見出し画像

ヒストリー⑬始まりの日・2005年5月

心揺さぶるシンポ、大臣動かす


自殺対策の大きな転機となり、今も語り継がれるシンポジウムが開かれました。

2005年5月30日、ライフリンクが主催し、参議院議員会館で初めて行われた自殺対策をテーマにしたシンポジウムです。
与野党の参議院厚生労働委員会理事が広く各党議員に参加を呼びかけ、尾辻秀久厚生労働大臣をはじめ11人の国会議員、約20人の議員代理、総勢200人を超す参加者に会場は超満員になりました。

シンポジウムでは、夫を亡くした女性が自らの壮絶な体験を、涙を流しながら語り、参加者の心を大きく揺さぶりました。
分刻みで動く多忙の中、出席した尾辻大臣は、そのまま45分間も席にとどまりました。退席の予定時刻が過ぎていることを秘書が何度も耳打ちしましたが、動かずにじっと聞き入っていました。

 尾辻大臣がやっと席を立とうとした時です。ライフリンクの清水康之代表が直訴に出ました。
「尾辻大臣、民間の現場も、自治体の現場も、もう限界なんです。あとは国が動くかどうかに掛かっています」

進行役の山本孝史参議院議員も、清水さんを援護する発言をして、尾辻大臣に自殺対策の推進を強く迫りました。

実は、シンポジウムを前にした打ち合わせで、尾辻大臣の出席に尽力した山本さんは、清水さんに「この機会を逃すと、大臣に直談判する機会はない」と直訴を薦めていたのでした。

ふたりの発言を受けて、尾辻大臣は真剣に検討することを約束しました。この「大臣の約束」は、その後の展開に大きな意味をもたらしました。
そして、尾辻氏は、大臣を退いた後も誠実に「約束」と向き合っていきます。
  
シンポジウムでは、ライフリンクのほかにも、東京自殺防止センターや親の自死を語る会などが発言しました。さらに自殺防止に取り組み全国の民間12団体がまとめた「国に対する5項目提言」も発表されました。

5項目は①国として自殺対策に取り組む意思を示す②効果的な予防策のために自殺の実態を調査・把握する③個人だけでなく社会を対象にした自殺対策を実施する④社会全体で自殺対策を行う体制をつくる⑤自殺未遂者と自死遺族への支援(心のケア)を行うーというものでした。

各団体が一堂につながり、それぞれの意見を集約し、ひとつの要望にまとめあげたことでも画期的なシンポジウムになったのです。
                                                  =続く 次回は、⑭2005年12月編「政府方針まとまる」です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?