ダイアモンド・プリンセスが大量の感染者を生み出している理由
ダイアモンド・プリンセスは、既に450人を超える感染者を出し、米国政府がチャーター機で救済に来るまでの状況になっていますが、その内情を伝えるビデオを神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎氏が投稿しています。
岩田健太郎氏は、エボラやSARSと戦う現場を自ら体験し、感染症に関する数多くの書物も執筆されている感染症の専門家です。
14分ほどのビデオですが、要点をまとめると以下の通りになります。
・常駐しているプロの感染対策の専門家が一人もいない
・船内は、専門家から見ても「心底怖い」と思えるほど悲惨な状況
・どこが危なくてどこが危なくないのか、全く区別がつかない
・そのため乗客だけでなく、厚労省の役人や検疫官までも感染してしまっている
・アフリカや中国なんかに比べても全然酷い感染対策
・この失敗を日本政府が隠すため、悪循環に陥っている
これがまさに450人以上の感染者を出してしまった理由なのです。そして、こんな状況であれば、乗客だけでなく、船内に一度でも踏み込んだ、厚労省の役人、検疫官、医療関係者も感染している可能性が高く、適切な処置(彼らの隔離など)をしない限りは、ダイアモンド・プリンセスが日本全体の感染源になりかねない、非常に好ましくない状態のです。
以下は、上の要点の部分を、「書き起こし」から引用したものです。
専門家から見ても「心底怖い」と思えるほど悲惨な状況
それはもう、酷いものでした。もうこの仕事20年以上やっていてですね、アフリカのエボラとか中国のSARSとか、いろんな感染症と立ち向かってきました。もちろん身の危険を感じることも多々あったわけですけど、自分が感染症にかかる恐怖っていうのは、そんなに感じた事が無いです。
どうしてかと言うと、僕はプロなので、自分がエボラに罹らない、自分がSARSに罹らない方法って言うのは知っているわけです。或いは、他の人をエボラにしない、SARSにしない方法とか、施設の中でどういう風にすれば感染がさらに広がらないかってことを、熟知してるからです。
それが分かっているから、ど真ん中にいても怖くない。アフリカにいても中国にいても怖くなかったわけですが、ダイヤモンドプリンセスの中はものすごく悲惨な状態で、心の底から怖いと思いました。これはもう、COVID-19に感染してもしょうがないんじゃないかと、本気で思いました。
どこが危なくてどこが危なくないのか、全く区別がつかない
レッドゾーンとグリーンゾーンと言うんですけど、ウイルスが全くない安全なゾーンと、ウイルスがいるかもしれない危ないゾーンをきちっと分けて、そしてレッドゾーンでは完全にPPという防護服を着け、グリーンゾーンではなにもしなくていいと、こういう風にきちっと区別をすることによって、ウイルスから身を守るという事は、我々の世界の鉄則なんです。
ところが、ダイヤモンドプリンセスの中はですね、グリーンもレッドもグチャグチャになってて、どこが危なくてどこが危なくないのか、全く区別がつかない。
どこにウイルスが、、ウイルスって目に見えないですから、完全な区分けをすることによって、自分の身を守るんですけど、もう、どこの手すり、どこの絨毯、どこにウイルスがいるのか、さっぱり分からない状態で、いろんな人がアドホックにPPを着けてみたり、手袋はめてみたり、マスクをつけてみたりつけなかったりするわけです。
で、クルーの方も、N95をつけてみたりつけなかったり、或いは熱のある方がですね、自分の部屋から出て歩いて医務室に行ったりするということが、通常で行われているということです。
厚労省の役人や検疫官が感染している
私が聞いた限りでは、DMATの職員、それから厚労省の方、検疫官の方がPCR陽性になったと聞いていたんですが、それはもうむべなるかなと思いました。
中の方に聞いたら、いや、我々もこれ感染すると思ってますよ、という風に言われて、びっくりしたわけです。
どうしてかというと、我々がこういう感染症のミッションに出る時は、必ず自分たち医療従事者の身を守るというのが大前提で、自分たちの感染のリスクをほったらかしにして、患者さんとかですね、一般の方々に立ち向かうってのは、御法度、これもうルール違反なわけです。
環境感染学会やFEPが入って、数日で出ていったという話を聞いた時に、どうしてだろうと思ったんですけど、中の方は感染するのが怖かったんじゃないという風におっしゃっていた人もいたんですが、それは気持ちはよく分かります。
なぜなら、感染症のプロだったら、あんな環境にいたらものすごく怖くてしょうがないからです。ぼくも怖かったです。
もう、これは感染、、今、某、これちょっと言えない部屋にいますけど、自分自身も隔離して、診療も休んで、家族とも会わずに、いないとヤバいんじゃないかと、個人的にはすごく思っています。
今私が、COVID-19、ウイルスの感染を起こしていても、全く不思議はない。
常駐しているプロの感染対策の専門家が一人もいない
聞いたらその、そもそも常駐しているプロの感染対策の専門家が一人もいない。
あの、時々いらっしゃる方がいるんですけど、彼らも結局ヤバいなと思っているんだけど、何も進言できない、進言しても聞いてもらえない。
やってるのは厚労省の官僚たちで、私も厚労省のトップの人と相談、話しましたけど、ものすごく嫌な顔されて聞く耳持つ気無いと。
何でお前こんなところにいるんだ、何でお前そんなこと言うんだみたいな感じで、知らん顔すると、いうことです。非常に冷たい態度とられました。
アフリカや中国なんかに比べても全然酷い感染対策
で、彼ら医療従事者ですから、帰ると自分たちの病院へ行って仕事するわけで、今度はまたそこから院内感染が広がってしまいかねない。
で、もうこれはもう、大変なことで、アフリカや中国なんかに比べても全然酷い感染対策をしているし、シエラレオネなんかの方がよっぽどマシでした。
日本にCDCが無いとはいえ、まさかここまで酷いとは思ってなくて、もうちょっとちゃんと専門家が入って、専門家が責任を取って、リーダーシップをとって、ちゃんと感染対策についてのルールを決めてやってるんだろうと思ったんですけど、まったくそんなことはないわけです。もうとんでもないことなわけです。
失敗を隠す日本政府
ところが日本は、ダイヤモンドプリンセスの中で起きてることは全然、情報を出していない。
それから、院内感染が起きているかどうかは、発熱のオンセットをちゃんと記録して、それから、カーブを作っていくという、統計手法、エビカーブってのがあるんですけど、そのデータを全然とっていないということを、今日教えてもらいました。PCRの検査をした日をカウントしても、感染の状態は分からないです。
このことも実は厚労省の方に既に申し上げていたんですけども、何日も前に。全然、されていないということで、つまり要は、院内の感染がどんどん起きててもそれに全く気付かなければ、気付いてもいない、対応すらできていない、で、専門家もいないと。ぐちゃぐちゃな状態になったままでいるわけです。
このことを、日本の皆さん、或いは世界の皆さんが知らぬままになってて、特に外国の皆さんなんかは、そうやってこう、あの、かえって悪いマネジメントで、ずっとクルーズの中で、感染のリスクに耐えなきゃいけなかったということですね。
やはりこれは日本の失敗なわけですけれども、それを隠すともっと失敗なわけです。確かにあの、まずい対応であるということがバレるというのは、それは恥ずかしい事かもしれないですけど、これを隠ぺいするともっと恥ずかしいわけです。
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