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きょう心にしみた言葉・2024年7月3日
「病気は進行するけど、テクノロジーも医療も進むはずなので、それを信じて生きていきたい。病気が進んでも、目と耳の機能は衰えないので、音楽は最後まで味わえます。この病気になったのは、不運かもしれない。でも、自分は仲間たちに囲まれてすごく幸運だと思っています。音楽と、仲間たちに、自分ができる形で恩返ししていきたい」
筋萎縮性側索硬化(ALS)と診断された、アマチュアの神戸市民交響楽団に所属する35歳男性の言葉です。
男性は音楽とともに生きてきました。中学では吹奏楽部、妻とは大学のときオーケストラ部で出会いました。会社員になってからもアマチュアオーケストラで活動を続けてきました。
男性が体に違和感を感じたのは3年前のことです。手や指の筋肉が動かしにくくなったり、足が震えて歩きづらくなったりと、症状は少しずつ進行しました。
男性には3歳と6歳の子どもがいます。子どもが投げたボールを、以前のようには受け止められず、おむつを替えるときにテープをひっぱって破くことができなくなりました。「子どもに対して、できていたことがだんだんできなくなることを実感するとき、絶望を感じます。日々闘っている感じです」
そんなとき、仲間から毎年春に行われる恒例の演奏会の指揮を頼まれました。子どもから大人まで、弦楽器を学ぶ人たちの発表会を兼ねた演奏会です。
演奏会当日。男性は舞台の袖で、それまで乗っていた車椅子を降り、ステージへの階段を自分の足で1歩1歩登り、指揮台に立つと背筋を伸ばしました。
男性は見事に指揮を完遂し、会場は感動に包まれました。
「指揮者と奏者の間には、目に見えないけれど絆があって、お互いにハーモニーというか、響きを共有しているんです。指揮をしていて、音楽をしていて、私は生かされているなと思います」
立ち向かえ そのUNREAL
変えてけ 思い描く理想郷へ
この痛みも苦しさも全て
光にして創造するのさ
10年前、筋萎縮性側索硬化(ALS)を発症した男性がつくった曲の歌詞です。声が出せなくなり、思いを直接伝えられなくなっても、諦めたくないことがありました。世界とつながり続けるために、男性が可能性を見いだしたのは最先端のテクノロジーです。
「たとえ体は不自由でも、テクノロジーの力で表現の可能性は必ず切り開ける」
男性は、2023年6月の世界ALSデーに合わせたイベントに向けて、視線で演奏する独自のDJツールの開発を続けました。
画面の座標上を視線で自由自在に動き回ることで、エフェクトがかかった直感的な音を鳴らして演奏に加わったり、会場を盛り上げる呼びかけをしたりすることができるようになりました。
さらに、イベントのために視線入力で55つの新曲を制作しました。ALSの闘病体験を通じて感じた孤独や、愛する人との日常が失われていく苦しさを、1年ほどかけて曲と歌詞に込めました。
この痛みも苦しさも全て
光にして創造するのさ
ALSの啓発を目指す音楽イベントの日がやってきました。
音楽と映像が融合したライブが、次々と繰り広げられました。会場やオンライン配信には、賛同者や難病患者などおよそ1000人の観客が集まり、音楽に体を揺らしたり、一緒に歌ったりしていました。
男性は、このイベントで、DJの大役を見事に果たしました。
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「僕にとっての限界は、自分自身が未来を信じることを諦めてしまったときだと思っています。どんな障害や制約があっても、誰もが自分らしく挑戦することのできるボーダーレスな社会の創造に挑み続けていきます。僕らはテクノロジーの力で、これまで不可能と思われていたことを、1つ1つ可能に変えていきたい」
渾身の言葉が、多くの人に勇気を与え続けています。
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