きょう心にしみた言葉・2024年8月15日
いじめの研究の第一人者とも言われる明治大学文学部准教授、内藤朝雄さんの著書「いじめの構造 なぜ人が怪物になるのか」から紹介しました。
残念ながら学校現場からいじめはなくなりません。壮絶ないじめと学校の隠蔽や責任逃れが明らかになった「大津いじめ自殺事件」を機に2013年、いじめ防止対策推進法が施行されました。それでも悲劇は起き続けています。
なぜなのでしょうか。
この本は大津いじめ自殺事件が起きる前の2009年に出版されました。しかし、この本で指摘されたいじめの背景や原因は、今に至っても学校現場に蔓延しているものです。子どもたちを強制的に押し込める特殊な空間である学校。「閉鎖空間でベタベタすることを強制する」学校は、「ノリ」という秩序が形成されやすいといいます。いったん「ノリ」という強固な秩序が出来上がってしまうと、秩序に背いたとみなされた人物は標的にされ攻撃されます。放置しておくと攻撃は過激化し、時として制御できなくなる事態が現出します。たとえ命を奪う事態になっても、「ノリ」に合わない、秩序を乱した人物への攻撃は当然であり、まったく意に介さないという信じがたい事態にもつながっていくのです。最近発覚したいくつかのいじめによる悲劇も同様の展開が起きたとみられます。
内藤さんは、いじめをなくすには学校の閉鎖性を打破すること、社会の姿が変わることが必要だとして学校制度の改革をはじめいくつかの画期的な提案しています。また、2023年4月24日の「きょう心にしみた言葉」で紹介した、精神科医の中井久夫さんのいじめ被害の体験にも言及しています。
中井久夫さんは「小権力者は社会が変わると別人のように卑屈な人間に生まれ変わった」と振り返っています。内藤さんはこの言葉に、むしろ「希望」を見い出しています。社会が変われば、いじめも抑止できるという証左になるからです。いじめの加害者は法的措置には敏感で、多くの場合、すぐにいじめをやめることも指摘しています。
この本には、いじめの凄惨さと根深さとともに、いじめ撲滅への希望が綴られています。
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