齢的にもまだ無理で、お金もなく、当面出られそうにない」という相談もあるということです。

清水代表は「身近な大人に相談しても、ささいな悩みだと言われてしまうと感じている子どもたちもたくさんいると思うが、相談機関があり、私たちもみんなとつながる努力をしているので連絡をしてもらいたい。また、まわりの大人も子どもの様子を気にかけて声をかけてほしい。自殺は子どもにとって身近なものになっていて、自分の子どもは大丈夫だろうという思いは捨てたほうがいい。叱ったりアドバイスしたりするのではなく、どう思っているかを受け止め、子どもが悩みを抱えていると分かったとき大人も相談相手を見つけておく必要がある」と話していました。

3月14日読売新聞も子どもや若者の自殺の増加について分析しています。

内訳は高校生354人(前年比40人増)、中学生143人(同5人減)、小学生17人(同6人増)。
 原因・動機別で見ると、学業不振や進路の悩みのほか、友達との不和、親子関係の不和が目立った。小中高生に大学生などを合わせた「学生・生徒」も1063人で、過去最多だった。
 子どもの福祉に詳しい山縣文治・関西大教授は「学校生活や進路の悩みは誰でも抱えているが、長引くコロナ禍に伴う人間関係の希薄化で、友人らに相談できない子どもが増えているのだろう」と分析している。

3月15日朝日新聞も子どもや若者の自殺増加に警鐘を鳴らしました。

児童・生徒の自殺者数が500人を超えたのは初めて。20年に前年から100人増の499人となり、21年も473人で高い水準だった。内訳は高校生が354人、中学生が143人、小学生が17人。男子高校生が全体の4割を占めた。
 児童・生徒の自殺の原因や動機(遺族らに調査、1人四つまで)は、小中高いずれも「学校問題」が最多。具体的な内容をみると、「学業不振」「進路に関する悩み」のほか「学友との不和」が目立った。「家族関係」に苦しんだ子も多く、小学生を含めて「家族からのしつけ・叱責(しっせき)」があがった。

1月4日毎日新聞は、子どものSOSの受け皿について考える連載記事を掲載しました。

さまざまな相談ダイヤルがある中、全国統一の番号で広く周知されている「24時間子供SOSダイヤル」の実態を調べることにした。子どもの支援団体から「つながらない」という情報を聞くこともあった番号だった。
 SOSダイヤルは「夜間や休日でも子どもの悩みや不安を受け止めることができるように」との安倍晋三元首相の肝いりで、文部科学省が2007年に設置し、15年にいじめに限らずSOS全般を受け止める現在の形とした。電話をかけた場所の都道府県教委や政令指定都市教委の相談窓口につながる。当初はいじめ相談専門だったが、現在はすべてのSOSに対象が広がり、フリーダイヤルでかけられる。通話料は国費で賄われ、24時間対応のための費用の一部も国から補助が出る。
 つながりにくいのは本当なのか。22年10月末、文科省に問い合わせた。当初は「公表していない」としていたが、その後も資料を求めていたところ、約3週間後に「データを示せる」と連絡があった。
 SOSダイヤルには21年度、全国で10年前の8倍に当たる約16・7万件の発信があり、約11・3万件がつながっていた。その割合を示す「接続率」は約67%だったが、都道府県によってばらつきがあり、月によっては10%に満たない県もあった。

いつでも、どこからでも「つながる」相談窓口が必要です。ライフリンクをはじめ自殺対策の現場では日々、その体制の構築に全力を挙げています。

写真は、岩手県立美術館にて。

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