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電力システム中のMerging Unitについて

公式資料の勉強の爪痕です、ご参考までに。資料は以下のリンクにてダウンロード可能です。
https://www.naspi.org/sites/default/files/2021-02/20210127_Hitachi_ABB_Merging_Unit.pdf



このスライドでは、広域監視制御システム(Wide-Area Monitoring and Control System)が説明されています。これはスマートグリッド(Smart Grid)の重要な構成要素です。システムはGPS衛星を使用してタイムスタンプを提供し、データの同期を確保します。地図上に表示される位置は電圧と電流の位相測定点、つまりファゾールを示しており、これらは電力網の健全性を監視するための重要なデータポイントです。これらのデータは通信ネットワークを介してシステム保護センターに送信され、電力網のリアルタイム監視と制御が実現されます。同期はシステムの中核であり、すべての測定データが時間的に一貫していることを保証します。これは正確な電力網の分析、障害検出、およびエネルギー管理に不可欠です。システム保護センターはこれらの同期データを活用し、意思決定と制御を行い、電力網の安定性と安全性を維持します。この技術は電力網の障害拡散の回避、電力網の運用最適化、再生可能エネルギーの統合支援において重要な役割を果たしています。

このスライドでは、同期位相計測装置(Synchrophasors)からマージングユニットテクノロジーへの移行について説明されています。マージングユニットは信頼性の高い通信(光ファイバーイーサネットなど)と正確な時刻同期に依存しています。同期位相計測装置とは異なり、マージングユニットでは時間の同期精度はマイクロ秒レベルで求められますが、協定世界時(UTC)まで遡る必要はありません。マージングユニットは電流(I)と電圧(V)の振幅と角度を送信するために使用され、角度はローカルな参照を使用します。データ転送の面では、同期位相計測装置は1秒あたり240フレームのデータを転送できますが、マージングユニットでは1つの電力系統周期(60Hzの場合は16.66ms)ごとに80〜256フレームのイーサネットデータフレームを送信します。通信カバレッジおよびプロトコルの面では、同期位相計測装置はワイドエリアネットワークを使用し、通常TCP / UDPプロトコルを第4層のIPで使用しますが、マージングユニットはローカルエリアネットワークを使用し、イーサネットの第2層で動作します。

このスライドは、イーサネットを使ったIEC 61850サービスについて説明しています。IEC 61850は、電力システムの自動化における国際的な標準であり、発電所や変電所での通信ネットワークやシステムに使用されます。
クライアント・サーバーモードでは、点対点のTCP/IP/イーサネット通信を使用してセントラルの監視や制御が行われ、コマンド、レポート、ログ、ファイルなどのデータを転送することができます。
GOOSEは、変電所内でのモニタリング、制御、および保護に使用される2層イーサネットのリアルタイムマルチキャスト通信方式であり、バイナリデータ、状態表示、およびトリップコマンドを転送することができます。
サンプリング値(SV)も同様に、2層イーサネットのリアルタイムマルチキャスト通信であり、制御および保護のためのアナログ量の測定値であり、主に電流と電圧のサンプリングに使用されます。
これらのサービスは、変電所の自動化、リアルタイムモニタリング、および迅速な故障対応を実現するための基盤を提供します。例えば、GOOSEプロトコルにより、ミリ秒単位でトリップなどの緊急制御コマンドを転送することが可能となり、サンプリング値サービスは電力ネットワークのリアルタイムな状態のモニタリングと制御に精確な電気測定データを提供します。これらの高速通信技術により、電力ネットワークの信頼性と運用の安全性を向上させることができます。


この図は、将来のデジタル変電所の基盤であるプロセスバス(Process Bus)を示しています。主な内容は次のとおりです:

  1. デジタル保護、制御、通信の採用:これはデジタル変電所の中核であり、高度な監視と自動化された保護制御を実現しています。

  2. 通信システム:変電所内の通信インフラストラクチャーであり、IEC 61850ステーションバスなど、保護制御システムのデータ交換を担当しています。

  3. 冗長性:並列冗長プロトコル(PRP)や高可用性シームレス冗長(HSR)により、システムの信頼性が向上しています。

  4. 資産監視:上位システムおよび機器のモニタリングデータを収集し、機器の運用効率やメンテナンス管理の向上に役立っています。

  5. PTPに基づく時刻同期:リレーとマージユニットの間のシームレスな同期により、データの正確性とタイムリネスが確保されます。

  6. ギャップブリッジ:マージユニットは独立した装置として、アナログとデジタルの世界を接続し、デジタル変革を可能にします。

  7. 主スイッチング機器:電流経路を制御するための変電所内の装置であり、その状態と制御データはプロセスバスを介して転送されます。

  8. IEC 61850プロセスバス:スイッチヤードと保護制御システムを接続する、高度な自動化とモニタリングのための鍵となる技術です。

全体的に、この図は通信、同期、および自動化の面でのデジタル変電所の技術進歩と、これらの技術が電力システムの信頼性と効率向上にどれだけ重要であるかを強調しています。

