カタチ

その服が好きという
その香りが好きという
その言葉が好きという

私を私たらしめるひと
私を好きだというひと

その笑窪も愛しいという
その不器用さも愛しいという
その愛し方も愛しいという

私を私たらしめるひと
私を愛しく想うひと


何かを好きでいればいいか
誰に友情を預ければいいか
どうして愛を叫ぶか
私が私を失くすとき、
何者にもなれなかったのだと知る

誰かの心が私に傾かなかった夜に
静かに消えていったカタチ
思い出がとたんに凶器になった

悲しみの理由はただの執着だ
軋んだ心音がうるさかった
誰かの大切からこぼれ落ちたあとに
痛む心でやっとカタチになった愛

ここでうまれて、死に場所も同じだ

ひとりよがりに気付く夜
最初から孤独だった


心の中心が分からぬほど
私は曖昧な形をしている
水に溶けるシュガーみたいに
もがき掻いた指先が滲んでいく

何者にもなれなかった私に
あなただけは繰り返した

その唇で好きだと言って
その瞳が愛していると言う

あなたから溢れるカケラ
愛がまた死んでしまって
茫洋としていた私の輪郭をなぞった

私を私たらしめるひと
心を灯すひと
指先が触れるひと

あなたが溢すたびに無性に悲しい

悲しみの理由は無力さであればいい
同じだけの愛を返せないほどに
大きな愛に無力さを感じたい

あなたをあなたたらしめるひと
私はただ純粋な愛をうたう



2020.06.20

大人になるといろんなもののカタチが変わっていく、そんな感情に支配されて初夏。KingGnuさんのTheholeがとても染みる夜。

#詩 #現代詩

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