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まーるく やわらかく 自由で まっすぐ みんなから愛され親しまれるライフセーバー、愛子さん

ライフセーバー名鑑No.9  齊藤 愛子さん

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齊藤 愛子さん
大竹サーフライフセービングクラブ所属
JLA国際室に所属し、。通訳として日本代表チームの帯同や、国際大会に審判員としても参加するなど多方面で活躍。2018年世界選手権はIRB日本代表選手として出場。
「まーるく やわらかく 自由で まっすぐ」なところが、愛子らしさだよ。」
大切な人からいただいた、大切にしていることばを聞かせてくれた。


新しい世界

高校生の時は水泳部に所属。泳ぐことを生かせるものはないかなぁ?と、ダイビング、トライアスロン、水泳部と、一通り探してライフセービングにたどり着いた。
「なんでライフセービングを?」と聞くと
「先輩たちがキラキラ輝いて見えたんだよねえー!」
表情が一気に明るくなった

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ライフセービング部に入ると1年生の女子は自分一人だけだった
練習についていけなくてつらいときも多かったけど、先輩に支えられ乗り越えた。
とにかく、とにかく、目まぐるしい毎日だった

ライフセーバーとして監視活動をするために、まずは資格の取得。そして、何よりも荒れた海でのボードコントロールには苦戦した。特に大竹は常に波があるコンディションで有名だ。毎日、毎日、コロコロ、コロコロ、波に転がされていた。
もちろん先輩から怒られて、精神的に“キツい”時も多々あった。
だけど、いざ、ライフセーバーとして浜に立ってみると・・・
そこには新しい世界が広がっていた。

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楽しそうに海で遊んでいる人たち…
その環境を支えている私たち…

この活動、すてきだなぁ…
今までに感じたことのない感覚だった。


ライフセービングの世界に吸い込まれた。

やらない理由はないでしょ??

そう言われて、目の前に現れたものにはすべて挑戦してきた。
アドバンスライフセーバー、競技審判員、指導員、小型船舶の免許。
資格だけではない。サーフスキーにもトライした。
オーシャンウーマンにだって、スーパーライフセーバーにだって、出場した。
とにかく、すべてのことにまずは取り組んでみた。
サーフスキーは、船自体が重く、バランスをとって漕げるようになるまでがとても難しく、なかなか女子選手で挑戦する人も少ない。
オーシャンウーマンだって、一番の花形競技ではあるがなんとも過酷な競技である。
「なんでやらないの??やらない理由はどこにある??やってみないとわからないでしょ?」
そう言って何事も背中を押してもらい、挑戦を続けた。

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もちろん、学校の授業もあるのでライフセービングばかりやっているわけではない。
キャパオーバーになりそうなくらい本当に頭がパンパンだったけど、いろいろ頑張ってやることができたこの環境のおかげで今の私があるかなと学生時代を振り返った。

当時、筑波大学体育専門学群の技官を務めていた稲垣裕美さんが一番愛子さんに影響を与えた人だという。
監視活動やトレーニングはもちろん、仕事への取り組み方、人との関わり方、1から丁寧に教えてもらった。
そして、日本代表選手として活躍していた裕美さんは、競技者としてしっかりトレーニングすることは当たり前。そのうえで周りにもしっかりと教えてくれていた。

ISRC2007_ゆうみさんと


「やらない理由を探さないの。やってみたらわかることがたくさんある。」
たいてい、裕美さんがアドバイスしてくれた通りに動いてみると、上手くいくことが多く、「よかった」と思うことがほとんどだった。
自分に無理をしてないのに本気な姿も心に響いた。
「裕美さんみたいにライフセービングと関わっていきたいな」
「やらない理由を探さない」というスタンスはこのときから自分の軸になっている。

チャンスをつかみ取る力


日本ライフセービング協会の国際室に所属し、国際大会の運営、ルール改定時の翻訳など、自分自身の仕事の傍ら、日本全国のライフセーバーのために時間を割いてくれている。
あるときは、ライフセービング日本代表チームの遠征に帯同し通訳として活躍している。
どうしてそのようなライフセービングとの関わり方をされているのか、きっかけや、もともと英語は話せたのか、聞いてみた。

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大竹サーフライフセービングクラブとオーストラリアで一番強いといわれているクラブ、「BMD Northcliffe S.L.S.C.(ノースクリフサーフライフセービングクラブ)」は姉妹クラブとして今も交流を続けている。
2年に1度、オーストラリア合宿が行われており愛子さんは1年生の時に参加した。
実際に参加してみると、ライフセービングを通して人の輪が広がったことに何よりも感動した。

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「ライフセービングを始めて、同じ大学生だけではなくて社会人の方との関わりや、日本を超えて多くの人と交流できるなんて…!!」
英語は、義務教育の一環で勉強しただけで、特別、英語を話せたわけではないが、周りの人よりも少しだけ聞き取ることができた。そのおかげで話す機会も多く、少しずつ、英語をコミュニケーションとして使えるようになっていった。環境に、育ててもらった。
2004年には、DHLアジアパシフィック選手権という日本で行われた国際大会に初めて“通訳”として抜擢された。
みんなで大会を作り上げ、運営していき、これからの“ライフセービング”がどのように発展していくのか期待が膨らんだ。