合体ユニット(Merging Unit)は、電力システムでデジタル信号処理に使用される装置です。主な機能は次のとおりです:

  1. 通信インターフェース:合体ユニットはIEC 61850-9-2規格に準拠しており、これは変電所の自動化システムの通信仕様です。

  2. データの統合:三相電流と電圧のデータを統合し、適時な相関処理を行うことができます。

  3. データのサンプリング:電流と電圧の値をサンプリングまたは再サンプリングします。

  4. 技術インターフェース:非標準計測変圧器(NCIT)/標準計測変圧器(CIT)と合体ユニットを接続するための特定の技術インターフェースを提供します。

  5. 時刻同期:スマート電子デバイス(IED)または他の合体ユニットが時刻主制御として同期されるか、または従属デバイスとして時刻同期を受けることを確保します。

合体ユニットの使用は、特に時刻同期の高い精度要件において、変電所内の各装置間の正確な通信と操作の調整を確保するために重要です。これにより、電力システムの監視と制御がより正確に行われ、全体のシステムの効率と信頼性が向上します。

このスライドは、電力システムにおけるクロックドリフトと時間の精度の問題を示しています。電力システムの保護、制御、同期などにおいて、時間の精度は非常に重要です。さまざまなアプリケーションには、ミリ秒(ms)からマイクロ秒(μs)やナノ秒(ns)のレベルまで、異なる精度の要求があります。

  • 10 msの誤差は、イベントの順序(Sequence of Events, SOE)の記録の不正確さを引き起こす可能性があります。

  • 1 msの誤差は、1msレベルのSOEや振動角度の要件を満たすことができます。

  • 100 μsの誤差は、同期チェックや状態推定(State Estimation, SE)には十分かもしれませんが、約2.5度の誤差が生じます。

  • 10 μsは、同期ベクトルの誤差を約0.25度に減らすことができ、通常はアプリケーションに影響を与えません。

  • 1 μsは、サンプリング値や同期ベクトル測定装置の期待される精度です。

  • 100 nsは、一般的なGPS同期の誤差範囲です。

図では、これらの精度を達成するために、通信および同期インフラへの高額な投資が必要になる場合があることも示されています。これは、デジタル化および自動化された変電所において、正確な時刻同期技術の重要性と課題を反映しています。

この図は、電力システムにおけるマージングユニットのタイム同期プロセスを示しています。マージングユニットは、電流や電圧の正確な測定を保証するために、非常に高いタイム同期精度が必要です。主なポイントは以下の通りです:

  1. 同期には、UCA IEC 61850-9-2 LE規格で指定された1秒間に1つのパルス(1PPS)を使用し、専用の光ファイバで伝送します。

  2. 時間源の精度は1マイクロ秒に達する必要があります。

  3. システム全体の精度は4マイクロ秒以内に制御する必要があります。

図では、アナログ値の波形とそれに対応するサンプル値、およびこれらのサンプル値が1秒間に1つのパルス信号(1PPS)とどのように整列するかが示されています。この整列により、データ収集の正確性が確保されます。デジタルサブステーションやスマートグリッドでは、このような高度なタイム同期が電力網の運用の信頼性と効率を確保する上で非常に重要です。

この図は、時間同期のエラーが電力システムの計測精度に与える影響について説明しています。時間同期エラーは、クロックのドリフトや不正確な時間源によって引き起こされる可能性があります。電力システムでは、微小な時間誤差でも角度や振幅の計測のずれを引き起こすことがあります。

  • 最大誤差4マイクロ秒は、0.07°の角度誤差と最大0.125%の振幅誤差を引き起こす可能性があります。例えば、ピーク電流が100kAの場合、これは125Aの誤差を意味するかもしれません。

  • 精度クラス0.2の電流トランス(CT)や電圧トランス(VT)では、誤差は10分弧から30分弧(0.17°から0.5°)および10分弧(0.17°)の範囲になる可能性があります。

