美の凱旋

朝焼け、まどろむ姿、窓から差し込む一筋の光、夢で見た架空の場所、陽光に目を覚ます、けだるく伸びをする腰つき、微笑み、紅茶から立ち上る湯気、赤いりんご、鋭い切断面、咀嚼する口元、無為の一時、片付けをする背中、少し話をする瞬間、服を決める立ち姿、キス、繋ぐ手の感触、外に出た時に鼻をくすぐる金木犀、少し強い日差し、そよ風、二人分の足音、人の少ない駅、車窓から見える街並み、観光地、ここにしかないもの、鳥居、境内、手を合わせる姿、祈る横顔、庭、踏みしめる砂利の音、竹林、林間の涼しさ、人通りの少ない道、誰もいない日陰、欲を出す手、夜へのお預け、時を忘れた足取り、さわやか、心地よい空腹、初めて歩く街、並ぶ店々、初めての食事、初めての味、初めての美味しさ、よく知る匂い、幸せを感じる昼下がり、バスを待ちながら話す、揺られながら見る景色、指で指し示す先の建物、見知らぬ情景、紅葉、黄色の山、紅の山、神社、もみじ、嬉しさに先を急ぐ、慕い付きそう、池、金の佇まい、赤に金、池の外周、バスを待つ、揺られる時間、うとうと、肩から伝わる寝息、撫でた感触、指の絡まらない黒髪、降り立った駅、叔父の設計した地下鉄、会話のできぬ騒がしさに顔を眺める、手から伝わる感触、握る、握り返される、握り返す、握り返される、少しの間、はにかみ、開いた扉から地上を目指す高揚感、そびえ立つビル、機能的な都市計画、旅先の本屋、手に取る感触、ぱらぱらとめくれる紙の音、夕暮れ、帰路、食前の風呂、シャワーから滴る水、ホワイトノイズ、待つ間つけたテレビ、次第に閉じる目、夢、目を覚ます不意の感触、髪を拭いてやる甘さ、風呂上がりの色気、赤く光る唇、濡れたままのうなじ、服越しの背中、一人でない食事、注がれるグラス、嚥下する喉元、食後のひと時、逃げられない誘惑、音楽を止めて漂う静寂、待ち遠しかった夜、官能的な曲線、息遣い、這う指、貪る音、僕だけの君、夜更け。

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