ライフセービングにどっぷり浸かった大学時代を経て、社会人になった。
ライフセービング活動にずっと携わっていけるように大竹に通いやすい場所で働いた。
入社して7ヶ月が経った頃、国際大会の通訳としてよばれた。
今までは、日本で行われた国際大会に帯同していたが今回は違う。オーストラリアのボンダイで行われるインターナショナルサーフレスキューチャレンジという国際大会だった。
働き始めて間もないが、
「なんか行った方が良い気がする…、いや、どうしても行きたい!!!」
上司にお願いしてみたが、案の定断られてしまった。
でも、もう愛子さんの中に「行かない」という選択肢はなかった。

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(筆者)「行ってみて、どうでしたか??」
(愛子さん)「ちょっと恥ずかしいんだけど、
今までで生きてきた中で、いま、一番幸せ!!!!!
そう思った瞬間だったんだよね。
通訳として役割を果たすために一生懸命になることができたし、日本代表チームのみんなからも必要としてもらえて頼ってもらえた。そして、やっぱりライフセービング大好き!って改めて気づいた。自分の好きなことに心から打ち込めている。その瞬間がたまらなかった。」
2007年に行われたこの国際大会はYear of the Surf Lifesaverといって100周年の記念大会でもあった。
パレードも盛大に行われ、その場にいる人たちが心から楽しんでいるのが伝わって、気持ちが高揚した。
この人達とずっと一緒にいたい、とライフセービングに対する気持ちがあふれた。
このことがきっかけで改めて自分の中でのライフセービングの位置づけがはっきりしたという。
「ライフセービング、自分の中でもっともっと大切にしていきたいなぁ」

これ以降、自分の軸をぶらさず毎日過ごしてきた。

素直な心境

「ライフセービングにおける今後の目標や、やってみたいことなどありますか??」
と聞いてみた。
「それ、すごく良い質問をしてくれたなぁって思ったんだ。正直なことを言うと、やっぱりこの状況下だから強く「~したい!!!」と言えないのが正直なところかな。」

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強がらず、素直な気持ちを話してくださったことに、なんだか安心感を覚えた。愛子さんの素敵なところだ。

「ひとつは、今まで自分が「~したい!!」って思って行動していたけど、今は「支えたい!」っていう想いが強いかな。自分がライフセービングのためにできることを探していきたいなって」

他には、環境問題への周知に力を入れたいとのことだった。
きっかけは、指導員として新米ライフセーバーに向けた講習会を行ったときのことだった。
ビーチクリーンの最中にプラスチックゴミについての説明をした。
「自分や周りの人が怪我をしないようにゴミを拾うのはもちろん。そして、このプラスチックのゴミはどんなに小さく細かくなろうとも、なくなることはないの。目に見えないぐらい小さくなったとしても、消えることはない。これを魚が飲み込んで、自分たちの口に入ることにもなる。海にきたら、ゴミを拾ってね。」

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講習会終了後のアンケートで意外にも、この環境問題に着目してくれた講習生がいたことを知り、もっと環境問題についての知識をみんなに伝えていきたい、そう強く思ったという。”People care when they know.”(知れば、意識できる)

「自分に無理せず、本気」なんだかこの言葉の意味がわかった気がした。

愛される理由

愛子さんは顔が広くて、みんなから頼りにされていて、好かれているけど何か意識していることはあるんですか??
愛子さんが人と関わるときに大切にしていること。事前に質問させていただいた。

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「まずは、笑顔でいること。
プラス(ポジティブ)な言葉を使うこと。
その人の立場になって考えて、寄り添うこと。
丁寧にコミュニケーションをとること。
感謝をする、ありがとうってたくさん伝える。
言われたことは、まずは一生懸命取り組んでみる。一生懸命やってみると、疲れてもさわやかな気分になるしね。
自分に無理をしない。素直に生きる。
…意識しているというより大切にしていることだけど、考えてみたら、意外とあるなあって思った。でもこれらは全部自分を育ててくれた人や環境から影響を受けて、自然と自分で大切だなって思うことをピックアップしてきたんだと思う。

ISRC2007_SLSA会長ロンランキンと

『愛子といると優しくなれる、まっすぐでいられる』
ライフセービングに限らず、私は人に恵まれている。やりたいことを応援してくれ、自分をそのまま受け入れてくれる。私が私らしくいられるのは、周りの人たちが私をありのまま受け入れてくれるおかげだと、本当にそう思う。」

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「周りから頼りにされて、好かれているってあんまり思っていなかったけど、そんなふうに言われて嬉しかったよ!ありがとう!」

終始笑顔の絶えない、和やかで、だけどしっかりと強く太い芯のある愛子さんを知ることができたインタビューであった。

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★取材後記★
実はIRB競技の初日本代表としても活躍された愛子さん。
活動の幅が広い…!!
IRB競技に興味をもってくれる人が増えたら、私もうれしいです!

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