この図の目的は、微小な時間誤差でも制御と補正が必要であることを強調し、電力システムの計測と制御の精度を確保することです。これはシステムの保護、制御、および自動化操作にとって非常に重要です。

この図は、時刻同期が行われていない場合のマージユニット(MU)の操作例を示しています。左側には、非定常計器トランス(NCIT)からの電流または電圧のアナログ値を表す2つの信号波形が表示されています。これらのアナログ信号はMUによってサンプリングされ、サンプル値(SV)フローが生成されます。
同期が行われていない場合、異なるソースからの2つのSVフローはアラインメントされない可能性があり、サンプル番号(Sample No)が一致しない場合があります。右側の結果では、同期がないため、異なるソースからのサンプル値に時間的なずれが生じ、電圧や位相の計算の精度に影響を与えることが示されています。
これは、正確な計測とシステムの運用を確保するために、特に電力システムの保護と制御の領域において、時刻同期の重要性を示しています。

このスライドでは、電力システムのトランスフォーマとマージユニット(MU)の標準化と相互運用性の問題について議論されています。従来の電流トランスフォーマは磁気原理に基づいて動作し、保護装置とのデータ交換はサンプリング、A/D変換、フィルタリングを介して行われます。
非標準計器トランスフォーマ(NCIT)は、磁気、光学などさまざまな原理に基づいて動作し、関連するマージユニットと組み合わせて使用されます。NCITとMUは、IEC 61850-9-2規格に基づいて値を転送し、保護装置に提供します。
独立したトランスフォーマとマージユニット(例:SAMU、Stand Alone Merging Unit)は、保護装置と直接通信し、データを転送し、IEC 61850-9-2規格を使用して相互作用します。
これらの装置や技術の相互運用性と標準化は、電力システムの効率的で安全な運用を実現するために非常に重要です。これらはデータの一貫性と正確性を確保し、保護アルゴリズムの正しい実行に不可欠です。

この図は、UCA IEC 61850-9-2LE(Light Edition)規格の制限事項とIEC 61869-6/9規格との比較を示しています:

  • データセットの内容:9-2LE規格では、固定のデータセットの内容形式が定義されていますが、電流サンプリングのみがサポートされており、一方61869規格では、より柔軟に内容を定義および詳細に記述することができます。

  • 時刻同期:9-2LEでは、PPS(パルス毎秒)同期がサポートされていますが、物理的なネットワーク分離や同期のない場合のスムーズなダウングレード( "local sync" )は提供されておらず、一方61869規格では、IEEE 1588:2009規格のサポートをより重視しています。

  • 入出力特性:9-2LEでは定義されておらず、各デバイスの相互運用性と保護機能のパフォーマンスをテストする必要がありますが、61869規格では入出力特性が定義されています。

  • サンプリングレート:9-2LEでは、電力システムのサイクルごとのサンプリングレートが規定されていますが、保護および電力品質に対して倍数を提供していません。一方61869規格では、1秒あたり4800Hzのサンプリングレートが規定されており、電力品質は基本的なサンプリング周波数の倍数となります。

この図は、マージングユニット(Merging Units、MUs)がもたらす利点について説明しており、特にデジタル変電所のアプリケーションにおいて重要です。マージングユニットはモジュール化された設計を採用しており、システムの設計の直感性と柔軟性を向上させています。SAM600モジュールは、デュアルバス、1.5ブレーカなど、さまざまな構成に対応することができます。これらのモジュールには多数の通信ポートがあり、プロセスバスへのスイッチの要求を減らします。さらに、モジュール化されたシステムは非侵襲的なアップグレードをサポートしており、既存のシステムの運用に影響を与えずにコストを節約し、停電時間を短縮することができます。図では、さまざまなSAM600モジュールの配置、SAM600-IO、SAM600-CT、SAM600-VTなどが示されており、これらがステーションバスとプロセスバスを介して通信している様子が示されています。


UCA IEC 61850-9-2LE

  • 保護および運用計測のための1サイクルあたり80サンプルの9-2LE

  • 9-2LEの品質はテストスイッチとヒューズの故障入力を示します

  • テスト目的のシミュレーションモード 時刻同期

  • 1PPSとIEEE 1588(IEC/IEEE 61850-9-3)による時刻同期

  • IEDまたはセンサーの同期のための1PPS入出力 通信

  • モジュールごとに2つのポートで構成可能なUCA IEC 61850 9-2LEプロセスバストラフィック

  • IEC 62439-3(PRPおよびHSR)による通信冗長化 環境

  • 動作温度範囲:-40°Cから+70°Cの周囲温度

  • IPクラス:IP20 マージングユニットの例:SAM600 PRP = パラレル冗長プロトコル HSR = 高信頼性シームレス冗長化


この図は、デジタル変電所向けのプロセスバスの展開例を示しています。この構成では、複数のSAM600モジュール(入出力、時刻同期、電流/電圧変圧器機能を含む)が、電流トランス(CT)や電圧トランス(PT)などの異なる装置に接続されています。これらのモジュールはプロセスバスを介してREC670保護装置と通信し、重要な計測および制御データを転送します。この例では、SAM600モジュールが既存の変電所のアーキテクチャに統合される方法や、システムAとシステムBのホットスタンバイ構成がフロントビューとバックビューで提供される方法が示されています。この設計により、システムの信頼性が向上し、1つのシステムに障害が発生した場合でも、他のシステムが引き継ぐことができるため、高可用性とシームレスな冗長性が実現されます。
電力システムでは、SAM600はマージユニット(MU)としての役割を果たし、電流トランス(CT)と電圧トランス(PT)のデータを収集および処理します。REC670は保護リレーであり、電力システムを監視および保護し、障害が発生した場合に迅速かつ正確に障害部分を切断して障害の拡散を防止します。
このシステムでは、"PT"は電圧トランス(Potential Transformer)を意味し、電圧を測定して計器が処理できるレベルまで低減します。
右上の図の"I/O"コンポーネントは、入力/出力モジュールを指し、これらのモジュールはセンサからの信号(入力)を受信し、変電所の装置に制御コマンドを送信します(出力)。
プロセスバスの配置は、デジタル変電所でさまざまな電気機器と保護リレーを接続するために使用されます。これにより、アナログ信号の代わりにデジタル信号を使用してデータの転送と処理が最適化されます。この構成では、電流トランス(CT)と電圧トランス(PT)はSAM600などのマージユニットによって電気信号がデジタル化され、その後、プロセスバスを介してこれらのデジタル信号が保護リレー(REC670など)に送信されます。この構成により、信号処理がより効率的かつ正確になり、配線要件が簡素化され、ハードウェアの冗長性が減少し、システムの信頼性が向上します。

この図と関連するテキストは、時間同期学習のプロジェクトケースを説明しています。このプロジェクトでは以下のことが行われました:

  • IEC 61850サブステーションバス上で1ミリ秒の時間精度を達成するために、Simple Network Time Protocol(SNTP)が使用されました。

  • 最初はリレーのハードウェア時間同期が電気的なIRIG-B規格を使用して設定されましたが、有効なサンプルを受信できず、保護機能がブロックされました。

  • 後に、UCA IEC 61850-9-2LEの実装プロファイルに基づき、1PPS(1秒毎のパルス)が時間同期のソースとして指定され、4-1マイクロ秒の時間精度を実現するために光学的な1PPSの使用が推奨されました。

  • 電気から光学への1PPS変換器を追加した後、リレーは光学的な1PPSに再設定され、サンプルの同期が成功しました。

  • 有効なサンプルを受信すると、保護機能は正常にテストされます。

図では、これらのコンポーネントがどのように物理的に接続および設定され、必要な同期が実現されるかが示されています。
電力システム保護の分野では、「87L」や「87T」などの略号は通常、差動保護リレーのタイプを指します。「87」は差動保護の一般的な分類コードであり、「L」や「T」などの文字は保護対象のタイプを示すものであり、「L」は通常、ライン(Line)を、「T」は通常、トランスフォーマ(Transformer)を指します。したがって、87Lはライン差動保護を意味し、87Tはトランスフォーマ差動保護を意味します。これらの保護機能は、電力システムの障害を検出し、障害が検出された場合に信号を送信したり回路を切断したりして、電力ネットワークの安定性と安全性を保護するために使用されます。

Merging Units(MU)技術は、従来の銅製アナログ接続ではなく、ファイバーオプティックイーサネットを介してアナログデータサンプル(IおよびVファゾール)の送信をサポートします。 • シンクロファソールと同様に、MUは通信と時刻同期に依存しています。 • MUは、より高いデータレートを持つローカルエリアレイヤー2通信を使用します。 • MUは、グローバルUTC時刻への時刻同期を必要としません。 • これらの2つの技術は、長年にわたって共に使用されてきました。これはまた、IEC/IEEE 60255-118-1:2018標準の付録E(情報)にも明記されています。 サンプル値入力を使用したシンクロファソア測定


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